高橋俊介『ホワイト企業』(PHP新書、2013年)
ブラック企業が流行語になったので、そのうち出るだろうと思っていたが、早くもホワイト企業というタイトルの便乗本が出た。レッド企業やグリーン企業は出ないのだろうか。著者は、企業での人事・組織論の経験が豊かな、慶應義塾大学教授で、内閣沖縄振興審議会委員として沖縄の企業における人材育成戦略を展開している。書名は便乗だが、内容はそれなりの質を持っている。戦後日本資本主義を支えた輸出型生産企業におけるピラミッド型組織におけるタテ型OJTは崩壊したとして、サービス業化した日本の課題は新しい現実に即応した人材育成戦略であるとし、人材育成力を高めることによって、ブラック企業に陥ることなく、ホワイト企業として成長できるという。働きやすさも働きがいもないブラック企業は論外だが、単に「人を大事にする企業」といったお題目も不適切であり、自律的な人材をどのように育てるかの戦略が必要だと言う。実例としてサイバーエージェント、スターバックスコーヒージャパン、リッツ・カールトン、星野リゾートなどがあげられている。著者が調査した例もあれば、著者自身の実践の例もある。ブラック企業を批判して、若者がブラック企業に捕まらないようにしていく必要があると同時に、ホワイト企業の条件を明らかにして、ホワイト企業を増やしていくことも重要である。