Saturday, December 04, 2021

フェミサイドの現状01

国連麻薬犯罪事務所の調査報告書『親密なパートナー又は家族メンバーによる女性・少女の殺害――グローバル評価2020』(2021年)が公表された。

The Research and Trend Analysis Branch, UNODC, Killings of Women and girls by their intimate partner or other family members, Global estimates 2020.

2020年、約47,000の女性・少女が親密なパートナー又は家族メンバーによって殺された。すなわち、平均すると、11分毎に一人の女性・少女が家族の中のだれかに殺される。傾向を計算すると、過去10年間、こうしたジェンダー関連殺害の規模の大きさには変化がなく、微増微減を繰り返している、という。

以下、報告書の概要を簡潔に紹介する。

報告書は冒頭で要点をまとめている。

2020年、約47,000の女性・少女が親密なパートナー又は家族メンバーによって殺された。すなわち、平均すると、11分毎に一人の女性・少女が家族の中の誰かに殺される。

・世界中全ての地域の女性・少女はこのタイプのジェンダーに基づく暴力の影響を受ける。推定18,600人の被害者ゆえ、アジアは絶対数では被害者数がもっとも多い地域であるが、アフリカは女性人口の規模に比較して最高水準の地域である。

・全体の80%、2020年に世界中で殺害された人間の大多数は男性・少年であったが、殺害被害者の性別構成は明らかに文脈に依存して異なる。女性・少女は公的領域で行われた殺人被害者の10分の1を占めるに過ぎないが、家庭で行われた致死的暴力の不均衡な負担を強いられており、親密なパートナー又は家族メンバーによって殺害された被害者の58%が、女性・少女であった。

・女性・少女のジェンダー関連殺害の各国の傾向にはしばしば変動がある。平均すると、欧州では過去十年以上、私的領域における女性・少女のジェンダー関連殺害は13%減少しているが、アメリカ諸国では9%増加している。欧州とアメリカ諸国の中でも国により地域によって傾向は変動している。情報が限られているので、その他の領域でのジェンダー関連殺害の傾向を確定することはできない。

・女性・少女が私的領域で経験する致死的暴力は、家の外での女性・少女殺害よりもずっと手に負えない問題である。東欧では、過去十年間以上、家の外での女性殺害は47%減少を見ているが、同じ時期に親密なパートナー又は家族メンバーによる女性殺害は15%減少にとどまる。西欧や南アメリカでも同様の傾向が記録されている。

・新型コロナの隔離措置が女性・少女のジェンダー関連殺害に与えた影響に関する世界的情報はまだ寄せ集めで、確定的ではない。ジェンダー関連殺害の数は2019年から2020年にかけて西欧では11%増、南欧では5%増である。北欧では変化は出ていない。東欧では微減である。北米では8%増、中米では3%増、南米では5%増である。この増加は過去十年ン位見られた変動の範囲である。

・各国レベルでは、限られた国であるが、201910月から202012月の時期の月別データもあり、傾向は多様であり、パートナー又は家族関連殺害はロックダウンによる影響をさほど受けていない。