昨日は新宿・紀伊國屋サザンシアターでこまつ座公演「うかうか三十、ちょろちょろ四十」(井上ひさし作、鵜山仁演出)だった。
http://www.komatsuza.co.jp/contents/performance/
井上ひさし24歳の演劇デビュー作。もっとも、当時は上演されなかったし、こまつ座でも上演は初めて。井上ひさしらしく、東北地方の農村を舞台にし、セリフもすべて東北弁。ただし、どの地方の言葉ということではなく、東北各地の言葉をごっちゃにしているという。このところ、こまつ座での井上作品のお演出は、蜷川幸雄、栗山民也、鵜山仁が競い合っている。いずれも井上作品に習熟し、井上作品を愛し、徹底的に、これでもかと観客を楽しませる演出家だ。今回も、鵜山仁は、農村の貧しい農家を舞台の中央に据え付け、物語の展開に応じて農家をぐるりと回して見せる。3幕の短い演劇だが、後の井上作品を予感させるほのぼのした情景で、くすくす笑わせ、どっと笑わせ、暗転して悲劇になってもやはり笑わせる。坂口安吾の『桜の森の満開の下』ほどのスリリングな展開ではなく、物語が静かに進み、静かに終わるが、人間存在につきまとう悲哀を主題としている点は共通している。どんでん返しは単純だが、最後に人生の怖さを突き付けて、終わる。最後の仕掛けも、また楽しい。終演後に、藤井隆、福田沙紀、鈴木裕樹、田代隆秀、小林勝也によるトークもあった。観劇後は新宿西口の紀州料理。