大木英治『逆襲弁護士河合弘之』(さくら舎)――「勝つまでやる。だから負けない。おれは逆襲弁護士だ」――本書最後の1行は脱原発弁護団全国連絡会共同代表の脱原発の闘う志を示すとともに、ビジネス弁護士として数々のバブル経済事件を担当してきた“法の凄腕用心棒”の生きざまを示す。今では脱原発弁護士としても知られ、中国残留孤児の支援なども続けている河合弁護士だが、いわゆる人権弁護士ではなく、ビジネス弁護士である。というよりも、企業乗っ取り、企業再建、M&Aなど「巨悪たちの奪うか奪われるかの舞台」で踊る弁護士であった。平和相互銀行事件、ダグラス・グラマアン事件、リッカー再建、つぼ八事件、秀和・忠実屋事件、イトマン事件、福岡ドーム事件、国際航業事件、蛇の目ミシン事件など、カネと欲望の渦巻く世界を法と才能と機略で渡り歩いた個性派弁護士として有名だ。時に悪徳弁護士と批判されたこともある。その舞台裏を明かした本であり、読み物としておもしろい。他方、最終章で、東電相手の脱原発訴訟、株主訴訟や刑事告発の取り組みも紹介される。河合弁護士は、原発民衆法廷にも協力してくれた。