清水雅彦『憲法を変えて戦争のボタンを押しますか』(高文研)――「自民党憲法改正草案の問題点」という副題の本書は、右ページに現行憲法と自民党改憲案の対照表をのせ、左ページに著者による解説を載せている。最後まで一貫してこのスタイルで通しているところが、最大の特色か。従って、目次は「前文」「第一章天皇」~「第十一章最高法規」まで憲法の構成と同じだが、「第二章戦争の放棄」は「第二章安全保障」となり、現行憲法にはなくて自民党改憲案だけの「第九章緊急事態」がある。著者の解説は、コンパクトだが要点を押さえ、わかりやすい。欄外註も、よくあるような編集者が辞典から引っ張ってきたような解説ではなく、著者自身が書いたもので、抑制的だが、時折著者の信念が前に出る。立憲主義とは何か、平和主義とは、民主主義とは、という基本から、自民党改憲案は失格であることを明確に示している。この夏、憲法論・改憲論としては、伊藤真、青井美帆、水島朝穂などの著作を読んだ。いずれも興味深く、勉強になる本だが、本書も、改憲問題の基本を理解して、安倍政権による憲法破壊と闘うためのテキストとしてよくできている。著者は日本体育大学准教授(憲法学)で、研究テーマは平和主義と監視社会論。後者については著書『治安政策としての「安全・安心まちづくり」』がある。