武満徹・大江健三郎『オペラをつくる』(岩波新書、1990年)
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リヨンのオペラ劇場からの依頼で、武満がそれまでつくったことのないオペラに挑戦した際に、オペラのための物語をいかに構築するべきか、武満と大江が語りあい、その対話を通じて武満がオペラを具体化していくという構想の下に行われた対談である。出版時に購入したが、飛ばし読みしかしなかったような気がする。
Ⅰ 世界のヴィジョンにねざしつつ
Ⅱ 物語にむかって
Ⅲ 劇的人物像をめぐって
Ⅳ 芸術家が未来に残すもの
取り上げられるのはイェーツ、ヴェルディ、オコナアー、オーデン、シェークスピア、タルコフスキー、ダンテ、ドストエフスキー、フォークナー、ブレイク、ベートーヴェン、ヘミングウェイ、モーツァルト、ワーグナー。オペラ作家を除けば、大江がいつも引き合いに出す作家・芸術家たちで、その意味では読みやすい。
大江がオコナーを引いて、芸術というものは「理性の行使」だと言っているのが、今回、一番印象に残った。「感覚の行使でもなければ、あるいは官能の行使でもなくて、理性の行使だ」と。トマス・アクイナスが言ったのだそうだ。それゆえ、「本当は創造力と理性は同じ」だという。カラヤン指揮のベルリン・フィルが素晴らしいのは「世界の理性の声が聞こえた」からということになる。