第2次大戦後、国連憲章は紛争解決手段としての武力行使という考えを否定した。第1次大戦後の国際連盟のもとで達成した不戦条約が踏みにじられた経験をもとに、国連中心の集団安全保障体制をつくりつつ、不戦条約を継承・発展させて、武力行使の制限を試みた。国連憲章第2条第4項は「すべての加盟国は、その国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎まなければならない」とした。この条項の解釈は、安保理事会、国連総会、国際司法裁判所によって検討されてきた。国連における議論は、国際政治の対抗の中で行なわれ、東西対立をはじめとする緊張関係の中で進められたので、侵略という用語もきわめてイデオロギー的に使われた。そのため、法的意義については疑問が指摘されるが、議論の積み重ねを無視することはできない。
国連憲章第24条によれば、安保理事会は国際平和と安全の維持に責任を有するので、国連憲章第39条に従って、平和に対する脅威、平和の破壊、侵略行為の存否を判断する権限を有する。また、国際平和と安全の維持または回復のために必要な手段を勧告し決定する権限を有する。そこで、安保理事会は侵略行為について議論を重ねてきた。次回からいくつか紹介する。