ベルン出身の画家アルベルト・アンカーがベルン市民の日常を作品に描いたキルヒェンフェルト橋を渡るとヘルヴェティア広場に出る。右にアルプス博物館、左に美術ホールがあり、正面にベルン歴史博物館がある。古城を思わせるつくりの博物館、のはずが、すっかり様変わりしていた。元からの建物の前に、白くてモダンな増築がなされていて、入口受付、売店、レストランになっていた。変わりように驚いたが、元の建物の前部に増築したもので、元の建物自体は残っている。この夏、ベルン歴史博物館は秦の始皇帝の展示だった。ベルン市内に「QIN」というポスターが大々的に張り出してあって、いった何かと思ったら秦の始皇帝Qin Shi Huang(紀元前259~210年)のようだ。展示は「始皇帝陵及び兵馬俑坑」で、始皇帝陵からの出土品だ。始皇帝の治績の解説はあまり多くなく、ひたすら世界遺産の出土品の凄さを体感させる展示だ。たぶん、日本でも展覧会が行われただろうが、見ていないので、ベルンでじっくりと見た。本来なら8000人が殉死するところを、8000体の人物像や兵馬俑を制作し、埋葬したスケールの大きさには驚嘆するしかない。紀元前3世紀にこれほどまでのスケールの墳墓を造営した文化の重みを痛感する。ベルン歴史博物館には、他にも常設展として、アジアの文物、ベルン地域の考古学、アインシュタイン博物館(アインシュタインはベルンの特許庁に勤務していたので、住んでいた建物は街中にあり、いまはアインシュタイン記念館となっている。歴史博物館には別途、展示がある)などがある。始皇帝展を見に来た家族連れが、他の展示も見ていた。ベルンで思いがけない中国史の勉強だった。