Thursday, January 30, 2025

ヘイト・クライム禁止法(222)ジョージア

ジョージア政府がCERDに提出した報告書(CERD/ C/ GEO/9-10. 29 September 2020

前回報告書について、『序説』六二〇頁。

二〇一四年、差別撤廃法が改正された。二〇一七年五月、刑法改正により、刑法第五三一条に人種差別に関して、量刑の下限を一年とする刑罰加重事由が盛り込まれた。量刑は裁判官の裁量ではなく一年以上の下限に拘束される。

二〇一九年二月、差別撤廃法が改正され、雇用、健康、教育、社会サービス領域にも適用されることになった。

二〇一八年四月、「人権保護国内戦略・行動計画二〇一八~二〇」を決定した。差別防止の施策実施を求めている。差別とヘイト・クライムの捜査と訴追、差別とヘイトに関する啓発キャンペーン、法令における差別的条項の削除を定めた。

二〇一九年二月、公務員・政治家によるヘイト・スピーチ予防のため、「国会議員倫理綱領」を採択し、綱領第二項は人種、皮膚の色、性別、宗教、その他の事由に基づくヘイト・スピーチ禁止原則を設けた。綱領第三項によると、議員はその職務に当たって、尊厳を損なうスピーチ、攻撃的スピーチ、性差別主義やヘイト・スピーチを禁止される。

二〇一九年五月、査察官職務法を制定し、人権侵害犯罪の独立かつ実効的捜査を担当することにした。法執行機関や公務員による犯罪や差別に基づく犯罪を管轄する。

二〇一八年一月、社会構成員の権利と自由を保護するため、人権擁護庁を設置した。不寛容に動機を有する差別犯罪の捜査を監視する。不寛容に動機を有する差別犯罪の認定と捜査に関する勧告を行う。

二〇一六~一九年、憎悪動機の刑事事件は六三一件であった。一六年は六三件、一七年は八六件、一八年は二一〇件、一九年は二七二件である。刑事訴追されたのは四二二人であった。一六年は四四人、一七年は四四人、一八年は一五一人、一九年は一八三人である。

二〇一六年の六三件のうち、国民的動機は一件、民族的出身は三件、宗教は二七件、人種差別は四件。刑事訴追された被告四四人のうち、性的指向は四人、宗教は一六人、性差別は三人、国籍は四人、差別は一四人。

二〇一七年、刑事訴追された被告四四人のうち、性的指向は四人、ジェンダー・アイデンティは四人、宗教は二人、性差別は二五人。

二〇一八年、刑事訴追された被告一五一人のうち、性的指向は一五人、ジェンダー・アイデンティは一二人、民族的出身は一人、宗教は二人、人種は一人、国籍は三人、性差別は一一一人等。

二〇一九年、刑事訴追された被告一八三人のうち、性的指向は一九人、ジェンダー・アイデンティは一二人、人種民族的出身は四人、人種は四人、宗教は一三人、国籍は四人、性差別は一一九人等。

CERDがジョージアに出した勧告(CERD/C/GEO/CO/9-10. 13 December 2022

メディアやオンラインのヘイト・スピーチ、政治家や高官によるヘイト・スピーチがある。政府は対策を講じているが、放送メディアやオンラインのヘイト・スピーチに対処する実効的法律がない。警察内にヘイト・クライム/スピーチ担当部局を設置すること。国会議員のヘイト・スピーチを禁止する倫理綱領を実効的にすること。伝統的放送及びオンラインのヘイト・スピーチ規制を強化すること。

Wednesday, January 29, 2025

冤罪防止のための取調拒否権入門セミナー第1回学習会

冤罪防止のための取調拒否権入門セミナー第1回学習会

328日(金)午後6時開場、開会午後6時半~

東京ボランティアセンター会議室(JR飯田橋駅隣、セントラルプラザ10階)

参加費(資料代含む):500

「取調拒否権とは何か――冤罪防止の市民的ガイドライン」

前田朗

2024年、袴田事件再審無罪、大川原化工機事件、福井女子中学生殺人事件、大阪地検検事違法取調事件など多くの刑事事件で、不当な取調問題に注目が集まった。

不当な取調べと自白強要は、被疑者の防御権を侵害し、冤罪につながり、人格権を侵害する。

身柄拘束された被疑者は拘置所又は留置場に在房するべきであって、警察署の取調室に行く理由がない。

取調室に強引に連行することは黙秘権の軽視である。

被疑者が黙秘権行使を告げたら、取調べを中断するべきである。

被疑者には取調拒否権がある。

弁護人は被疑者に黙秘権と取調拒否権を助言するべきである。

前田朗:朝鮮大学校法律学科講師、救援連絡センター運営委員、日本民主法律家協会理事、のりこえねっと共同代表、著書に『刑事法再入門』『500冊の死刑』(以上インパクト出版会)『黙秘権と取調拒否権』(三一書房)『パロディのパロディ――井上ひさし再入門』(耕文社)等。

主催:平和力フォーラム

電話070-2307-1071

E-mail: akira.maeda@jcom.zaq.ne.jp

Wednesday, January 22, 2025

上映会「ヤカオランの春 ある家族の肖像」RAWAと連帯する会

行ってみませんか? アフガニスタンの大地へ 暮らしのなかへ

上映会「ヤカオランの春 ある家族の肖像」

監督 川崎けい子さんトーク

日時:3月15日(土) 18:15~21:00

会場:東京ボランティアセンター会議室A

(各線 飯田橋駅 飯田橋セントラルプラザ10階)

参加費:500

アフガニスタン戦争からアメリカが手を引き、2021年ターリバーン政権復活。抑圧と恐怖が社会を支配しています。さらに20245月、ターリバーンは、道路で物乞いをすることに制限を加える新法を制定し、約6万人もの人が既に違反者として逮捕されています。働くことが許されず物乞いに頼るしかない女性たちは拘禁され、拷問や性的虐待が行われています。

このようなターリバーン政権の人権抑圧に対してなぜ国際社会は無力なのでしょうか。イスラエルによるガザへの攻撃についてもいまだこれを止めることが出来ていません。アフガニスタンでもガザでも犠牲になっているのはそこに住む一般民衆なのです。ガザでもアフガニスタンでも、人が暮らしているのです。

*清末愛砂(室蘭工業大学大学院教授)よりメッセージ

<映画の紹介>

ヤカオランは20013月にターリバーンよって破壊されたバーミヤンの石仏から西へ約100キロにある。教師のアクバルは難民キャンプで教師をしていたが、彼は暗い過去の記憶に苦しんでいた。戦争に翻弄された人生。亡くなった人々の思い出。故郷ヤカオランへの想い。

ある日アクバルは、子ども達を前に自分の人生を語り始めた。

故郷で、祖国で、何が起き、何が変わっていったのか。妻や娘たちがなぜ教育を受けることもできなかったのか。決して語るまいと心の奥底に封印していた暗い過去の秘密を吐露し始める。それは故郷で起こった衝撃の真実だった。

<川崎けい子さんの紹介>

1960年茨城県生まれ。

OFFICE 3 WAYを立ち上げ、1999 年からアフガン難民やアフガニスタン国内で暮らす人びとを取材し、写真ルポ、映像などを精力的に製作。

写真絵本「この子たちのアフガン」(オーロラ自由アトリエ)

短編ドキュメンタリー「RAWA アフガン女性の闇に光を」(2007年)

長編ドキュメンタリー「壁の中の少女たち」(2007)

RAWA(アフガニスタン女性革命協会)が支援する孤児院や学校などへの訪問も重ねた。

★RAWA:アフガニスタン女性革命協会。1977年から政教分離、民主主義を掲げ女性や子どもたちの権利の向上を求めて闘う。困難な状況の中で、男女平等の教育をはじめ、生活困窮者や災害避難者などへの生活支援、医療支援などにも取り組む

<共催>RAWAと連帯する会/室蘭工業大学大学院清末愛砂研究室

RAWAと連帯する会:2003年からRAWAと連帯し、現地への教育支援、現地視察、スピーキングツアー、学習会などを開催しアフガニスタンを知ってもらう活動などをしています。

活動を通じ日本社会を見つめ直すこともめざしています。会員になって下さった方には会報ジンダバーをお届けします。

https://afgan-rawa.blogspot.com

<連絡先>

E-mail: akira.maeda@jcom.zaq.ne.jp

090-8212-0524 (RAWAと連帯する会 前田)

Monday, January 20, 2025

ヘイト・クライム禁止法(221)フランス

フランスが人種差別撤廃委員会CERD108会期に提出した報告書(CERD/C/FRA /22-23. 15 August 2019

前回報告書は『原論』三七四頁。

前々回報告書は『序説』六〇五頁。

フランスのヘイト・スピーチについて詳しくは、光信一宏の研究(『愛媛法学会誌』等)参照。

一八八一年七月二九日の印刷自由法の諸規定が、人々の集団の優越性を主張するイデオロギー、人々の集団を貶め、侮辱し、差別を煽動する公然たる表現は犯罪とされている。差別、憎悪、暴力の煽動。人道に対する罪の否定。戦争犯罪と人道に対する罪の美化。民族集団、国民、人種又は宗教の構成員であること、又は構成員でないことに基づく公然たる中傷、及び侮辱。

二〇一五年二月一五日、国家人権諮問委員会の意見は、一八八一年法の大半が刑法に導入されていると確認した。

二〇一七年一月二七日の平等市民権法は、人種主義を、すべての刑事施設収容刑賦課犯罪についての刑罰加重事由とした。人種、民族集団、国民、宗教に基づいて被害者に行われた行為は、刑罰加重事由となる。刑法第一三二―七六条が「人種」ではなく「推定された人種」としているのは、人種が存在するという思考を回避するためである。

(*註:かつて「人種」が存在するとされたが、今日、「人種」なるものは存在しないと考えられている。このため、一部の国では「人種はないから、人種差別はない」という見解が登場している。フランス法は、人種差別を禁止しているが、「人種が存在する」という思想を後押ししているわけではない。人種を口実に差別する場合があるからである。)

平等市民権法は差別との闘いのために、人種主義挑発、侮辱、中傷を処罰する規定を有する。人道に対する罪の美化や否定の犯罪の射程を拡張した。人種主義や人道に対する罪と闘う非営利団体の役割を強化した。

一八八一年七月二九日の印刷自由法の犯罪は、インターネット上の言説にも適用される。

二〇〇四年六月二一日のデジタル・エコノミーにおける信任法は、インターネット等のプロバイダーの責任を定める。子どもポルノ、戦争犯罪と人道に対する罪の美化、人種憎悪の煽動など、違法なコンテンツの流布との闘いという義務がある。違法な書き込みがあるとの通知を受けた場合、迅速に管轄当局に通報しなければならない。この義務に違反すると、一年以下の刑事施設収容又は七万五〇〇〇ユーロの罰金である。

裁判所はウェブホストやプロバイダーに違法な書き込みへのアクセスの提供を禁止することができる。

二〇〇三年以来、司法省は、人種主義や人種主義ヘイト・スピーチと闘うための回覧や通知を二〇回ほど発してきた。司法省に報告すること、実行犯特定のために必要な措置を取ること、実行犯の刑事手続きに責任を持つこと、被害者に被害者支援団体情報を提供すること、文化宗教コミュニティ間の討論を行うこと。

パートナーシップ政策の発展は、人種主義事件の報告や裁判所による審理を担保する。差別についての司法的関心は検察や反差別局による。司法機関、人権擁護局、反差別団体、被害者支援団体と定期的協議が行われている。

二〇一七年の平等市民権法は、差別事件について刑事施設収容の代替として、市民権コースを導入した。

二〇一六年、検察官は七六六四件の人種主義事件を処理した。三四三三件(四五%)は誹謗中傷、二六九三件(三五%)は暴力・脅迫、二七五件(四%)は財産損壊である。

・メディア及び選挙で選ばれた公務員のヘイト・スピーチと闘う

二〇一五年以来、レイシズム・反ユダヤ主義と闘う省庁間機関が、一四〇件以上の報告を受けている。大半がインターネット上のヘイト・スピーチである。その結果、私人やブログの著者が、人種憎悪の煽動や人道に対する罪の美化・正当化の罪で、刑事施設収容や罰金を言い渡された。レイシズム・反ユダヤ主義と闘う省庁間機関は、公的言説における不適切な発言を取り扱っている。二〇一五年五月に、パリのパンテオンにおけるジャン・ザイ埋葬に関する国会議員発言、二〇一六年六月のロワール市長によるラマダンを行う人々に関する発言などがある。

・法執行官の研修

司法官になる者に毎年、法的サービス研修学校で差別と闘う研修を実施している。特に人種主義、反ユダヤ主義、人種差別を取り上げる。裁判官、裁判所職員、弁護士等への数日間の研修を用意している。二〇一六~一七年、四〇人の裁判官にヘイト・スピーチ研修を行った。国家警察研修所は司法省と協力して、差別・人種主義・反ユダヤ主義・排外主義と闘う実践ガイドを改定した。

・インターネット上の人種主義言説

インターネット上のサイバー犯罪と闘うため、PHAROSというプラットフォームを設置し、分析、監視、報告をシステマティックに行っている。二〇一六年、一七、三八四件の事案がPHAROSを通じて報告され、一一、九八二件が人種又は宗教憎悪の煽動であった。PHAROSは、インターネット企業に八三四件のブロック要請、一、九四九件の閲覧制限、三、一九九件の削除要請を送った。二〇一六年三月、国家サイバー犯罪予防局はブリュッセルの欧州委員会の会合に参加し、オンライン・ヘイト・スピーチの報告制度を強化している。二〇一六年一一月、レイシズム・反ユダヤ主義と闘う省庁間機関主催の差別防止会議で、六〇以上の団体にPHAROSについて周知した。二〇一七年一二月と二〇一八年二月、レイシズム・反ユダヤ主義と闘う省庁間機関はインターネット・プロバイダー各社とともに、ヘイト・スピーチの報告、及びインターネット・ヘイトに対する対抗言説の促進のために協議した。

内務省は二〇一六年三月、申立て報告のためのオンラインシステムを用意した。犯罪の要素に該当する事実があれば、どこからでもオンライン報告ができる。差別、差別煽動、中傷、侮辱であって人種的性質を有する場合をカバーする。

ヘイト・スピーチ予防教育

二〇一六年三月、「連帯してヘイトに反対」というキャンペーンを始め、公衆に偏見を防止するための啓蒙を行っている。三月二一日から二八日、人種主義と反ユダヤ主義に反対する教育特別週間を設定した。TV放送を利用し、人種主義と闘うための情報をインターネットにアップしている。もう一つ、「人種主義に反対するスタンディング」というキャンペーンを始め、PHAROSSOSレイシズム、人権同盟等と協力している。

人種差別撤廃委員会がフランスに出した勧告(CERD/C/FRA/CO/22-23. 14December 2022

人種差別の構造的制度的原因に優先的に対処すること。二〇二三~二六年に人種主義・反ユダヤ主義と闘う新しい国家計画を策定し、国家及び地方レベルで履行するための人的、財政的資源を投入すること。ロマ、トラベラー、アフリカ人、アフリカ出身者、アラブ出身者などの住民の完全な参加を確保すること。

人種主義ヘイトスピーチとの実効的な闘いを倍加し、公共空間、特にメディアやインターネット上の人種主義と人種に基づくヘイトを予防し、処罰すること。すべての人種主義ヘイト・スピーチを捜査、訴追、処罰し、被害者に実効的な賠償を提供すること。法執行官に研修を提供し、啓蒙活動をすること。インターネット上の人種主義ヘイト・スピーチの拡散を監視すること。

Saturday, January 18, 2025

「<共同声明>杉田水脈氏は衆議院議員にふさわしくありません」の閲覧制限(Change.org)についての声明

 「<共同声明>杉田水脈氏は衆議院議員にふさわしくありません」の閲覧制限(Change.org)についての声明

 

20251月18日

「<共同声明>杉田水脈氏は衆議院議員にふさわしくありません」呼びかけ人

 

1 はじめに

 

 私たちは2024107日にオンライン署名「<共同声明>杉田水脈氏は衆議院議員にふさわしくありません」(以下「共同声明」)を立ち上げました。その際、Change.orgのオンライン署名を利用しました。

 ところが、1010日夕刻、この署名はChange.orgによって閲覧制限の対象となり、アクセスできなくなりました。

 私たちからの問い合わせに対して、115日、Change.orgから回答がありました。

 私たちのオンライン署名・共同声明は、1010日夜に目的を達成したため、アクセス制限の影響は大きくはありませんでした。

 しかし、同様の事態が今後も生じる懸念がありますので、私たちの見解をChange.orgにお知らせするとともに、公開することにしました。

 一番のポイントは、私たちのオンライン署名は、「選挙運動」でも「落選運動」でもないことです。以下でご説明します。

 

2 Change.orgからの回答

 

 Change.orgからの115日の回答は次の通りです。

 

こんにちは

日頃より、Change.orgのオンライン署名を積極的にご活用くださり、誠にありがとうございます。

皆様が立ち上げられた署名 [https://www.change.org/p/490237922] について、社内で検討した結果についてお知らせいたします。

先日実施された衆議院議員選挙の期間中、日本の法律を遵守するため、皆様の署名を含む一部のコンテンツが一時的に制限されていました。

衆議院議員選挙が終了しましたので、弊社プラットフォームで皆様の署名を再び公開する手続きを進めさせていただきます。

皆様の署名活動が多くの方々に届くことの重要性は私たちも理解しておりますが、弊社では各国の法令を遵守するよう努めております。その旨何卒ご理解いただけますと幸いです。

ご不明な点がございましたら、ご連絡ください。

今後とも、Change.orgをよろしくお願いいたします.

 

 以上がChange.orgからの回答です。

 

3 事実経過

 

104日、ダーバン+20:反レイシズムはあたりまえキャンペーンというグループの実行委員の会議参加メンバーの話し合いで、自由民主党に杉田水脈氏を公認しないように申し入れる署名運動・共同声明を始めました。

というのも、自由民主党山口県連から杉田水脈氏を比例中国ブロック候補とする公認申請が出されたことが報道されました。

民族や性的指向などの属性を標的として差別発言と名誉毀損を繰り返してきた、レイシズムの塊のような政治家が何一つ反省することなく、選挙に出馬することを放置しておいてよいのかと考え、共同声明の取組みを始めたのです。

 

105日、共同声明文案を起草し、67日に呼びかけ人を募りました。

 

107日夜、オンライン署名(Change.org)を呼びかけました。

 

1010日までに1万筆を超える賛同を頂きました。

 

1010日午前に自由民主党本部にEメールで共同声明の申し入れをしました。

 

1010日午後に参議院議員会館会議室で共同声明をアピールする集会を開催しました。

 

1010日夕刻、共同声明が報道されました(例えば、「共同通信ウェブサイト」1010日付<「杉田水脈氏に議員の資格なし」 研究者ら、公認しないよう声明>)

 

1010日夕刻、Change.orgのサイトで、共同声明は「一時停止」の扱いとなりました。Change.orgのサイトには下記の説明が表示されました。

「このオンライン署名は審査中です。このオンライン署名はサイト上での公開が停止されています。ポリシーチームによるコミュニティガイドラインへの違反の有無が審査されています。その結果に基づきページ公開の再開または停止継続が決定されます。今しばらくお待ちください。」

 

1010日夜、自由民主党は杉田水脈氏を公認候補としないことが報道されました。

 

1015日、衆議院議員選挙が公示されました。

 

1027日、衆議院議員選挙の投開票が実施されました。

 

4 要請行動と選挙運動の相違

 

 Change.org115日付回答は「先日実施された衆議院議員選挙の期間中、日本の法律を遵守するため、皆様の署名を含む一部のコンテンツが一時的に制限されていました。」「弊社では各国の法令を遵守するよう努めております。その旨何卒ご理解いただけますと幸いです。」としています。回答は「日本の法律」とするのみで、どの法律のどの条文に違反するのかを明示していません。

 

 私たちの共同声明は、日本の法律を遵守しており、いかなる法令にも違反しません。日本の法律を遵守するため、私たちの共同声明が一時的に制限される理由はありません。

 

 衆議院議員選挙の期間中に関連する法律は公職選挙法です。衆議院議員選挙に関わる選挙運動及び落選運動は、公職選挙法に従って行われる必要があります。

 

 公職選挙法第129条は「選挙運動の期間」として「公職の候補者の届出のあつた日から当該選挙の期日の前日まででなければ、することができない」と定めます。公職選挙法第130条以下は選挙事務所、地位利用による選挙運動の禁止、戸別訪問の禁止、署名運動の禁止等を定めます。

 

公職選挙法第138条の2は「署名運動の禁止」として「何人も、選挙に関し、投票を得若しくは得しめ又は得しめない目的をもつて選挙人に対し署名運動をすることができない。」と定めます。

 

以上に照らすと、第1に、共同声明は、「選挙運動」に該当しません。選挙運動の期間は「公職の候補者の届出のあつた日から当該選挙の期日の前日まで」と明示されています。今回の衆議院議員選挙の公示日は1015日でした。

 

2に、共同声明は、「選挙運動」やその「署名運動」に該当しません。共同声明の主眼は、「自由民主党に杉田水脈氏を公認候補としないよう要請」することです。「投票を得若しくは得しめ又は得しめない目的をもつて選挙人に対し署名運動」ではありません。

 

3に、共同声明は、いわゆる「落選運動」としての「署名運動」にも該当しません。落選運動は、「投票を得しめない目的をもつて選挙人に対し署名運動」を意味します。共同声明は「自由民主党に杉田水脈氏を公認候補としないよう要請」するものです。

 

4に、共同声明には、「上記のような杉田水脈氏のこれまでの言動をしっかりと認識して、投票行動の判断をするよう有権者の皆さんに提言します。」という一文があります。これは選挙人に投票行動の判断を主体的に行うよう呼びかけるものであって、「投票を得しめない目的をもつて選挙人に対し署名運動」に該当しません。

 

なお、公職選挙法第138条の2が禁止しているのは「署名運動」であって、落選運動そのものは禁止されていません。仮に選挙運動の期間中であっても、落選運動は法律に違反することなく取り組むことができます。

 

5 おわりに

 

 以上のことから、私たちの共同声明は法律に違反するものではありません。選挙期間以前にオンラインでの呼びかけ・署名運動を行うことは表現の自由として憲法第21条の保障を受けます。

 

 それゆえ、特定の人物を政党の公認候補とするよう要請することや、公認候補としないよう要請することを目的としたオンライン署名運動は自由にできることです。

 

 今後、同様の署名運動、共同声明を準備・実施する際に参考にしていただけたらと考えます。

以上

Monday, January 13, 2025

ヘイト・スピーチ研究文献(227)

藤井正希「批判的人種理論の積極的活用――日本法への適用可能性について」『現代思想』五二巻一四号(二〇二四年)

  「<人種>を考える」特集号に20人ほどの論客が登場し、人種概念がいかにして歴史的社会的に構築され、それぞれの国や地域でどのように機能してきたかが分析されている。『現代思想』らしい力のこもった特集だ。

  その中で、一つだけ性格の異なる論文が藤井論文だ。人種概念の批判的分析ではなく、アメリカにおける批判的人種理論を日本法にいかにして活用できるかを論じている。

  藤井はすでに次の2論文を書いている。

「ヘイトスピーチの憲法的研究――ヘイトスピーチの規制可能性について」『群馬大学社会情報学部研究論集』二三号(二〇一六年)

「批判的人種理論の有効性――ヘイトスピーチ規制を実現するために」『群馬大学社会情報学部研究論集』二七巻(二〇二〇年)

  ヘイト・スピーチの刑事規制は国際常識である。ところが、日本憲法学では圧倒的多数説がヘイト・スピーチの刑事規制を否定し、ヘイト・スピーチは表現の自由とされてきた。差別擁護が日本憲法学の基本特徴であった。最近ようやく状況が変わり、刑事規制は可能であるという論文も登場しているが、まだ少数説である。藤井は早くからヘイト・スピーチ規制を唱えてきた異色の憲法学者である。

  上記の藤井論文について、前田朗『ヘイト・スピーチ法研究原論』二五二~二五四頁、同『ヘイト・スピーチ法研究要綱』八三~八四頁でコメントした。

  藤井は群馬の森朝鮮人追悼碑撤去事件裁判に関与し、裁判所に意見書を提出した。

著書『検証・群馬の森朝鮮人追悼碑裁判』(雄山閣、二〇二三年)

1 はじめに――本稿の目的

2 批判的人種理論とは

3 批判的人種理論の内容

4 人種的忘却性または透明性

5 日本法への適用

6 おわりに――今後への課題

  藤井は、トランプ前政権の時期に、批判的人種理論に対する反動が強まったことを確認した上で、日本におけるヘイト現象には類似性があるとして、「ヘイトスピーチに対してどう向き合うかは、民主主義社会に不可欠な表現の自由と直接に関連する問題だけに、日本社会の成熟度が試されており、今こそ、様々な観点からの幅広い議論が求められている」とする。批判的人種理論を応用して日本におけるヘイト・スピーチ規制の理論的根拠や方法論を提示することを課題とする。

  そこで藤井は批判的人種理論の基本的内容を詳しく紹介する。批判的人種理論とは、人種と法と権力のあいだの関係を改変することを目的とした根本的な法学運動であり、法を用いて人種的平等を達成しようとする。それゆえ、人種差別は個人の逸脱行動ではなく、社会の規範的秩序であり、法律や制度に組み込まれていると見る。

  藤井は、アメリカにおける批判的人種理論の位置や性格と、日本における歴史認識問題の布置に類似性を見る。

藤井はヘイト・スピーチ、ヘイト・デモを取り上げ、広い意味での「人種による差別」であるという。同時に藤井は「それは日本の朝鮮に対する植民地支配という歴史的背景を持つものであり、それゆえ、かつての支配者から被支配者に対する優越感に深く根差している」と見る。国籍問題、選挙権、公務就任問題、生活保護・社会保障の差別、かつての外国人登録法による差別、同化の強制にも言及する。

  「このような日本の法制度や社会制度の中に構造化された在日韓国朝鮮人差別は、あまりに自然で強固なものなので、在日韓国朝鮮人は逆らい難く感じてしまう。よって、結局、在日韓国朝鮮人は日本人の人種的特権を受け入れさせられ、差別を黙認してきたのである。これに対して、マジョリティである日本人は、自己の人種にもとづく社会的特権をまったく意識していない。多くの日本人は、日常生活において在日韓国朝鮮人の存在を意識することはなく、自分たちの地位を在日韓国朝鮮人との関わりのなかで考えることはない。その結果、日本人は、自分たちの生活が人種というものの影響を受けているという事実に気づかない。具体的には、日本人であるがゆえに社会から与えられている様ざまな利益に気づかないのである。」(八六頁)

 「とするならば、批判的人種理論を日本における在日韓国朝鮮人に対するヘイトスピーチ規制に活用することは十分に可能であろう。すなわち、在日韓国朝鮮人は日本人に同化するのではなく、朝鮮独自の文化を守り、発展させるべきであり、在日韓国朝鮮人と日本人がそれぞれの民族性や文化特性を保持しつつ、共存していくべきなのである。また、より多くの在日韓国朝鮮人が法学者や法律家となって、現在の日本人が主体となっている法制度、法学教育、法曹界をマイノリティたる在日韓国朝鮮人の立場から変革していくべきである。」(八六頁)

最後に藤井は次のように結論付ける。

「筆者は、つぎの三点を根拠にして、ヘイトスピーチには早急により強力な法的規制をおこなうべきであると考える。すなわち、①通常の判断能力を有する一般人が実際に日本で行われている極端なヘイトスピーチを見れば、人間の存在自体を全否定する言動に対して、不快感や嫌悪感にとどまらず、衝撃や恐怖を感じざるをえないと考えるからである。とても反論をしようなどと考えることはできず、沈黙するしかないのが通例である。自分は決して見たくない、それゆえ止めてほしい、止めさせたいという素朴な感情を持たざるをえない。それを法に期待することは、決して不当なことではないと信ずる。また、②ヘイトスピーチ規制はもはやグローバル・スタンダードで国際常識であるからである。死刑廃止が世界の潮流であるにもかかわらずそれに背を向けているのと同様に、ヘイトスピーチ規制が世界の潮流であるにもかかわらずそれに背を向けているのが現在の日本なのである。日本は、経済的には先進国だが、人権的には未だ発展途上国と言われてもやむをえない。さらに、③凄惨なジェノサイドや著しい人権侵害は、ヘイトスピーチや民族排外意識から発生することが多いからである。ナチスのホロコーストも、ユダヤ人を排斥する些細なヘイトスピーチから始まり、人びとの意識に浸透する中で、ファシズムが完成し、ジェノサイドという悲惨な結果につながっていった。日本においても、同様のことが起こらないとは限らない。その芽を早期に摘むためにも、ヘイトスピーチの蔓延を放置しないことが大切なのである。」(八六~八七頁)

  なお、藤井は、憲法学においては「現在においても規制消極説がいまだ根強い」とし、最近になって規制積極説が登場しているとして、桧垣伸次と奈須祐治の二人を上げる。

  藤井説の特徴は、第1に、ヘイト・スピーチを差別問題として位置づけていることである。憲法学の多数説は、これを認めない。多数説は「ヘイト・スピーチは表現の自由の問題であり、刑事規制は憲法第二一条に反する」と決めつけて、譲らない。最新の憲法教科書もすべてヘイト・スピーチを表現の自由問題とする。差別問題(憲法第一四条)には言及しない。この一五年間、「ヘイト・スピーチは差別であり、憲法第一四条に反するから、合理的規制が求められる」という少数説が登場しているが、多数説はこの論点に言及しない。あくまでも表現の自由問題であるとする。

 換言すると、規制消極説は「マジョリティの表現の自由を守るべきであり、マイノリティに対する差別問題を取り上げる必要はない」と判断していることになる。

 藤井は、まず差別問題であり、同時に表現の自由問題であることも踏まえて、憲法論を展開するべきだと唱えている。

 第2の特徴は、ヘイト・スピーチの現状・実態を踏まえて、被害論、保護法益論に接近している。被害論や保護法益論を詳細に展開しているわけではないが、議論の土俵は明快である。

 第3の特徴として、藤井は、ヘイト・スピーチに対する反論が非常に困難であり、被害者は沈黙するしかないと見る。憲法学多数説は、「反論すればよい」「対抗言論だ」と唱える。しかし、被差別の現場では、ヘイト・スピーチに対する反論は無意味であり、被害が悪化しかねないことは常識である。ヘイト・スピーチは、相手を対等の損z内富雄馬頭、侮辱し、排除し、存在を否定する。対話の可能性がない。藤井はこのことを認識している。

4に、ヘイト・スピーチ規制は国際常識であるとしている。国際自由権規約や人種差別撤廃条約を始め、国際人権法やEU法では規制が当然のこととされているからだ。

 第5の特徴は、ヘイト・スピーチとジェノサイド等との連関を正面から見据えている。

 第6に、もっとも重要な特徴は、藤井が「ヘイトスピーチには早急により強力な法的規制をおこなうべきであると考える」としていることである。

ヘイト・スピーチ規制積極説であっても、多くは「法的規制が可能な場合がある」とか、「特に重大な事案について、極めて限定的に規制を認めることができるのではないか」といった表現をするのが通例である。

 「早急により強力な法的規制をおこなうべきである」と主張したのは、一部の弁護士や刑事法学者にとどまる。憲法学者で「規制をおこなうべきである」とするのは藤井だけではないだろうか。

藤井が、批判的人種理論を活用して、日本国憲法のもとで、ヘイト・スピーチ規制の理論的根拠をさらに発展させることを期待したい。

Sunday, January 12, 2025

共同テーブル第14回シンポ   税金で育つ『死の商人』 武器で平和は創れない

共同テーブル第14回シンポ

「新しい戦前にさせない」連続シンポジウム

税金で育つ『死の商人』

武器で平和は創れない

日本製武器はウクライナやガザにも!

 

日本の武器生産や武器輸出が急速に進んでいることは、国会でほとんど議論にならずあまり知られていません。一昨年6月に制定された「防衛生産基盤強化法」は、税金を「死の商人」に投入して武器生産に本腰を入れていくものです。間違いなく武器輸出も増えていくことでしよう。日本製のミサイルは生産が追い付かない米国に輸出され、玉突きでウクライナ戦争にも使われます。こうした事態の行き着く先は9条改憲です。

 私たちは「武器で平和は創れない!武器は戦争を呼び込む」という現実を明らかにし、声をあげたいと思います。

 多くの皆様の御出席を、お待ちしております。

 

2月21日(金)午後6時15分~9時 

文京区民センター3A会議室

東京メトロ丸の内線・後楽園駅4b出口 5分、都営・三田線・春日駅A2出口1分会場

 

主催者挨拶:佐高信

講演:

纐纈厚(明治大学国際武器移転史研究所客員研究員)

望月衣塑子(東京新聞記者)

小野塚知二(東京大学名誉教授)

 

*資料代:1000

*多くの参加者が見込まれます。定員(300名)になり次第、申し込みを締め切りますので、大変恐縮ですが、至急、下記のメールアドレスまで、出席申込(氏名・電話番号記入)をお願いいたします。

E-mail e43k12y@yahoo.co.jp

 

共同テーブル連絡先:

藤田高景 090-8808-5000/石河康国 090-6044-5729

共同テーブル発起人

浅井基文(元広島平和研究所所長・政治学者) 安積遊歩(ピアカウンセラー) 雨宮処凛(作家・活動家) 植野妙実子(中央大学教授・憲法学) 上原公子(元国立市長) 大口昭彦(弁護士・救援連絡センター運営委員) 海渡雄一(弁護士) 鎌倉孝夫(埼玉大学名誉教授) 鎌田慧(ルポライター) 金城実(彫刻家) 纐纈厚(山口大名誉教授・歴史学者) 古今亭菊千代(落語家) 佐高信(評論家) 清水雅彦(日体大教授・憲法学) 白石孝(NPO法人官製ワーキングプア研究会理事長) 杉浦ひとみ(弁護士) 竹信三恵子(和光大名誉教授・ジャーナリスト) 田中優子(前法政大学総長)鳥井一平(全統一労働組合・中小労組政策ネットワーク) 古田兼裕(弁護士) 前田朗(朝鮮大学校講師) 宮子あずさ(随筆家) 室井佑月(小説家・タレント) 山城博治(沖縄平和運動センター顧問)