「あれは杉田水脈議員じゃないのか」
「似てるね。でも、『LGBTには生産性がない』という差別発言でもめてるさなかに、ジュネーヴに来れるかな」
「雲隠れのための海外逃亡かな」
8月16日午後3時、ジュネーヴの国連人権高等弁務官事務所会議室で開かれた人種差別撤廃委員会の日本政府報告書審査のさなか、NGO席でひそひそ話がささやかれた。
NGO席の後ろの方に、日本人女性らしき人物が派手なサングラスで顔を隠し、うつむきながら座っている。ほとんどしゃべらない。両脇を固める人物も日本人女性らしい。
会議が終了した午後6時、会議場の外の廊下で、神奈川新聞記者がこの女性に名刺を差し出し、声をかけた。本当に杉田水脈議員なら、コメントをもらいたいところだ。何しろ日本一有名な差別議員が、なんと人種差別撤廃委員会に顔を出したのだ。
ところが、記者が声をかけた途端、杉田議員の取り巻きの男が大声で騒ぎ立て、そのすきに杉田議員はこそこそ走って逃げてしまった。
人々が騒然とする。国連の警備員も慌ててやってくる。何がおきたかよくわからない状況になってしまった。
私が目撃したのは直後、午後6時05分くらいからだ。その前の5分間を直接目撃していないが、関係者から話を聞いた。
「国会議員なのに、こそこそ隠れて逃げ回るなんて不思議な人だね」
「杉田議員は、もととも市民集会に顔を隠して潜り込んで、潜入ルポと称してマイノリティ叩きをしてきたから」
「こっそり隠れ、都合が悪いと逃げ回ることしかできないのかな」
神奈川新聞記者が大声で「杉田水脈議員がいるぞ! 逃げるな!!」と叫んでいれば良かった。周囲にいた日本人が「えっ、あの差別発言の杉田議員がいるのか」と言って集まったに違いない。
翌17日午前10時、人種差別撤廃委員会の日本報告書審査第2日目にも杉田水脈議員が顔を出した。サングラスをかけ顔を伏せて、声もたてずに座っている。
午後1時の審査終了時、会議室出口で、今度は私が杉田水脈議員に質問しようと思い立って接近した途端、杉田議員は脱兎のごとく駆けだして消えてしまった。スタートダッシュはまるで全盛時のボルトのようだった。私も「逃げるな!」と叫ぶ間がなかった。
国民の公僕たる国会議員、しかも政権与党の議員が、国連という公の場でありながら顔を隠し、こそこそ逃げ回る。不可解な話である。
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以上は私の体験及びNGOメンバーからの聞き取り内容に基づいています。杉田水脈議員からはコメントをもらえませんでした。万が一、ご本人でなかったら、訂正します。