青木理『抵抗の拠点から――朝日新聞「慰安婦報道」の核心』(講談社)
宣伝帯に「朝日バッシング=歴史修正主義と全面対決する」「闘うジャーナリストが、右派の跳梁に抗する画期的な一冊!」とあるように、問題の核心をついたコラム、ルポ、インタヴューである。常軌を逸した朝日バッシングが吹き荒れる中、著者は「戦犯」とされた当事者に取材を重ねた。「慰安婦」記事を最初に書いたことで論難され、脅迫被害を受けている植村隆・元記者、若宮啓丈・元朝日主筆、前報道局長・市川速水、ら朝日関係者へのインタヴューである。植村隆・元記者は『文芸春秋』『世界』に原稿を掲載し、先日、反撃の裁判提訴を行ったが、それ以前に行われた貴重なインタヴューである。また、若宮・元主筆や市川・前報道局長へのインタヴューも的確であり、知りたいことを伝えてくれている。さらに、「慰安婦」記事とは関係していないが元編集局長・外岡秀俊にも将来に向けてのインタヴューをしている。
著者の『絞首刑』『誘蛾灯』は『年報死刑廃止』の「死刑関係文献案内」で紹介してきた。また、救援連絡センターの集会で講演してもらったことがあるが、「慰安婦」問題についてもこういう本を出してくれて有難い。