Wednesday, September 10, 2025

コリアン・マイノリティ研究会 1998年のヘイト・クライム ―千葉朝鮮会館強盗殺人事件

コリアン・マイノリティ研究会

第251回月例研究会

 

1998年のヘイト・クライム

千葉朝鮮会館強盗殺人事件について

 

前田 朗(朝鮮大学校法律学科講師・東京造形大学名誉教授)

 

日 時:2025年10月25日(土)15:00~17:00 終了後、懇親会

場 所:猪飼野セッパラム文庫

 (大阪市生野区新今里2--16 もと辻本写真館1階 新今里公園北側) 

近鉄「今里駅」から5分・地下鉄「今里駅」から10分 大阪コリアタウン東端から東へ徒歩15分

参加費:1000円・会員800円・学生・院生・U25無料

 

ウトロ放火事件(2021年8月30日)が起きて、ヘイト・クライムという言葉が普及しました。ヘイト・クライムは長年ずっと起きてきました。1998年の千葉朝鮮会館強盗殺人事件、2018年の朝鮮総連本部銃撃事件が典型です。これらの事件を日本社会は忘れようとしますが、消すことのできないヘイト・クライムです。

 

「〈羅勲(ラフン)副委員長殺害事件〉千葉殺人放火事件から1年/理解しがたい捜査」『朝鮮新報』19991013

 総聯千葉支部の羅勲副委員長(当時42歳)が殺害され、犯行現場の千葉朝鮮会館が放火された事件は、15日で丸1年となる。真相は今もって闇の中だが、犯人を追うべき警察の理解しがたい動きも含め、在日同胞と総聯にとっての不安材料は、解消されるどころかむしろ増大している観さえある。

 「なぜ総聯と取り引きするのか」「総聯の人間は北朝鮮で教育を受けて活動する日本の敵だ」   

 9月22日、会館に出入りする日本人業者は突然、事件の捜査を担当している県警捜査一課員から脅しとも取れる暴言を浴びせられた。

 また、捜査員が年初の2月9日に朝銀職員を、9月14日には総聯職員を尾行していた事実も発覚してい

る。

 近年、チマ・チョゴリを着た朝鮮学校の生徒をはじめ、在日同胞をねらった暴力事件、いやがらせの例には枚挙にいとまがない。とくに昨年8月末以降、狂乱的とも言える「テポドン」騒動の中で事態は深刻さを増した。羅副委員長殺害事件は、その代表的なものだと言える。

 しかし、再発防止のための捜査、対策が徹底された形跡はまるで見当たらない。逆に、取材していて聞こえて来るのは、公安当局の「総聯シフト」の情報ばかりだ。

主 催:コリアン・マイノリティ研究会 NPO 法人 猪飼野セッパラム文庫内

090-9882-1663 masipon2023@gmail.com 懇親会への参加の有無も

 

Monday, September 08, 2025

軍隊のない国家で非暴力・非武装の平和主義を考える

軍隊のない国家で非暴力・非武装の平和主義を考える

無防備地域宣言で憲法9条のまちを!

 

武力は平和を作れない!

武力は平和を守れない!

武力は国民を守れない!

殺すことも殺されることもない

チェンジを!

 講演:前田朗


日時:927日(土)午後1:30~3:30、受付1:00,

会場:日本キリスト教団高崎教会

(群馬県高崎市東町1347JR高崎線高崎駅東口徒歩7分)

参加費:500

 

主催:公益財団法人日本キリスト教婦人矯風会

連絡先09074288055

Monday, September 01, 2025

深沢潮を読む(2)平凡で普通でつまらない人生と溢れる物語

深沢潮『伴侶の偏差値』(新潮社、2014年)

 

週刊新潮差別コラム事件は、その後、深沢潮がその著書の版権を引き上げると発表がなされた。新潮社の方は、型通りのお詫びですませようとしている。お詫びと言っても、差別したことを詫びていない。謝罪していない。差別と批判されるようになった事態、世間を探せたことをお詫びしているにすぎない。日本的と言うか、なんというか。編集長を変えることもないのだろうか。

831日、紀伊国屋書店が、「差別的な表現を助長しかねない」と謝罪表明をした。紀伊國屋書店大阪・本町店の公式X(旧ツイッター)で、同アカウントで紹介した書籍が「差別的な表現を助長しかねない可能性があった」として、謝罪文が掲載された。当該投稿を削除したことも報告された。同アカウントでは直前に、トルコ国籍のクルド人をめぐる社会問題をテーマにしたノンフィクション書籍の販売を伝える投稿が拡散されたが、その後、見られなくなっている。埼玉県鶴ヶ島市議会議員の福島めぐみ氏が「書店としてさまざまな本を置くのは100歩譲って認めるとして、せめてヘイト本を宣伝しないでほしい」とXにポストしていたという。

『伴侶の偏差値』は深沢の第2作で、最初の長編小説だ。

有名女子大学卒業の仲良し3人組、真紀、佳乃、未央が久しぶりに表参道のカフェで会う。真紀は会社員として勤務しているが、未婚の30代女性。佳乃は早めに結婚して子育て中。未央は作家志望だったり歌手志望だったり、チャレンジ精神に富むが芽が出ない。

仲良し3人組だったが、いつも少しぶつかりあい、疑りあい、嫉妬しあい、同情しあい、だが相談し合う仲。2000年代から2010年代にかけて、有名女子大学卒業で、それなりにめぐまれながらも、自己実現に悩み、恋愛やパートナーとの生活に悩み、家族との関係に悩む。言ってみれば、平凡で普通でつまらない庶民の日常が描かれるが、そこに物語が溢れている。

結婚願望を強く持ち、将来住むべくモデルルームをめぐる趣味の持ち主でもある真紀は、母親と弟に翻弄されながら、会社では同僚男性と間延びした恋愛中。なんとか結婚をと思っていたのに、東日本大震災のさなか、彼氏はお別の同僚女性と浮気し、妊娠させて、結婚する。捨てられた真紀は、表参道のカフェの好青年と付き合うが、この青年は自分を育ててくれた男性への思慕から逃れられない。真紀は昔の不倫相手と性愛にふけるが、それも重荷にしかならない。

最初から最後まで、真紀、佳乃、未央の日常、ささいな不満、呟き、家族の物語である。唯一、東日本大震災という巨大な場面転換が訪れ、話題が飛躍的に展開するかと期待しても、そうはならない。むしろ、大震災の衝撃は、平凡で普通でつまらない人生の意味を問い直す方向に機能する。大文字の政治や社会ではなく、等身大の庶民の日常を描き続けることで、深沢はいま、ここで、生きる人々の精神世界を浮き彫りにする。

Friday, August 29, 2025

ヘイト・スピーチ研究文献(228)

小山留佳「ヘイトスピーチ規制をめぐる日本法の問題点と国際人権法の必要性」『神奈川大学大学院法学研究論集』34号(2025年)

第一章    ヘイトスピーチ規制と国際人権法の視点の重要性

第二章    レイシズムとヘイトスピーチ

第三章    日本におけるヘイトスピーチの規制

第四章    国際人権法におけるヘイトスピーチ法の規制

第五章    結論と課題

小山は神奈川大学大学院生だが、本論文は東京女子大学大学院に提出した修士論文に加筆修正を施したものだと言う。文献・資料も含めて63頁に及ぶ論文である。

目次から直ちにわかる通り、ヘイトスピーチの議論に際して、日本国憲法だけを論じるのではなく、国際人権法の視点を重視しているのと同時に、議論の前提としてレイシズムの問題をきちんと取り上げている。全面的に賛同できる論文だ。

小山の問題意識は、ヘイトスピーチの議論をする際に対抗言説の有無や伝統的表現の自由の枠組みで対応することは適切と言えるのか。現行法は、ヘイトスピーチの根底にあるレイシズムの内容を想定してきたか。現行法は、国際人権法を受容してきたかという点にある。

小山は、第二章のレイシズム論では、まず「レイシズムと人種差別主義の相違点」を取り上げている。「日本の差別の問題を考える際に、『人種差別』という言葉を使うと、不可視化されてしまう差別が存在すると考える」からである。レイシズムを人種民族に限定せず、「変えられない属性を基にして、ある集団(またはその集団に属する人)を差別すること」と定義し、交差性や複合差別にも視線を送る。

小山は、欧州と日本とで、レイシズムには共通点(植民地主義の下での構造的差別)があるが、日本では「民族」概念による差別とその不可視化があることと、「反レイシズム規範の欠如によるレイシズムが存在すること自体が不可視化されている」ことに相違があると見る。レイシズムとヘイトスピーチの関係についてはアメリカで用いられてきた「ヘイトのピラミッド」を参照して理解する。

第三章では、刑事裁判と民事裁判(京都朝鮮学校襲撃事件)を検討し、ヘイトスピーチ解消法、及び川崎市条例を検討する。

小山は第四章で、国際自由権規約及び人種差別撤廃条約を検討する。「人権条約を確認すると、ヘイトスピーチが虐殺に繋がる危機感を背景にして、レイシズムのピラミッドの第四段階であり『差別助長要素』でもあるヘイトスピーチを抑止するために、差別扇動行為(ヘイトスピーチ)を禁止する法律の制定を国家に義務付けていることが分かる。人権条約が過去の人権蹂躙の反省を出発点としていることを想起すると、人権条約の実施は、マジョリティに自身の『人種的忘却性』を意識させ、『忘却』されている特権や、それを発端とする制度的レイシズムなどを可視化させる『差別抑止要素』の役割を持つと期待できる。」という。

小山の結論。

「以上を踏まえて、日本のヘイトスピーチ規制を考える際に必要なことをまとめると次のようになる。まず、現行法での対応を考える際には、ヘイトスピーチにより侵害されている権利・利益と現行法が想定している保護法益や権利・利益との相違点を確認する必要がある。次に、ヘイトスピーチが侵害する権利や利益を明らかにするためには、ヘイトスピーチの根底にある日本特有のレイシズムを認識することが必要である。そして、現在の日本にはヘイトスピーチそれ自体を処罰の対象とする法律が存在せず、不特定集団に対するヘイトスピーチの規制は現行法上不可能であり、特定集団に対する暴力行為を重罰化した法律が存在しないため、『差別抑止要素』として、国際人権法を具体化したヘイトスピーチ禁止法や、包括的差別禁止法が必要である。その立法や実施の際には、マジョリティが『人種的忘却性』を認識することが重要である。」

小山の議論はレイシズム、差別、ヘイトスピーチ、ヘイトクライムを射程に入れて、国際人権法による対応を追求して、日本の議論状況に反省を迫るものであり、国際社会の常識に合致している。現代人権論が重視する基本的価値に従って反差別の立法と法解釈を展開する課題が浮き彫りになる。

国際人権法におけるヘイトスピーチの議論は2010年代以後、ラバト行動計画、CERD一般的勧告35、国連ヘイトスピーチ戦略など、さらに大きな発展を見ている。他方で、2020年代、EU諸国をはじめ排外主義が再び台頭し、国際人権法の危機も現実化しようとしている。今後その研究も重要となるだろう。

Wednesday, August 27, 2025

戦後80年を問う群馬市民行動委員会(略称:アクション80)

東京造形大名誉教授 前田 朗さんと

「負の歴史、加害の歴史」と排外主義を考えよう

 

・ 日本ではヘイトスピーチだけをとり上げて「表現の自由」の問題として議論されるが、もともとヘイトクライムである。それが差別であり差別の煽動、脅迫、迫害であることは明らか。だからヘイトクライム。問題の本質は、まず憲法13条。個人の尊重、人格権。他人のアイデンティティを否定することが許されるのか。もう一つは14条。法の下の平等である。

・ 平和主義はあの戦争や植民地支配を反省したがゆえにとの前提にたつ。憲法がつくられ13条と14条がある。国際社会の常識ではヘイトスピーチは暴力であり迫害であり人道に対する罪につながるできごと、だから規制しなさいということ。その次に「表現の自由」となる。12条に憲法上の権利や自由には責任が伴う。責任ある「表現の自由」について議論しなければならない。

(集会「もの言えぬ社会をつくるな ー戦争をする国にしないためにー」 から)

 

群馬の森の追悼碑に対する攻撃は、戦時中、大日本帝国が行った「強制連行」を否定する言説が発端でした。ヘイト団体だけでなく政府や群馬県も加担し、裁判所も続きました。歴史学の検証によるものではなく、政治が歴史を否定・改ざんしたものといえます。また国内では、戦時中の被害については広く報道されますが、近隣諸国への加害の事実はあまり報道されません。この課題を追及する前田朗さんに、問題の本質に切り込んでいただきます。

 

□日 時 9月26日(金)18001930

□場 所 群馬県教育会館 3階中会議室

          ・前橋市大手町3-1-10   TEL 027-322-5071  

・教育会館の駐車場は利用できません。近隣のをご利用下さい。

 

□内 容 前田 朗さんの講演と意見交換

□参加費  500円

 

  催  戦後80年を問う群馬市民行動委員会(略称:アクション80)

事務局   前橋市大手町3--10群馬県教育会館内  mail:gunma.action80@gmail.com

Tuesday, August 26, 2025

深沢潮を読む(1)愛のかたちと家族のかたち

深沢潮『ハンサラン 愛する人びと』(新潮社、2013年)

『週刊新潮』の「名物コラム」とされる高山正之「変見自在」が終了した。もともと差別的で傲慢なコラムで、何度か読んだことはあるが、ほとんど読んでいない。今回は「創氏改名2.0」というコラムで、朝鮮植民地時代の差別政策を想起させ、外国人排斥を強化させる悪質なコラムだった。被害を受けた深沢潮が記者会見し、多くの著者が深沢を支援し、週刊新潮に苦情を寄せたため、新潮社が「お詫び」し、コラム終了となった。

深沢潮の作品は少ししか読んだことがないので、今回の「事件」を契機に、まとめて読むことにした。

2012年の新潮社の第11R-18文学賞大賞を受賞した「金江のおばさん」が深沢のデビュー作だ。本書冒頭に収められている。金江のおばさんは、在日朝鮮人女性で東京・池上在住、首都圏の在日朝鮮人の結婚を斡旋することで有名なおばさんで、多くの在日男女の出会いを斡旋してきた。日本社会に1%に満たない人口の在日朝鮮人なので、男女の出会いから結婚に至るきっかけをつくるには、金江のおばさんのような人物が必要だ。

本書には6つの短編が収められている。「四柱八字」「トル・チャンチ」「日本人(イルボンサラム)」「代表選手」「ブルー・ライト・ヨコハマ」。それぞれの主人公は異なるが、いずれも金江のおばさんが(名前だけの場合もあるが)登場する。金江のおばさんつながりの連作短編集だ。

日本人読者にとっては、在日朝鮮人の出会い、恋愛、結婚、離婚や、家族の物語に関心を持って読むことになる。一方では、在日に固有の物語だが、他方では、どこの世界にも共通の普遍的な愛と家族の物語でもある。その固有性と普遍性の連関が独特の語り口で提示される。

固有性を浮き立たせるのは言うまでもなく植民地支配とその帰結、戦後も続く朝鮮人差別という背景がある。深沢は本作では植民地支配そのものを取り上げていないし、戦後日本の差別政策を主題としていないが、常に背景にあることは言うまでもない。読者がどのように読むかは、読者自身の歴史認識に委ねられている。「帰化」をめぐる在日朝鮮人の悩み、煩悶をどう受け止めるかも、読者の側の知識や認識に委ねられている。

朝日新聞826日に、戦争と性暴力をめぐる特集が組まれ、沖縄に連行された朝鮮人女性を題材として『翡翠色の海へうたう』を書いた深沢潮も一文を寄せている。満蒙開拓団の黒川村事件を描いた映画『黒川の女たち』が話題になったので、戦時性暴力問題を取り上げた特集だ。日本人男性が日本人女性をソ連軍に差し出した黒川村事件と、日本軍がアジアの女性を蹂躙した「慰安婦」問題をはじめ、現代における戦時性暴力問題は世界的に問われ続けている。

深沢潮「アリランをうたう」

https://note.com/soundofwaves/n/n65cf1e5c14c1

「慰安婦」の日常描く 深沢さん八重瀬でトーク

https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/1415065

<差別なき社会へ>沖縄の朝鮮人慰安婦の小説執筆

https://www.tokyo-np.co.jp/article/184883

戦時下の性暴力、深沢潮さん「私たちの問題」 女性に向かう支配欲

https://www.asahi.com/articles/AST8N7TG5T8NUPQJ00GM.html?msockid=39656b98262d63d91b7179fe27c76213

大江健三郎を読み直す(1)

https://maeda-akira.blogspot.com/2014/01/blog-post.html

大江健三郎を読み直す(83)「最後の小説」への道、「最後の小説」からの道

https://maeda-akira.blogspot.com/2017/12/blog-post_53.html

目取真俊の世界(1)むきだしの国家暴力に抗して

https://maeda-akira.blogspot.com/2018/01/

目取真俊の世界(12)歴史・記憶・物語

https://maeda-akira.blogspot.com/2018/12/blog-post.html

 

 

Friday, August 22, 2025

9/16 三多摩反弾圧集会 講演「冤罪・弾圧と闘う取調拒否権」

講師:前田朗さん(東京造形大学名誉教授・朝鮮大学校講師・救援連絡センター運営委員)

 

9月16日(火)午後6時半開場

講演7時から他基調や連帯あいさつなど

会場:柴中会公会堂

★JR中央線/南武線/青梅線/五日市線立川駅南口から徒歩5分

★資料代500円

 

トランプ政権の強硬な関税政策や移民排斥、戦争に関しての「ディール」などで世界は混乱の中にあります。一国主義が台頭する中で日本でも移民排斥を公然と主張する差別的な政党が現れています。こんな中で国家の抑圧体制や刑事・民事弾圧の強化の動きには細心の注意を払い、警戒していく必要があります。

日本では今冤罪の多発が1つの社会問題になっていますが、これと闘う術として黙秘権の意義をしっかりとらえ直す必要があります。今回前田朗さんを講師にこの問題で講演会を行うことになりました。どなたでも参加できます。ぜひ一緒にこの問題を考えて見ましょう。

 

主催:三多摩労組争議団連絡会議・三多摩労働者法律センター

連絡先:三多摩労法センター東京都国分寺市南町2-6-7丸山会館2F

TEL 042-325-1371