Wednesday, October 19, 2016

沖縄における大阪府警機動隊員差別発言:論点メモ

10月19日、沖縄東村高江における工事現場で、大阪府警機動隊員による「シナ人」「土人」などの差別発言がなされたことが発覚し、報道された。沖縄県警および菅官房長官は「不適切な発言」としている。
しかし、単なる「不適切な発言」にとどまるものではない。とり急ぎ論点をメモしておく。
第1に、当該発言は目の前にいた人物に向けて発声されたものであり、侮辱罪に当たる可能性がある(刑法231条「事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、拘留又は科料に処する。」)。
第2に、当該発言は明らかな差別発言である。「シナ人」という言葉については、一部に「Chineseの意味だから差別ではない」と主張する者もいるが、日本社会において中国人に対する差別がなされ、この言葉は差別的文脈で用いられてきた。今回も明らかに差別的文脈で用いられている。
第3に、「シナ人」という言葉を差別と侮蔑の意味で用いたことは、沖縄の人々に対する侮辱だけでなく、中国人に対する侮辱である。個人に対する発言ではないので侮辱罪は成立しないが、中国人全体に対する侮辱として政治問題化しうる。
第4に、当該発言は、日本政府が批准した人種差別撤廃条約1条の「人種差別」の定義に該当する。条約2条は、政府が「人種差別を非難」することを求め、「人種差別に従事しないこと」、「いかなる個人、集団又は団体による人種差別も禁止し、終了させる」を求めている。政府及び自治体はこの義務に従う必要がる。
第5に、条約4条はいわゆるヘイト・スピーチを禁止する条項である。日本政府は4条(a)(b)の適用に留保を付しているが、4条柱書及び(c)には留保を付していない。4条(c)は「国又は地方の公の当局又は機関が人種差別を助長」しないことを求めている。
第6に、本年制定されたいわゆるヘイト・スピーチ解消法は、定義の中に「本邦外出身者」という言葉を用いているので、沖縄の人々が除外される。しかし、「本邦内出身者」である沖縄の人々に向けて「本邦外出身者」として扱う差別表現が用いられたことに留意するべきである。
また同法が沖縄の人々を除外していることは、現実に沖縄の人々に対してヘイト・スピーチが行われていることに即していないので、同法の限界が明らかになったと言える。速やかな法改正が求められるのではないか。