Tuesday, September 30, 2025

インタヴュー講座:脱植民地主義のために(第1回)

インタヴュー講座:脱植民地主義のために(第1回)

敗戦80年の今日、日本の政治社会は過去の侵略戦争と植民地支配を忘却し、日本人の戦争被害だけを語ります。歴史の風化と浸蝕が進んでいます。しかし、植民地主義は過去の歴史ではなく現在の「日本問題」です。過去を問い直しながら現在と将来の課題に挑む必要があります。ジェンダー史研究者の金富子さんに脱植民地主義の課題について語ってもらいます。

日時:111日(土) 午後6時半~8時半(6時開場)

会場:東京ボランティア市民活動センター(飯田橋RAMLA10階)

参加費:500

 

ジェンダー視点から見た関東大虐殺

  ――1923年のジェノサイドと「レイピスト神話」

金富子さん

*講師プロフィール:東京外国語大学名誉教授、専攻は植民地朝鮮ジェンダー史、植民地公娼制や日本軍「慰安婦」問題、現代韓国の性買売研究。Fight for Justice共同代表。主著に『植民地期朝鮮の教育とジェンダー』『継続する植民地主義とジェンダー』(以上世織書房)、共編著に『もっと知りたい「慰安婦」問題:性と民族の視点から』(明石書店)、『植民地遊廓――日本の軍隊と朝鮮半島』(吉川弘文館)、『歴史と責任――「慰安婦」問題と一九九〇年代』(青弓社)、『女性国際戦犯法廷20年』(世織書房)、『性暴力被害を聴く:「慰安婦」から現代の性搾取へ』『記憶で書き直す歴史――「慰安婦」サバイバーの語りを聴く』(以上岩波書店)など多数。

*第2回予定「日本軍性奴隷制を裁く女性国際戦犯法廷25年」

*第3回予定「現代韓国の反性売買女性運動――ポストコロニアル・フェミニズム運動の一断面」

主催:平和力フォーラム

連絡先:07023071071(前田)

E-mail:akira.maeda@jcom.zaq.ne.jp

Monday, September 29, 2025

深沢潮を読む(4)「在日」を生きた歴史と父の物語

深沢潮を読む(4)「在日」を生きた歴史と父の物語

深沢潮『ひとかどの父へ』(朝日新聞出版、2015年)

 

『ハンサラン 愛する人びと』で愛のかたちと家族のかたちを描き、『伴侶の偏差値』で平凡で普通でつまらない人生と溢れる物語を、『ランチに行きましょう』で非日常へのささやかな挑戦を始めた深沢潮は、第4作となる本書で、さらに挑戦を続ける。

現代を生きる家族、とりわけ母と娘の普遍的なテーマを追いかけてきたが、本書では父が主題となる。最終盤にようやく登場する父だが、父が背負った歴史の大きさと厳しさが全編を貫く。だが、母と娘も、父の物語に翻弄されるだけではない。父の物語を受け止め、それぞれの人生を紡いでいく。

もう1つの挑戦は、長編小説への歩みである。これまでの3作品は連作短編であったが、本作品は長編小説である。とはいえ、得意の連作短編の手法を元に長編化を試みている。

日本が戦後復興期を経て高度成長を始めた、東京オリンピックの1964年に、川崎の朝鮮人集住地区で出会った謎の朝鮮人と日本人女性。

1977年、母に育てられた成績優秀ながら孤独を抱え込んだ女子生徒の表層の悩みと深層の秘密。

夫が行方不明となる中、娘を育てて、必死に働き、成功した母親の絶頂期、1990年に襲った突然のスキャンダル。

ようやく明らかになる父親の秘密。そこには過去の日本の朝鮮半島植民地支配、戦後の朝鮮半島の分断、そして韓国軍事独裁政権への抵抗としての民主化運動がからまりあう。

2014年、祖母と母(娘)と孫のソウル観光が、冒頭と巻末で描かれ、父と娘の出会いと、和解ならぬ和解が遠くに見える。

1964年から2014年へと至る半世紀のスパンだが、女性たちの人生の転機を切り取って、愛、信頼、不信、憎悪、ぶつかり合い、思い出が時空間を満たす。

密入国、軍事独裁、抵抗の民主化運動、大統領狙撃といった東アジア現代史は、ほとんどいつも男たちの闘いとして描かれてきたが、深沢は同じ時代を生き抜く女性たちを主役に据える。

母(娘)を中心にした作品なので、孫娘の思いはほとんど描かれないのが、やや気になる。

在日文学は、歴史塗れの日本と朝鮮、半島の政治的分断、朝鮮への帰国事業、韓国の軍事独裁と民主化運動という激動に突き動かされ、歴史を全身で受け止めながら闘ってきた。

現代を生きる女性の意識を主題に据えてきた深沢潮は、日本女性/在日女性の愛と家族の物語を見事に表現してきたが、本作品では在日の歴史そのものをベースにおいて、そのうえで物語を紡ぐ。鮮やかな手法に感銘を受ける。

Sunday, September 28, 2025

護憲ネットワーク北海道 2025年第2回講演会  非武装中立のリアリズム

護憲ネットワーク北海道 2025年第2回講演会

非武装中立のリアリズム

     ~軍隊のない国から見た日本~

 

本年2025年は先の戦争が終結して80年。日本国憲法のもと、まがりなりにも日本は海外で戦争に参加することなく「平和国家」の道を歩んできました。しかし、安倍政権以降、集団的自衛権の容認・「安保三文書」の策定・敵()地攻撃能力の保持・軍事費のGDP比2%への激増そして沖縄南西諸島の軍事基地化など軍拡に狂奔しています。軍拡で国民の安全と生活そして平和を本当に守れるのでしょうか。今一度、みんなで考えあってみませんか!

 

日時:2025年10月17日(金曜日)

開場午後5時30分 開演午後6時から午後8時

場所:かでる2・7 10階1060会議室

札幌市中央区北2条西7丁目 ℡ 011-204-5100

参加費:資料代として800円を申し受けます

 

講師:前田 朗

 

(特別参加)

清末愛砂さん

前田朗さんと「RAWAと連帯する会」の共同代表としてご活躍の室蘭工業大学大学院教授清末愛砂さんに特別参加いただき、現状報告などをする予定です。

 

主催:護憲ネットワーク北海道

連絡先 :

札幌市中央区北12条西18丁目1-19 ブリック札幌桑園204号室

 ℡.011-676-5862 Fax.011-590-0316 Email ; gokennet@bf.wakwak.co

賛同:市民自治を創る会、戦争させない市民の風・北海道

後援:北海道平和フォーラム

Saturday, September 27, 2025

KEMPOフェスタ 戦後80年!あらゆる戦争を許さない!憲法9条を守りひろめる小樽地区平和集会

KEMPOフェスタ

戦後80年!あらゆる戦争を許さない!憲法9条を守りひろめる小樽地区平和集会

 

20251019日(日)14001630(会場1330

小樽市生涯学習プラザ・レビオ第12学習室

「非武装中立のリアリズム~~軍隊のない国家から見た日本」

前田 朗

 

主催:小樽ピースアクション

後援:北海道9条連

賛同団体:後志平和運動フォーラム、軍拡NO!女たちの会・北海道、みみずく舎、小樽・子どもたちの環境を考える親の会、生活クラブ小樽支部、ゼロ番地で沖縄について考える会、新日本婦人の会小樽支部、『週刊金曜日』小樽読者会、平和憲法を未来へつなぐ会・小樽、九条の会小樽ネット、猫の事務所九条の会

お問い合わせ:09082889623

Thursday, September 25, 2025

いつも「日本人ファースト」だった ―植民地主義と排外主義の現在―

いつも「日本人ファースト」だった

―植民地主義と排外主義の現在―

 

1018日(土)開場13時、開会1315分~1545

札幌市教育文化会館302研修室

札幌市中央区北1条西13丁目

※地下鉄東西線「西11丁目」駅より徒歩5

参加費800円(25歳以下は無料)

 

2025年夏、「日本人ファースト」が声高に叫ばれました。いつも見てきた光景です。大日本帝国憲法の下、周辺各国を侵略した日本は「大東亜の盟主」と称しました。日本国憲法は象徴天皇制を冒頭に掲げ、「国民の権利」を唱えて、外国人の権利を著しく制限しました。21世紀に入っても差別とヘイトと排外主義がはびこっています。実際は「アメリカ・ファースト、日本人セカンド、その他の外国人ラスト」が実態で、アメリカに追随して言いなりになる「日本主義」です。差別と排外主義を克服するための市民の課題を共に考えましょう。

 

◆市民会議メンバーからの報告(30分)

 「アイヌ史実を学ぶパネル展から」 鈴木 澄江

 「日常のなかから出会わさせられること 曺金 時江

 「朝鮮学校差別」 黒田 敏彦

◆ゲスト講演(60分) 前田朗

◆質疑・意見交流(30分)

 

札幌市に人種差別撤廃条例をつくる市民会議

問合せ先 TEL.090-6446-3974(チョキムシガン) 

syu@sapporoyu.org(さっぽろ自由学校「遊」:小泉)

Thursday, September 18, 2025

深沢潮を読む(3)非日常へのささやかな挑戦

深沢潮を読む(3)非日常へのささやかな挑戦

深沢潮『ランチに行きましょう』(徳間書店、2014年)

 

8月末から9月中旬にかけて、東京、さいたま、横浜、川崎、茅ケ崎で関東大虐殺の追悼式に参加した。千葉や本庄や寄居でも開かれたがバッティングしていて参加できなかった。102年目の現在、「日本人ファースト」というねじまがった排外主義がこの国を覆っている。もともと日本主義、日本人優先思考が定着している国だ。日本国憲法自体がレイシズムの根拠と言っても良い。天皇制と国民主義が外国人差別を正当化してきた。それでも飽き足りなくて、「日本人ファースト」と叫ぶ。それほど自由と平等が弱体化し、マジョリティの自己中心主義が蔓延している。

深沢の作品は、日常の中の小さな物語の集積を通じて、この社会の縮図を描き出す。

「幼稚園ママ」「シングルママ」「スピリチュアルママ」「ママブロガー」「ビューティフルママ」――成城学園に家庭を持ち、幼稚園の子どもの送迎の場で出会った女性たちが、育児、子どもの進学、幼稚園でのいじめ、家庭、夫の浮気の疑い、素敵なレストランでの食事、インチキ・スピリチュアルでの性被害など、多様な場面で遭遇し、すれ違い、ぶつかりあい、それでも仲良くランチをともにする。

信頼、安心、不信、疑惑、嫉妬、悩み事相談、助言、ひそひそ話、裏切りを、お互いに共有しながら、それぞれの「自分」を生きようとする。

都会の家庭の日常が次々と積み上げられ、堀り崩され、交錯する。若きママたちの平凡で、悩み多き人生の一断面である。

ところが、深沢はここで一瞬飛躍を試みる。最終章「チームママ友」で、5人のママたちが一丸となってTV番組に挑戦する。5人組が競い合うクイズ番組『チームで挑戦』に出場した5人は、家庭環境の違いも子どもたちのいじめも超えて、自分のために、だが一致団結してクイズに挑戦する。日常ではなく、TV番組への挑戦という非日常に乗り出すことで、深沢作品が小さな変化を見せる。クイズ挑戦は、TV局の裏工作によって、挫折するが、それでも5人は結束して歩みながら、日常に帰っていく。

ここから深沢作品の次の展開が始まるのかどうかわからないが、いい意味で読者を裏切る試みだろう。

Wednesday, September 10, 2025

コリアン・マイノリティ研究会 1998年のヘイト・クライム ―千葉朝鮮会館強盗殺人事件

コリアン・マイノリティ研究会

第251回月例研究会

 

1998年のヘイト・クライム

千葉朝鮮会館強盗殺人事件について

 

前田 朗(朝鮮大学校法律学科講師・東京造形大学名誉教授)

 

日 時:2025年10月25日(土)15:00~17:00 終了後、懇親会

場 所:猪飼野セッパラム文庫

 (大阪市生野区新今里2--16 もと辻本写真館1階 新今里公園北側) 

近鉄「今里駅」から5分・地下鉄「今里駅」から10分 大阪コリアタウン東端から東へ徒歩15分

参加費:1000円・会員800円・学生・院生・U25無料

 

ウトロ放火事件(2021年8月30日)が起きて、ヘイト・クライムという言葉が普及しました。ヘイト・クライムは長年ずっと起きてきました。1998年の千葉朝鮮会館強盗殺人事件、2018年の朝鮮総連本部銃撃事件が典型です。これらの事件を日本社会は忘れようとしますが、消すことのできないヘイト・クライムです。

 

「〈羅勲(ラフン)副委員長殺害事件〉千葉殺人放火事件から1年/理解しがたい捜査」『朝鮮新報』19991013

 総聯千葉支部の羅勲副委員長(当時42歳)が殺害され、犯行現場の千葉朝鮮会館が放火された事件は、15日で丸1年となる。真相は今もって闇の中だが、犯人を追うべき警察の理解しがたい動きも含め、在日同胞と総聯にとっての不安材料は、解消されるどころかむしろ増大している観さえある。

 「なぜ総聯と取り引きするのか」「総聯の人間は北朝鮮で教育を受けて活動する日本の敵だ」   

 9月22日、会館に出入りする日本人業者は突然、事件の捜査を担当している県警捜査一課員から脅しとも取れる暴言を浴びせられた。

 また、捜査員が年初の2月9日に朝銀職員を、9月14日には総聯職員を尾行していた事実も発覚してい

る。

 近年、チマ・チョゴリを着た朝鮮学校の生徒をはじめ、在日同胞をねらった暴力事件、いやがらせの例には枚挙にいとまがない。とくに昨年8月末以降、狂乱的とも言える「テポドン」騒動の中で事態は深刻さを増した。羅副委員長殺害事件は、その代表的なものだと言える。

 しかし、再発防止のための捜査、対策が徹底された形跡はまるで見当たらない。逆に、取材していて聞こえて来るのは、公安当局の「総聯シフト」の情報ばかりだ。

主 催:コリアン・マイノリティ研究会 NPO 法人 猪飼野セッパラム文庫内

090-9882-1663 masipon2023@gmail.com 懇親会への参加の有無も

 

Monday, September 08, 2025

軍隊のない国家で非暴力・非武装の平和主義を考える

軍隊のない国家で非暴力・非武装の平和主義を考える

無防備地域宣言で憲法9条のまちを!

 

武力は平和を作れない!

武力は平和を守れない!

武力は国民を守れない!

殺すことも殺されることもない

チェンジを!

 講演:前田朗


日時:927日(土)午後1:30~3:30、受付1:00,

会場:日本キリスト教団高崎教会

(群馬県高崎市東町1347JR高崎線高崎駅東口徒歩7分)

参加費:500

 

主催:公益財団法人日本キリスト教婦人矯風会

連絡先09074288055

Monday, September 01, 2025

深沢潮を読む(2)平凡で普通でつまらない人生と溢れる物語

深沢潮『伴侶の偏差値』(新潮社、2014年)

 

週刊新潮差別コラム事件は、その後、深沢潮がその著書の版権を引き上げると発表がなされた。新潮社の方は、型通りのお詫びですませようとしている。お詫びと言っても、差別したことを詫びていない。謝罪していない。差別と批判されるようになった事態、世間を探せたことをお詫びしているにすぎない。日本的と言うか、なんというか。編集長を変えることもないのだろうか。

831日、紀伊国屋書店が、「差別的な表現を助長しかねない」と謝罪表明をした。紀伊國屋書店大阪・本町店の公式X(旧ツイッター)で、同アカウントで紹介した書籍が「差別的な表現を助長しかねない可能性があった」として、謝罪文が掲載された。当該投稿を削除したことも報告された。同アカウントでは直前に、トルコ国籍のクルド人をめぐる社会問題をテーマにしたノンフィクション書籍の販売を伝える投稿が拡散されたが、その後、見られなくなっている。埼玉県鶴ヶ島市議会議員の福島めぐみ氏が「書店としてさまざまな本を置くのは100歩譲って認めるとして、せめてヘイト本を宣伝しないでほしい」とXにポストしていたという。

『伴侶の偏差値』は深沢の第2作で、最初の長編小説だ。

有名女子大学卒業の仲良し3人組、真紀、佳乃、未央が久しぶりに表参道のカフェで会う。真紀は会社員として勤務しているが、未婚の30代女性。佳乃は早めに結婚して子育て中。未央は作家志望だったり歌手志望だったり、チャレンジ精神に富むが芽が出ない。

仲良し3人組だったが、いつも少しぶつかりあい、疑りあい、嫉妬しあい、同情しあい、だが相談し合う仲。2000年代から2010年代にかけて、有名女子大学卒業で、それなりにめぐまれながらも、自己実現に悩み、恋愛やパートナーとの生活に悩み、家族との関係に悩む。言ってみれば、平凡で普通でつまらない庶民の日常が描かれるが、そこに物語が溢れている。

結婚願望を強く持ち、将来住むべくモデルルームをめぐる趣味の持ち主でもある真紀は、母親と弟に翻弄されながら、会社では同僚男性と間延びした恋愛中。なんとか結婚をと思っていたのに、東日本大震災のさなか、彼氏はお別の同僚女性と浮気し、妊娠させて、結婚する。捨てられた真紀は、表参道のカフェの好青年と付き合うが、この青年は自分を育ててくれた男性への思慕から逃れられない。真紀は昔の不倫相手と性愛にふけるが、それも重荷にしかならない。

最初から最後まで、真紀、佳乃、未央の日常、ささいな不満、呟き、家族の物語である。唯一、東日本大震災という巨大な場面転換が訪れ、話題が飛躍的に展開するかと期待しても、そうはならない。むしろ、大震災の衝撃は、平凡で普通でつまらない人生の意味を問い直す方向に機能する。大文字の政治や社会ではなく、等身大の庶民の日常を描き続けることで、深沢はいま、ここで、生きる人々の精神世界を浮き彫りにする。