足立力也『緑の思想』(幻冬舎ルネッサンス)――『丸腰国家』『平和って何だろう』で軍隊のない国家コスタリカの法と社会を紹介してきた著者のもう一つの思想世界が、「みどり」だ。2004年には「みどりの会議」から参議院選挙に出馬、現在は「緑の党グリーンジャパン」運営委員。本書の副題は「経済成長なしで豊かな社会を手に入れる方法」である。20世紀を支配した資本主義や共産主義を乗り越える環境中心主義の「みどり」だが、著者によるとこれは単なるエコロジーではなく、持続可能な21世紀の社会モデルを提示する総合的な社会思想である。本書は「緑の思想」を日本で本格的に提示・展開した最初の本になるだろう。日本ではドイツの緑の党は良く知られているし、環境中心主義の考えも知られているが、それだけでは十分ではない。環境中心と言っても、しばしば資本主義の論理にからめ捕られているからだ。著者は、つまみぐいではない、「緑の思想」を根本に据えて、近い将来社会論を提示する。第1章「緑の思想とは何か」、第2章「グローバル・グリーンズの6原則」、第3章「日本における緑の党発祥の歴史」、第4章「日本における緑の基本思想の発展と適用」、第5章「世界で活躍する緑の党」。よく練られた構成と内容で、文章も読みやすい。『丸腰国家』『平和って何だろう』が出版された時に、出版記念を兼ねて八王子・市川・東京で講演会を企画・実現したことがある。福岡在住の著者に東京に出てもらい、なんと2日に3つの講演という強行軍をお願いした。その時にも本書のごくごく断片は顔をのぞかせていたが、本書を読んで初めてわかったことも多い。