グルジア政府が人種差別撤廃委員会に提出した報告書(CERD/C/GEO/4-5. 25 February 2011)によると、刑法第142条は、民族又は人種的理由に基づいて敵意や紛争を煽動する目的でなした作為又は不作為、並びに人種、皮膚の色、社会的出身、国民又は民族的アイデンティティに基づいてなされた直接又は間接の人権侵害、又は以上の理由に基づく個人の偏重を犯罪としている。作為とともに不作為の犯罪が掲げられているのは注目に値するが、具体例は必ずしも明らかではない。他人の作為によって人種差別煽動状況が作り出されているのを知りながら、容易にそれを止めることのできる立場の者が、不作為によってその状況を維持し続ける場合であろうか。また、間接の人権侵害も犯罪となることがありうることにも注意が必要である。重大犯罪に人種、宗教、国民的又は民族的理由が伴えば刑罰加重事由となる。