釣部人裕『雪冤――冤罪のない社会へ』(ダイナミックセラーズ出版)
1月18日に大阪で開催した『21世紀のグローバル・ファシズム』出版記念会の折に、著者から本書をいただいた。宮本弘典(関東学院大学教授)が巻頭言を書いている。千葉成田ミイラ事件が冤罪であるとして、再審請求を目指しいている。無罪を訴えている高橋弘二は、2000年2月に逮捕され、殺人罪で起訴された。1999年11月11日が「事件」発生日ということだが、著者によると、関係者が「被害者」は生きていると言っているのに、千葉県警は99年11月12日に「遺体」を押収して冷蔵室に入れ、3日後に司法解剖をさせた。鑑定書には死亡推定時期が解剖時より1~5か月前とされている。明らかに幅が広すぎる。押収以前、「被害者」は冷房を使用していないホテルの一室にいた。5か月も置かれていたならば、腐敗し大変な悪臭を放っていたはずだ。いくつもの論点があり、本書は警察の不正を告発している。刑法理論上の論点としては、不真正不作為犯としての殺人罪の成否があげられる。重要な論点だ。新書200頁に満たない小さな本なのですぐに読み終えたが、本書ではわからないことが多い。より詳細な、釣部人裕・高橋弘二『千葉成田ミイラ事件①』があるので注文した。