Monday, October 26, 2020

ヘイト・クライム禁止法(186)コロンビア

コロンビアがCERDに提出した報告書(CERD/C/COL/17-19. 14 November 2018

二〇一一年の法律一四八二号の目的きは、人種、民族、宗教、国籍、政治イデオロギー、哲学イデオロギー、性別、性的志向又は障害に基づいて差別した者を刑事処罰することである。障害については二〇一五年改正で挿入された。人種主義と差別の定義は、人種、国籍、性別又は性的志向に基づいて人の権利の完全な行使を予防、妨害、制限することである。人に心身の害悪を引き起こすことを目的とするハラスメントや差別行為について刑罰を科す。公然と、マスメディアにおいて、公務員によるハラスメントや差別には刑罰が加重される。

 検察庁が扱った事案は三六八件であり、人種主義や差別が二に七件、ハラスメントが一四一件である。そのうち五件が裁判に付され、一件が有罪判決となっている。

 二〇一四年の憲法裁判所判決は、障害者が法改正以前に差別の被害者となる危険があったと認定した。

 二〇一五年の憲法裁判所判決は、民族的アイデンティティゆえに懲戒権を行使できなかった事案で、平等権の保護を言い渡した。

 二〇一七年の憲法裁判所判決は、表現の自由権と法律一四八二号によるヘイト・スピーチの禁止について検討した。

 二〇一二年の決定によって、内務大臣の諮問機関として差別・人種主義監督官が置かれている。人種差別と人種主義について啓発する教育計画を策定し、地方自治体に包括的施策を助言し、事件処理方法を確立し、人種差別を防止する公共政策を勧告する。被害者支援サービスも行う。二〇一四~一八年、一〇四件の人種差別申立てを受理した。男性が四九件、女性が三四件、子どもが一一件、集団が八件である。そのうち四二件は検察庁に送付された。

CERDがコロンビアに出した勧告(CERD/C/COL/CO/17-19. 22 January 2020

一般的勧告第一五号及び第三五号に照らして、ヘイト・スピーチ、人種差別の煽動、人種主義表現を予防するため実効的な措置を講じること。排外主義、ヘイト・スピーチ、人種差別の煽動、人種的動機による暴力を捜査し、責任者を訴追し処罰すること。多様性を尊重し、人種差別を撤廃する啓発活動を実施すること。人種憎悪を正当化し助長する思想の流布を犯罪とし、人種差別を煽動する団体を禁止すること。

Sunday, October 25, 2020

ヘイト・クライム禁止法(185)ポーランド

 ポーランド政府がCERDに提出した報告書(CERD/C/POL/22-24. 22 August 2018

今回の報告書は、スポーツにおけるレイシズム、インターネット上のヘイト・スピーチ、ヘイト助長団体の3つを報告している。

スポーツにおけるレイシズムでは、二〇一二~一七年、大半のスポーツ領域では事件が起きていないが、サッカーの試合で起きている。ポーランド・サッカー協会の報告によると、協会は規律規則を作成し、攻撃的横断幕の展示を禁止している。違反事件には最低五〇〇〇PLN(約一一八〇ユーロ)の罰金としている。六年間に四四件の事案が報告された。

検察庁が担当した事案はごく少なく、減少している。しかし、協会はレイシズム事件予防に取り組んでいる。五二のクラブチームのためにレイシズム予防の訓練のできる講師を要請している。攻撃的スローガンの旗や横断幕の監視をしている。サポーターに反差別メッセージ付きのTシャツを提供している。ソーシャルメディアやウエブサイトでも反差別をアピールしている。

検事総長はインターネット上のヘイト・スピーチと闘うための活動を続けている。二〇一二年一〇月二九日、検事総長は私訴事件への検察官関与のためのガイドラインを出した。差別のための誹謗中傷犯罪であって、検察官専権ではなく私訴による刑事事件への検察官関与に言及している。これらの犯罪への検察官関与が正当化されるのは、電話やインターネットによる犯罪の場合、被害者が実行犯の特定が困難だからである。

 二〇一四年一〇月二七日、検事総長はインターネットによるヘイト・クライムについてのガイドラインを出した。これには証拠確保、記録、他の政府機関やNGOとの協力、非刑罰的措置も含まれる。

 二〇一六年一二月一日、警察庁サイバー犯罪と闘う部局が設置された。通常業務として、ソーシャルメディア、ウエブフォーラム、ウエブサイトの関連内容の監視を行う。刑法違反のヘイト・スピーチ犯罪を発見した場合、インターネット・ユーザーの個人情報特定を行う。個人情報は警察の担当部局に送付される。認知局には二四時間運用サービス課が設置されている。

 二〇一七年八月三一日、警察庁サイバー犯罪と闘う部局に、サーバースペースにおけるヘイト・クライムと闘う調整官が置かれた。同年九月二八日、首都警察のサイバー犯罪と闘うユニットも置かれた。

刑法第一一九条や一九〇条など人種憎悪助長犯罪の書き込みのあるウエブサイトを特定した場合、ドメイン所有者の特定がなされる。当該情報は訴追判断や更なる手続きのための決定判断に利用される。訴追に当たっての困難の一つは当該サーバーや書き込みが外国領で行われていることである。当該国家との協力が要請される。

条約第四条(c)に関する人種差別を助長・煽動する政党・組織について、憲法第一三条では、全体主義やナチス、ファシズム、共産主義モデルに基づく政党や組織、人種又は国民憎悪を行う政党や組織は禁止される。政党法は、政党活動に関する合憲性の評価の権限をワルシャワ地裁に与えている。結社法によると、裁判所や検察庁に、一定の重大な法律違反を行う結社の解散権限がある。

 二〇一六年、ヘイト・クライムの訴追が増えている。二〇一二~一五年には一五・四%~一八・六%だったが、一六年には二〇%である。犯罪の訴追実務がより実効的になっている。

 二〇〇九年以来、ヘイト・クライム訴追関係者への研修が行われている。裁判官や検察官の研修は、国立司法・検察研修所が担当している。二〇一二年六月一三日、検察庁は「ヘイト・クライム被害者」という会議を開催し、「犯罪被害者のための検察官」を出版した。

 二〇一四年六月、政府平等処遇庁は「ヘイト・スピーチに反対――グローバルに考え、ローカルに行動する」会議を組織し、平等処遇スタンダード・プロジェクトを進めている。

CERDがポーランドに出した勧告(CERD/C/POL/CO/22-24 . 24September 2019

一般的勧告第一五号と第三五号を想起し、刑法におけるヘイト・スピーチの定義を条約第四条に合致させ、条約第一条及び欧州評議会大臣委員会勧告に従うこと。インターネット上のヘイト・スピーチや暴力煽動としっかり闘うため必要な措置を講じ、政治家など公人による人種主義ヘイト・スピーチを非難すること。国民的マイノリティ、移住者、難民、難民認定申請者に対するヘイト・スピーチ、ヘイト・クライムと闘う公衆キャンペーンを強化すること。ジャーナリストや放送関係者に、ヘイト・スピーチやステレオタイプを避ける責任があるという強いメッセージを送ること。刑法第五三条二項を改正して、人種主義的動機を刑罰加重事由とすること。

 国民運動、国民ラディカル・キャンプ、全ポーランド青年運動、ファランガ、国民社会会議、自律的国民主義者、血と名誉などの団体のような、人種差別を助長・煽動する政党や組織を違法と宣言する法を執行すること。刑法を改正して、これらの団体への参加を犯罪とすること。

 ヘイト・スピーチとヘイト・クライムについて、被害者が国家の司法制度に有している不信を解消すること。事件の報告を確保し、法律扶助、法的救済についての公衆の意識を啓発し、事件を記録、捜査、訴追し、適切な刑罰を科すこと。憎悪動機犯罪について年次評価を実施すること。マイノリティに属する者を警察、司法、検察に採用し、適切な研修を行うこと。ヘイト・スピーチとヘイト・クライムの捜査、訴追、判決についての情報を提供すること。

Saturday, October 24, 2020

東京富士美術館散歩

 

秋晴れの一日、八王子郊外の東京富士美術館に行ってきた。

https://www.fujibi.or.jp/

JR八王子駅からバスで10分ほど、創価大学正門前だ。展示は2つ。

1つは、「This is Japan in Tokyo永遠の日本美術」で、若冲、蕭白、北斎、広重。

若冲の<象図>は笑えて楽しかった。

8代将軍徳川吉宗の時に象が日本にもたらされ、長崎から江戸まで歩いて移動したという。若冲は京都で実際に見たようだ。

普通なら横から描くところ、象を画面いっぱいに真正面から描いている。真ん中に象の顔があり、長い鼻が下にのびる。意表を突く大胆な構図で、象の背景となる部分を全て墨で塗りつぶしている。水墨抽象画だ。

もう1つは、ダ・ヴィンチ没後500年「夢の実現」展だ。

https://maeda-akira.blogspot.com/2020/01/500.html

今年初めに代官山ヒルサイドフォーラムで開催された展示の巡回が始まった。代官山では施設の都合でよく見ることのできなかった目玉展示の<最後の晩餐>復元映像が、完璧だった。<最後の晩餐>空間体験ゾーンもユニークだ。

展示のガイドブックも出版された。

東京造形大学ダ・ヴィンチ・プロジェクト編『よみがえるレオナルド・ダ・ヴィンチ』(東京美術)

https://www.tokyo-bijutsu.co.jp/np/isbn/9784808711962/

<未完や欠損状態の絵画、巨大建築の設計図、機械や彫刻のデッサンなど、万能人ダ・ヴィンチが生前やり残したさまざまな「夢」を、500年後の今、現代のテクノロジーを用い完全な形で再現を試みた画期的プロジェクト。さらに、ダ・ヴィンチにまつわる長年の謎や議論について、そのあらましと興味深い最新知見を紹介。他分野の識者による考察も多くの示唆に富み、コンパクトながら類のないダ・ヴィンチ入門書。>

常設展「西洋絵画 ルネサンスから20世紀まで」では、ウオーホルの「ブラスナー氏の肖像」もおもしろい。

Saturday, October 17, 2020

国際人権から見たヘイト・スピーチ

申惠丰『国際人権入門――現場から考える』(岩波新書)

<第二次大戦後、人権に関するさまざまな国際ルールがめざましい発展を遂げ、日本もそれを守ることとされている。日本社会で現実に起きているさまざまな人権問題も、これらの国際人権基準に照らして考えることで、新たな光を当てられ、解決の方法を見出すことができる場合が少なくない。日本の現場から国際人権法の「活かし方」を考える。>

はしがき

序 章 国際人権基準とそのシステム

第1章 「不法滞在の外国人」には人権はないのか――入管収容施設の外国人

第2章 人種差別・ヘイトスピーチ――差別を「禁止」する法の役割

第3章 女性差別の撤廃と性暴力

第4章 学ぶ権利実現のため措置を取る国の義務――社会権規約の観点から

著書はこれまで、『人権条約上の国家の義務』、『人権条約の現代的展開』という本格的研究、『国際人権法――国際基準のダイナミズムと国内法との協調』という教科書、『友だちを助けるための国際人権法入門』という入門書を送り出してきた。本書は2冊目の入門書である。

序章では、国際的な人権保障の出発点は国連憲章とし、世界人権宣言、国際人権規約、その他の人権条約や、「国連憲章に基づく手続」と「人権条約に基づく手続」などを解説している。

第1章から第4章では、入管、ヘイトスピーチ、女性差別、学ぶ権利の4つを取り上げて、国際人権の観点から日本の現状を考究している。

「第2章 人種差別・ヘイトスピーチ――差別を「禁止」する法の役割」では、「社会生活における人種差別を禁止する法律がない日本」として、憲法には差別の禁止規定があるが、差別禁止法のない日本の現状を確認している。日本は、人種差別撤廃条約を批准したにもかかわらず、既存の法律で対応でき法律の整備は不要として、立法措置をとらなかった。このため、民法の「不法行為」の規定をあてはめて解釈する迂遠な方法が採用されている。

「法律に明文規定がないということは、どのような行為をしたら違法な人種差別になるのかが社会で共有されないということ」である。

条約は、人種差別を扇動するヘイトスピーチ根絶のための国の義務を明示しているが、日本は条約加入の際に留保を表明した。これがヘイト・スピーチの放置につながった。しかし、「留保」は条約第四条(a(b)の留保であり、第四条柱書や(c)にはかかっていないが、実際には柱書や(c)を遵守する姿勢が見られないことを指摘する。

諸外国の立法の例を見ると、スイス、カナダ、フランスなど立法による対策が一般的である。日本では法律による禁止がなされず、不法行為訴訟の形式をとらざるを得ない。「不法行為という民法の一般規定の解釈にとどまることはやはり根本的な限界だ」という。

二〇一六年のヘイト・スピーチ解消法は、条約の定義を踏まえず、ヘイト・スピーチを禁止していない。罰則がない。つまり、「人種差別撤廃条約で求められている対策を履行したものとはいいがたいものだ」。

ネット上のヘイト・スピーチに対する取り組みを見ても、EUをはじめ国際的には進展がみられ、二〇一九年にはニュージーランドのテロ事件を契機に「クライストチャーチ・コール」が採択され、日本も署名した。

 著者は、「日本も、人種差別撤廃条約に合致した形で、公的生活における人種差別禁止に関する法律を制定するとともに、ネット上のものを含むヘイトスピーチについても法律で明確に禁止規定を置き、それに基づいて、EUで行われているように、IT企業の取り組みを求める仕組みを整えていくべきだ」という。

 もっともであり、全面的に賛成である。

Tuesday, September 22, 2020

ヘイト・クライム禁止法(184)モンゴル

モンゴルがCERDに提出した報告書(CERD/C/MNG/23-24. 12 November 2018

2015年の刑法は2017年7月1日に発効した。司法大臣命令A/58に従って、CERD勧告に従って刑法改正を行う作業部会を設置した。2017年5月11日に刑法改正法が制定された。改正刑法は次の内容である。第14章「個人的政治的権利・自由に対する犯罪」に、14.1条「差別」、14.2条「情報を求め受け取る権利のご妨害」、14.3条「表現と報道の自由の権利侵害」、14.4条「良心と宗教の自由の権利妨害」。

14.1条は、その国籍、民族、言語、人種、年齢、ジェンダー、社会的背景・地位、富、職業、職位、宗教、意見、教育、性的志向、健康状態に基づいて諸個人の権利と自由に対して差別し、制限すると、450以上5400以下の単位の罰金、又は240以上720時間以下の社会奉仕、又は1月以上1年以下の旅行禁止で処罰される。

刑法19.9条の「国民統合の妨害」は犯罪である。人々の間に国民、民族、言語、人種又は宗教的敵意及び憎悪を掻き立てるプロパガンダ、及び分離主義、差別、虐待、権利の制限、又は特権の設定を助長し、唱道する活動を組織することは、5年以上12年以下の刑事施設収容である。

人種主義ヘイト・スピーチと闘うため、人種主義表現の犯罪化はもっとも重大な事件に限られ、重大でない事案には刑法以外の手段で対処する。

司法大臣命令A/243に従って2017年9月25日に設置された作業部会は、改正刑法、刑事訴訟法、訴追法、判決執行法等の実効的な実施を確保する任務を有している。

前回審査の結果としてCERDはモンゴルに裁判情報の報告を勧告したが、人種的動機に基づく犯罪事案は報告されていない。国民統合の妨害犯罪も報告事案はない。民族集団間の紛争が若干あるが、民族紛争の至る重要問題は生じていない。ナショナリズムを主張する民間団体が18団体、警察に登録されている。そのうち8団体、ダヤール・モンゴル、ツガーン・カス、タイラン・ツヴル・チョノ、カス・モンゴル、ノグーン・カス、クーク・モンゴル、ボソー・クーク・モンゴル、モンゴル世界緑連名が活動しており、200名余りの支持者がいる。

民間団体がNGO法第6条に従って登録している場合、裁判所は、目的に合致しない活動をしたり、法律違反を繰り返したときに、NGOを解散できる。

刑法第9条は法人の責任を定める。裁判所は一定の場合、権利停止、解散、財産没収を科すことができる。

当局は、話題となっているダヤール・モンゴルを解散させていない。

2017年10月12日の司法大臣命令A/257に従て設置された作業部会は、NGO法改正を任務としている。NGOの登録と監視を見直している。

CERDがモンゴルに出した勧告(CERD/C/MNG/CO/23-24 .17September 2019

条約第4条に従って人種主義ヘイト・スピーチを禁止する規定を現行法に含めるよう改正すること。国民統合を妨害する事に関する刑法規定を、民族的マイノリティや条約によって保護された集団がマイノリティに認められた権利を主張することを妨げるような解釈や適用をしないようにすること。人種差別を助長又は煽動する団体を禁止し、解散させる規定に関してNGO法改正規定を条約第4条に合致させること。人種憎悪や人種的優越性を助長する団体を違法都市、禁止する法律を効果的に適用すること。

Sunday, September 20, 2020

ヘイト・クライム禁止法(183)メキシコ

メキシコがCERDに提出した報告書(CERD/C/MEX/18-21. 25 August 2017

政府の差別防止委員会は、50以上の国際条約で設定された義務を果たし、差別の防止と予防のためのモデル法に基づいて、地方の反差別法を発展させている。

2014年、EUの「ノー・ヘイト・スピーチ運動」に学ぶことを決定し、インターネット上その他のヘイト・スピーチと闘う社会行動を促進するキャンペーンを開始した。13~18歳の若者向けのキャンペーンだが、2015年に24歳まで引き上げた。どの年齢であれ、若者に平等のための闘いに参加し、情報、意見、画像、映像を動的に交換してヘイト・スピーチと闘うものである。フェイスブックでは「私の服装は粗悪ではない。文化の豊かさを反映しているのだ」という投稿が26912人の若者、ツイッターでは106万の若者のアクセスがあった。

司法分野では、刑事手続きで、被告人の人種・民族的出身を刑罰加重事由とする法規定はない。被害者が人種・民族ゆえに被害を受けやすい集団に属している場合、裁判官は刑事訴訟法第410条を適用して、犯罪が人種的に動機づけられていれば刑罰加重事由とすることができる。

2012~16年、人種主義・人種差別事案が8件訴追された。うち2件は憲法の関連規定の下で公判が開かれ、判決が出された。他の6件は、訴えが棄却された。

司法手続きの費用や複雑さを解消するため、差別被害者には公設弁護人事務所により法的助言が与えられる。

先住民族に関する権利保護のために、技術的法的援助を地方議会に提供し、25州が先住民族の権利を承認し、24州が先住民族に関する法律を制定している。

CERDがメキシコに出した勧告(CERD/C/MEX/CO/18-21.19September 2019

条約第4条が列挙する行為を犯罪とする法律がなく、人種動機を刑罰加重事由としていない。2019年1月30日の最高裁決定が命じているように、人種差別行為及び条約第4条が列挙する行為を犯罪とすること。人種動機を刑罰加重事由とすること。

縦横無尽に交わす琉球独立論

前川喜平・松島泰勝編著

『談論風発 琉球独立を考える――歴史・教育・法・アイデンティティ』

(明石書店)

https://www.akashi.co.jp/book/b528725.html

<日本政府は、琉球に米軍基地を押しつけ、民意を無視して辺野古新基地建設を強行している。それは植民地政策ではないのか。かつて「居酒屋独立論」と呼ばれたこともある琉球独立論を、改めて歴史・教育・法・アイデンティティの視点からとらえ直す4つの対談・鼎談。>

Ⅰ 琉球独立論にいたる道――沖縄・日本・教育[前川喜平×松島泰勝]

Ⅱ 歴史・法・植民地責任――ニューカレドニアから琉球を見る[佐藤幸男×前川喜平×松島泰勝]

Ⅲ 近代の学問が生んだ差別――アイヌ・琉球の遺骨問題と国際法[上村英明×前川喜平×松島泰勝]

独立琉球共和国の憲法問題――国籍・公用語をめぐって[遠藤正敬×前川喜平×松島泰勝]

松島はこの10年、琉球独立論を主導してきた。次から次と琉球独立論の著作を出版し、「居酒屋独立論」から、学問としての独立論、そして政治・市民レベルの運動としての独立論を定着させてきた。

松島の行くところ、随所で激論が飛び交い、歴史が蠢動し、記憶が撹拌され、新しい光景が見えてくる。

松島ワールドは、遠い歴史の彼方にも、この地球の裏側にも及び、多くの研究者、市民、ジャーナリストを巻き込み、次時の時代を描き出すプロジェクトを立ち上げる。

琉球独立論は、政治、社会、経済、文化――あらゆる分野で展開されなければならない。松島はあらゆる観点で琉球独立論を論じつくしてきたが、本書では教育、学問、国籍、憲法と言った数々の論点を取り出して、立体的に構築していく。

松島が、元・文部科学事務次官の前川喜平、富山大学名誉教授で平和研究の佐藤幸男、恵泉女学園大学教授で先住民族の権利研究の上村英明、早稲田大学台湾研究所研究員で戸籍と国籍の専門家の遠藤正敬と、縦横無尽に交わす琉球独立論は、琉球のみならず、日本の独立の必要性、不可避性をも明るみに出す。

琉球独立論が装備する論理は、決して単純ではない。特にナショナリズムへの回収の危険性を予め想定して、国民国家の罠にはまることなく、いかにして抵抗の論理を編み出し、未来をデザインしていくのか。松島の闘いは続く。