Monday, September 07, 2020

ヘイト・クライム禁止法(182)アイスランド

アイスランドがCERDに提出した報告書(CERD/C/ISL/21-23. 29 August 2019

CERDは前回、在留外国人が増加している中、オンライン「アイスランドにおけるポーランド人に反対する協会」に登録する若者が増えていることを指摘した。

ウエブサイト上のヘイト・スピーチが増加傾向にある。なかでも排外主義、性差別主義、女性嫌悪、特にフェミニストに対する嫌悪、ムスリムに対する偏見が見られる。アイスランドは欧州評議会の「ノー・ヘイト運動」に参加し、オンラインにおける若者の人権キャンペーンを行っている。

刑法第233条(a)は、国籍、皮膚の色、人種、宗教、性的志向、ジェンダー・アイデンティティに基づいて、公然と嘲笑、中傷、侮辱、脅迫又はその他の方法で、人又は人の集団を攻撃した者は、罰金又は2年以下の刑事施設収容とする。2017年12月、最高裁は、刑法第233条(a)に従って、学校におけるLGBT教育を論じる際に公然と品位を貶める言葉を用いた2人の男性をヘイト・スピーチで有罪とした。

教育省は「アイスランド安全なインターネット協会」と若者と協力するプロジェクトの契約を締結した。プロジェクトの目標は、意識啓発を行い、オンライン・ヘイト・スピーチを許容することを減らし、若者が人権のために行動できるようにすることである。ヘイト・スピーチとは何か、国際法文書はどうなっているかを確認するための資料を出版している。2008年の義務教育法第24条は、平等機械のための共通教育課程を指示している。2011年、予備教育、義務教育、高等教育のための教育課程ガイドにおいて、教育目標として、リテラシー、持続可能性、健康、民主主義、人権、平等、創造性を掲げている。

アイスランドにはマイノリティの権利のために活動するNGOがある。クイア団体、多文化民族ネットワークの女性団体、女性の権利運動の団体が多数ある。ヘイト・スピーチと闘うために社会参加をしている。アイスランドではヘイト文化は深く根付いているわけではなく、過激主義団体の活動は見られない。

2011年のメディア法第27条は、メディアによる犯罪を禁止している。人種、性別、性的志向、宗教信念、国籍、文化、意見、社会状況を理由とする憎悪の直接煽動を禁止している。ヘイト・スピーチの禁止は、独立の規制機関であるメディア委員会が監視する。メディアが違反した場合、メディア委員会の検討を経て警察が捜査を行い、罰金または6月以下の刑事施設収容に服すことになる。

CERDがアイスランドに出した勧告(CERD/C/ISL/CO/21-23. 18September 2019

刑法に人種主義動機による犯罪について刑罰加重事由とすること。一般的勧告第35号を想起して、政治家や公的人物によるヘイト・スピーチを非難すること。特にメディア、インターネット、ソーシャル・ネットワークを監視して、ヘイト・スピーチを行う人物や団体を特定し、捜査し、訴追すること。刑罰を科すのは、重大で、反復した場合とする規定を廃止して、すべてのヘイト・スピーチ事件を効果的に訴追し、処罰すること。ヘイト・スピーチと闘うためにマイノリティ、移民、難民、地方住民の間の理解と寛容を促進すること。

すべての人種主義ヘイト・クライムが報告され、捜査、訴追、適切な場合には処罰されるようにし、被害者に補償を提供すること。人種主義的ヘイト・クライムを記録し、統計を報告し、捜査と処罰の帰結を報告すること。ヘイト・クライムに関する教育を通じて意識啓発を行い、被害者に救済を提供できるようにすること。