Monday, January 18, 2021

スガ疫病神首相語録09

「しっかり説明する」

1月18日、通常国会がようやく開かれた。重大な時期に国会を開かず説明責任を放擲してきたが、新型コロナの猛烈な拡大で、これ以上逃げるわけにはいかなくなった。「しっかり説明し、国民の理解をいただきたい」と国会に臨むスガである。

(酸)いも甘いも噛み分ける

しん(臥薪)嘗胆のたたき上げ

こはま(横浜)きっての手練れ者

んし(真摯)な実直政治一筋で

る(怯)まず臆せず官房長官

ばん(出番)を待って総理の座……と思いきや

 

ざいく(小細工)だらけの秘密政治に

くでもないGOTOトラブル

(成)れの果て

そ(嘘)と答弁拒否を積み重ね

つしか悪相にじみ出る

ール無用に情け無用

さ(荒)んだ人心、壊れる社会

 

っかり剥がれた化けの皮

まん(我慢)を強いる強権政治

ろん(世論)はあぶく(泡)と消え去りぬ

しるいるい(死屍累々)たる東京砂漠

さん(悲惨)なスガーリンは

ま(デマ)とフェイクを加速する……あゝ無情

Saturday, January 16, 2021

理解社会学の方法と知性への覚醒

中野敏男『ヴェーバー入門――理解社会学の射程』(ちくま新書)

『マックス・ヴェーバーと現代』『大塚久雄と丸山眞男』『詩歌と戦争』の中野が新書で出したヴェーバー入門である。ヴェーバーの人生や人となりやエピソードではなく、ヴェーバーの学問方法論そのものを理解社会学と位置付けて、その入門を図る。

中野によると、ヴェーバーの生涯を賭けての理解社会学の構想は、当時の出版事情のために、十分くみ取られることがなかった。このためヴェーバーの思想が近代主義の範疇に押し込められ、切り刻まれてきた。正当に理解されなかったというよりも、端的に誤解されてきたと言っても良いくらいのようだ。

私自身、誤解してきた一人、という以前にヴェーバーの著書は学生・院生時代に『プロ倫』『職業としての学問』を読んだだけで、その他の膨大な著作群を読んでいない。大塚久雄や山之内靖を通じてヴェーバーについての断片的な知識を得たにとどまる。折原浩も何冊か読んだが。

中野は『プロ倫』『経済と社会』『世界宗教の経済倫理』において発展させられた理解社会学の基礎概念と基本構造をていねいに解説する。その時代において、いかなる問題意識をもって、何と対決していたのか。そのために何を批判し、何を継承して、概念を構築していったのか。新書には珍しい本格的入門書で、叙述は平易なのに、読み進むのにとても時間がかかるし、「難しい」。

私の能力ではようやく紹介することもできない。重要な個所はいくつもあるが、次の1節を引用するにとどめよう。

「このように知性主義という視点を一つ加えてみると、ヴェーバーの言う『西洋文化における特別な形の「合理主義」』が覇権を握る時代とは、<知性>そのものが矛盾を深める危機の時代だということがこの上なく明瞭なものになってきます。西洋近代ということでもっとも『合理的』と見えたこの時代の社会の基調は、もっとも深い非合理(知性の分裂と反知性主義)によって支えられているということです。知性主義の視点をもってこのことが確認できるなら、そこから知性の分裂を超えるべく『近代的』と名指された時代状況と社会事象への根本的な問い直しが始まります。そして、そのような根本的な問い直しの始まるところにこそ、新しい批判的な知性が主導する新しい生活態度と社会構想の可能性も開かれると希望することができるでしょう。この知性への覚醒、ここに私たちがヴェーバーから学ぶ思想の核心のひとつがある、とわたしは考えます。」

Friday, January 15, 2021

スガ疫病神首相語録08

「仮定の質問には答えられない」

1月8日の「報道ステーション」に出演した際、スガは、年末年始の新型コロナ感染急拡大について「想像はしていませんでした」と述べ、緊急事態宣言の延長について「仮定のことは考えないですね」と応答して、出演者や視聴者に衝撃を与えた。

新型コロナ感染急拡大は、誰もが予想し、警鐘を鳴らしていたのに、スガ一人だけは想像していなかったという。

「仮定の質問には答えられない」という言葉は、スガが安倍政権の官房長官時代から頻繁に用いてきたフレーズだ。

――1ヶ月で必ず抑制するとのことですが、抑止できなかったら緊急事態宣言を延長するのですか。

スガ――仮定の質問には答えられません。

――コロナ禍が続いたら、東京五輪は開催できますか。

スガ――感染対策をしっかり行います。大会開催に向けて取り組んでいます。

――それって仮定の話ですよね。

スガ――いえ、過程の話です。準備中ですから。

――西村康稔経済再生担当大臣は「緊急事態宣言解除の基準は感染者500人だ」と言ってます。クリアできなければ、宣言延長になりますよね。

スガ――仮定の話には答えられません。

――閣内不一致じゃないんですか。

スガ――いえ、家庭の話です。内閣は家庭のようなものですから。

――イギリスだけでなく世界各地で変異種が発見されています。海外からの入国禁止を徹底するべきではないですか。

スガ――仮定の話には答えられません。

――医療崩壊の瀬戸際なのに「仮定の話」とか言ってる場合ですか。

スガ――仮定の質問には答えられません。

――と言いつつ、批判が出たので入国禁止にしましたよね。

スガ――窩底に見据えていた政策を適時に実施しています。

――昨年の所信表明演説では「2050年までに二酸化炭素排出をゼロにする」と目標を掲げましたが、これは仮定の話ですよね。

スガ――いえ、下底の話です。排出の下限です。

あっという間にマンネリ化した「スガ疫病神首相語録」だが、今後も09以下に続く予定。

Tuesday, January 12, 2021

スガ疫病神首相語録07

「粛」

スガーリンの特質を一字で示すと「粛」である。

静粛にの「粛」だが、「粛清」のスガである。言いなりにならない官僚は首にする。公安警察情報を駆使して追い落とす。学術会議会員は任命拒否する。理由は示す必要がない。黙って私の言う通りにしろ――スガの信条にブレはない。裏工作こそ正義であり、秘密警察こそ民主主義である。

辺野古の基地建設は「粛々」と進める。地方自治体の分際で文句を言うな――スガは有言実行の男である。

リアル故事成語(又は、故事つけ成語)

 

点知る痴知る割れ知る人知る――相手には点、断片しか教えず、真実を知らせない。フェイク情報を与える。だが必ずぬかりがあって、正体が割れてしまうということ。

(天知る地知る我知る人知る――悪事や不正は必ず露見するということ)

 

一相成りて億骨枯る――首相が新型コロナ対策を疎かにして見事に感染を拡大し、1億の民を感染の恐怖に長期間さらすこと。

(一将成りて万骨枯る――上に立つ者が功績を独り占めし、下で苦労した者の努力が報われないこと)

 

長者の法人税より貧者の消費税――格差社会批判など意に介することなく、大企業に公的資金をじゃぶじゃぶつぎ込み、庶民から消費税を取り立てることが恐怖支配の前提であり、要諦である。

(長者の万灯より貧者の一灯――富者が見栄をはって寄進するよりも、貧しい者が真心を込めて寄進するほうが尊いということ)

 

菅によりて真を求む――説明不要。

(木によりて魚を求む――見当違いで実現できない望み)

 

井の中の義偉大海を知らず――これも説明不要。

(井の中の蛙大海を知らず――知識や体験が少ないのに、乏しい見分にこだわり、自分の無知を認識できない様)

 

刎頸の義偉――自分のためなら友人や部下の首をどんどん斬っても悔いはないというくらいの疎遠な仲)

(刎頸の交わり――友人のためなら首をはねられても悔いはないというくらいの親密な仲)

 

羹に懲りずなまくらを吹く――何度失敗しても反省せず、愚策を積み重ねること。

(羹に懲りて膾を吹く――一度の失敗に懲りて、必要以上に用心深くなること)

 

Sunday, January 10, 2021

ヘイト・クライム禁止法(194)レバノン

レバノンがCERDに提出した報告書(CERD/C/LBN/23-24.29January 2019

前回報告書に記したように、憲法は公共の秩序の枠内での信仰及び宗教の自由(第9条)、口頭及び文書の意見の自由(第13条)、集会結社の自由を保障している。レバノンは世界人権宣言及び関連する国際条約を支持し、コミットしている。刑法に明記された法的枠組みは、テレビ及びラジオ放送法、その他の法律は、人種的優越性に基づく思想の流布を処罰する。本報告書パラグラフ119及び120に、この点での積極的雰囲気を助長するための国家の措置を記している。

(パラグラフ119)憲法は市民の平等(第7条)、信仰及び宗教の自由を含む。前回報告書で明記した通り、人種差別と闘う法的枠組みが用意されている。

(パラグラフ120)人種差別の定義規定はないが、裁判所は人種差別撤廃条約第1条の定義を採用している。

人種主義ヘイト・スピーチについて、まず憲法前文は国際人権規約や世界人権宣言を尊重するとしている。憲法はすべての形態の憎悪と差別を拒否する。この点で法律はすべての人に適用される。法執行官は、市民、避難民、難民に人種、宗教又は国籍に基づく差別、又はその他の形態の人種差別なしに応接する。

レバノンは1948年以来パレスチナ難民を受け入れ、シリア危機以後はシリア避難民を受け入れている。すべての人を人間的に友愛をもって処遇し、住居、食料、支援というニーズに対応する努力をしている。非難民や難民に人種、皮膚の色、国籍又は人種に基づく差別やヘイト・スピーチを容認しない。

司法当局・安全当局は国際条約に沿って、居住者が強制移送されないように配慮して法律を適用する。検察官及び裁判所は、人種憎悪やヘイト・クライムの申し立てや報告を受け取れば、対処する。

司法大臣は、条約第4条に記載されたその他の行為についての法案を準備している。

刑法第317条:「国民の中の異なるコミュニティや諸要素の間に、信仰上又は人種偏見を教唆し又は教唆しようとし、紛争を誘発する行為若しくは文書又は口頭のコミュニケーションは、1年以上3年未満の拘禁とし、付加刑として、10万以上80万以下のレバノンポンドの罰金及び刑法第65条2項及び4項の権利行使の禁止とする。裁判所は判決の公開を命じることができる。」

刑法第317条が犯罪としているのは人種主義の助長である。このことは明文上は十分に明らかでないが、裁判所は人種主義行為や発言を処罰する際に、条文の全体を解釈している。

新型コロナのためレバノン報告書の審査は延期された。

Saturday, January 09, 2021

スガ疫病神首相語録06

「思います、思っています。」

・改めてコロナ対策の強化を図っていきたい、と思います。

・不要不急の外出などは控えていただきたい、と思います。

・国民の皆様と共に、この危機を乗り越えていきたい、と思います。

岡本純子(コミュニケーション・ストラテジスト)によると、1月4日のスガの緊急事態宣言や約30分の会見の中で、なんと、39回も同じ言葉を繰り返したという。

https://president.jp/articles/-/42244?page=1

岡本は次のように述べる。

<「やりぬきます!」ではなく、「やりぬきたいと思います」では、真剣度が全く違う。前者は覚悟で、後者は「一応、やってみるけど、できなかったら勘弁してね」というニュアンスだ。>

スガ――先手を打って、スピーディに対策を進めていきたい、と思います。

――どこが先手ですか。宣言は遅きに失したのではないか。

スガ――ご指摘は当たらない、と考えられる、と思っています。

――GOTOトラブルの失態を隠そうとしたため、宣言が遅れたのではないか。

スガ――GOTOによって感染が拡大したというエビデンスがあるとは言えない、と言って良い、と思っています。

――飲食店の協力が必要ですが、補償が伴わないと店舗も協力できません。

スガ――2月にはワクチンが認可される可能性があるかもしれない、と思います、と専門家からいたような気がしないでもないので、抑止できるのではないか、と思っています。

――話をすり替えないで下さい。先手のコロナ対策はどこへ行ったのですか。

スガ――何らかの補償ができるのではないか、と考えられなくもないので、検討していきたい、と思っています。

という訳で、BGMは、敏いとうとハッピー&ブルーの「わたし祈ってます」。

https://www.youtube.com/watch?v=DNu3wGia2ZE

ただちに、敏いとうとハッピー&ブルーの「よせばいいのに」が続きます。

https://www.youtube.com/watch?v=yKymLwcNuKk

どうやら、結論が出たようです。

いつまでたっても、ダメなわたしね~~~

ヘイト・クライム禁止法(193)デンマーク

デンマークがCERDに提出した報告書(CERD.C/DNK/22-24. 7 February 2019

ヘイト・クライムと闘うため、実効的な捜査と訴追を確保する措置を講じている。ヘイト・クライムと闘うことは人種主義を予防し闘うための重要手段である。警察庁には、刑法第266条b及び第816項にあるように人種主義や差別を抑止し、捜査する義務がある。

2015年春、ヘイト・クライムの管轄は安全保障隊から警察庁に移管した。警察庁は、ヘイト・クライムを確認し、記録し、捜査するための法執行官教育を警察大学校で行っている。監視計画を実施するため、警察庁は個別事案に即してヘイト・クライムをいかに抑止するかのガイドラインを出した。2018年、警察庁は各警察管区とヘイト・クライム対策につき協議を行った。

2017年、ヘイト・クライムは476件報告された。102人に対して95件の告発がなされた。約半数が被害者の国籍、民族、人種、皮膚の色に基づいた人種主義動機である。

訴追については検察庁がヘイト・クライム事件に関するガイドラインを作成した。刑法第266条b、第816項、及び人種差別禁止法に関するガイドラインである。検察官は人種差別禁止法事件に関する年次報告を作成しており、2013~18年には13件が報告された。4件について訴追がなされ、2件は無罪となり、1件は刑罰が宣告され、1件は法的警告がなされた。審理中の事件が1件ある。

人種主義動機を持った犯罪については刑法第816項が定める。適用に関する正確な統計情報はないが、検察によると2013~17年に複数の判決において、民族的出身、信仰、性的志向に基づく犯罪について刑罰加重がなされている。

CERDの審議が新型コロナのため遅延し、デンマーク報告書の審査は延期された。なお、『ヘイト・スピーチ法研究序説』603頁及び672頁参照。

Monday, January 04, 2021

「税金私物化を許さない市民の会」安倍晋三不起訴処分に抗して検察審査会申立

1月4日、「税金私物化を許さない市民の会」メンバーは、東京地検による安倍晋三不起訴を受けて、東京検察審査会に申し立てをしました。下記に申立書を掲載します。

申立書はすでに、ジャーナリストの浅野健一さんのブログ「浅野健一のメディア批評」に、浅野さん自身の陳述書とともに、すでに掲載されています。

 

 

 

審  査  申  立  書

 

令和3年(2021年) 1月 4日

東 京 検 察 審 査 会 御 中

 

                       申立人ら代理人

弁護士  

 

 申立人らは、後記「第3 被疑者の表示」に記載された被疑者について、下記検察官の公訴を提起しない処分に不服があるので、検察審査会法第30条に基づき、貴会に対し、その処分の当否の審査を申し立てる。

 

第1 審査申立人

   別紙申立人目録記載のとおり。

なお、審査申立人の資格は告発人である。

 

第2 罪 名

1 公職選挙法違反(同法第221条第1項第3号)

2 政治資金規制法違反(同法第12条第1項第1号ヌ及び同第2号並びに同法第25条第1項第2号)

 

第3 被疑者の表示

   本  籍  不 明

   住  所  山口県下関市上田中町2丁目16-11

   氏  名  安 倍 晋 三

   生年月日    昭和29年9月21日生

   職  業  衆議院議員

   性  別  男 性

 

第4 不起訴処分の年月日

   令和2年(2020年)12月24日

   事件番号 令和2年検第18325号

 

第5 不起訴処分をした検察官

   東京地方検察庁 検察官検事 田渕大輔

 

第6 被疑事実の要旨

  令和2年(2020年)1月12日付告発状で申立人らが告発した被疑事実の概要は、次のとおりである。

1 被疑者は、平成29年(2017年)10月22日施行の第48回衆議院議員選挙に際して山口県第4区から立候補し、当選した衆議院議員であるが、安倍晋三後援会に所属する選挙運動者らと共謀の上、同候補者に投票したことの報酬とする目的をもって、本来であれば「各界において功績、功労のあった」者でなければ出席することができないができない「桜を見る会」に、安部晋三後援会に所属する支援者に対して、安部晋三事務所において参加希望者を募ってとりまとめ、内閣府から招待状を発送させ、東京都新宿区内藤町11番地所在の新宿御苑において、令和元年(2019年)4月13日に開催された内閣総理大臣である被告発人が主催する「桜を見る会」に、安部晋三後援会に所属する支援者約850人を参加させ、もって、酒やオードブルや菓子などを飲食させたり、ヒノキの枡を土産品として提供するなどして財産上の利益を供与し、

2 被疑者は、その政治運動団体である安倍晋三後援会の会計責任者であった阿立豊彦と共謀の上、平成30年5月ころ、山口県下関市大和町1丁目8番16号所在の政治運動団体である安倍晋三後援会事務所において、政治資金規正法12条1項により山口県選挙管理委員会に提出すべき安倍晋三後援会の収支報告書につき、真実は、平成29年4月15日に開催された「桜を見る会」の前日である同月14日に、ホテルニューオータニの宴会場「鳳凰の間」において開催された「安倍晋三後援会 桜を見る会前夜祭」において、事前に、ホテルニューオータニに対して、参加者につき1人当たり約5000円の出席見込み数を乗じて得られた金額をその前日までに支払って支出したのに、平成29年分の収支報告書にその旨記載せず、また、同月14日に参加者から1人当たり約5000円を徴収して得られた金額の収入があったにもかかわらず、平成29年分の収支報告書にその旨記載せず、その収支報告書を、平成31年5月24日、山口県選挙管理委員会に提出したものである。

 

第7  不起訴処分を不当とする理由

  不起訴処分の理由

  申立人らに送付された処分通知書には、被疑者についての処分結果が記載されているが、被疑者について不起訴と記載されているだけで、その処分理由についての記載はされておらず、各被疑事実毎の判断やその結論の根拠は全く不明である。

  ただ、不起訴処分の日の報道によると、東京地検特捜部の幹部が「安倍氏が収支報告書の作成に関与し、共謀して不記載をしたと認めるに足りる証拠が得られなかった。」と語ったとして、「嫌疑不十分」により不起訴とされたことが報じられている(資料1・東京新聞)

  「桜を見る会前夜祭」の政治資金規制法違反について

  東京地検特捜部の発表などによると、政治団体「安倍晋三後援会」代表の配川博之氏(公設第1秘書)は、平成28年(2016年)から平成31年(2019年)分の安倍晋三後援会の収支報告書に、会費などとして集めた計約1157万円の収入と、ホテルへの計約1865万円の支出を記載しなかったとされ、支出のうち安倍氏側の補塡分は計約708万円だったとされている。

  そして、東京地検特捜部の事情聴取において、安倍晋三後援会の会計処理の中心だった配川氏は「記載すべきだったが、自分の判断で書かなかった」と違法性を認め、安倍氏は、事情聴取において、不記載の指示や了承を否定したとされている(以上につき、資料2・朝日新聞記事)

  そのため、東京地検特捜部は、配川氏を東京簡易裁判所に略式起訴したが、被疑者である安倍晋三氏と阿立豊彦については不起訴処分としたと説明されている。

  しかしながら、被疑者にとって極めて重要なイベントである「桜を見る会前夜祭」について、被疑者は、参加者から会費として5000円を徴収していることを認識したし、会場であるニューオータニに対して、その開催費用を支払っていることを認識していたはずであるから、指示したか否かはともかく、少なくとも、収入と支出についての不記載について、被疑者が了承していたことは確実であるというべきであり、これを否定する被疑者の供述は到底信用することができない。

  したがって、被疑者について、政治資金規制法違反についての共謀の成立を否定して、被疑者を嫌疑不十分による不起訴処分としたのは重大な事実誤認があり、著しく不当であるから、検察審査会において起訴議決がされるべきである。

  「桜を見る会」についての公職選挙法違反について

(1)  公職選挙法の定め

  公職選挙法は、投票や選挙運動の報酬として財産上の利益などを供与することを禁止しており(同法第221条第1項)、公職の候補者が違反した場合には、その罰則として4年以下の懲役・禁錮または100万円以下の罰金が規定されている(同法第221条第3項第1号)

  買収罪は、選挙犯罪の中では最も悪質なものであり、典型的な選挙犯罪である。買収行為は、不正な利益の授受によって、本来選挙人の自由な意思の表明により行われるべき選挙の結果を左右しようとするものであるから、選挙の自由・公正を甚だしく侵害するものであり、公職選挙法はこれを厳しく罰するとともに、当選無効や立候補禁止などを定めている。

(2)  「桜を見る会」について

ア 「桜を見る会」は、毎年、新宿御苑において、「各界において功績、功労のあった方々を招き日頃の労苦を慰労するため」を目的として、皇族、元皇族、各国大使等、衆議院議長と参議院議長及び両院副議長、最高裁判所長官、国務大臣、副大臣及び大臣政務官、国会議員、認証官、事務次官等及び局長等の一部、都道府県の知事及び議会の議長等の一部、その他各界の代表者等が招待され、催されている会であり、同会の出席者には、酒類や菓子、食事が振る舞われる。招待客の参加費や新宿御苑の入園料は無料であり、費用は税金から拠出されている。

  令和元年(2019年)4月13日に開催された「桜を見る会」は、招待者数約1万5400人、参加者数約1万8200人、予算額は1766万円、実際の支出額は5518万7000円であることが明らかとなっている。

(3)  被疑者の地元有権者の招待による「桜を見る会」への参加

  毎日新聞の報道によると、平成31年(2019年)2月上旬か中旬頃に出された「『桜を見る会』のご案内」には、「ご出席をご希望される方は、2月20日までに別紙申込書にご記入の上、安倍事務所または、担当秘書までご連絡ください」と記されている。「内閣府主催『桜を見る会』参加申し込み」という用紙もあり、「参加される方がご家族、知人、友人の場合は、別途用紙でお申し込みください(コピーしてご利用ください)」、「紹介者欄は必ずご記入ください」などと記されている。

  内閣府が参加者に招待状を発送したのは同年3月10日頃であるが、同年2月下旬には安倍事務所から支援者に対し、「『桜を見る会について』(ご連絡)」と題した文書が送られ、そこには「このたびは、総理主催『桜を見る会』へのご参加をたまわり、ありがとうございます」との記述がある。招待状の発送前にもかかわらず「ご参加をたまわった」ことになっている。「招待状は内閣府より、直接、ご連絡いただいた住所に送付されます」との記述もある。

  この時に一緒に支援者に送られた文書の中に「安倍事務所ツアー案(別紙)」とのタイトルの文書もあり、これによると、同年4月13日の「桜を見る会」への参加だけでなく、前日の「前夜祭」や観光地巡りまでがセットになったツアーだったことが判明する。

  また、「桜を見る会アンケート」という文書も同時に送られており、そこでは、観光ツアーについて3コースから一つか不参加を選ぶほか、▽夕食会(前夜祭)参加・不参加▽桜を見る会会場までの貸し切りバス利用の有無▽飛行機やホテルの手配を安倍事務所に頼むか、などを選び、事務所に3月8日までに申し込むよう求めている。飛行機代や宿泊費、移動バスなどを含むおおよその値段は6万~7万9000円であり、後日旅行会社から請求書が発行されるとも記されている。内閣府が参加者に招待状を発送したのは3月10日頃であるから、招待状が発送される前に、被告発人の支援者たちはツアーの段取りまで済ませていたことになる(以上、資料3・毎日新聞記事)

  田村智子参議院が、参議院予算委員会で、令和元年(2019年)11月8日の質疑において、令和元年(2019年)の「桜を見る会」の前日、安倍晋三後援会による「前夜祭」が開かれ、そこには約850人が出席し、被告発人夫妻も姿を見せ、前夜祭の参加者は、翌日、貸し切りバスで「桜を見る会」会場の新宿御苑に移動し、新聞に掲載された首相動静を根拠に、会が始まる前に首相が会場で地元後援会関係者らと記念撮影していることを指摘し「まさに後援会活動そのもの」と追及したことが報道されている。

  田村参議院議員は、「桜を見る会は参加費無料。酒やオードブル、菓子などがふるまわれる。政治家が自分のお金でやったら明らかに公職選挙法違反なのに、総理は税金を使った公的行事でそれをやっているわけですよ。」と指摘し、日本大学の岩井奉信教授(政治学)の「もし首相や与党議員らが後援会などの支持者を招待しているのが事実なら、利益誘導的な行為で『税金を使った選挙対策だ』と批判されても仕方ないでしょうね」とのコメントが掲載されている(資料4・毎日新聞記事)

(4)  被疑者の行為が公職選挙法違反に当たること

  被疑者は、自らに与えられた推薦枠を利用して、自分の選挙区の後援会関係者約850人を、無料で酒やオードブルや菓子が振る舞われ、ヒノキの枡の土産品が提供された「桜を見る会」に参加させたことにより、投票をしたことに対する報酬とする目的で、不正な財産上の利益を供与したものであるから、事後買収罪として、公職選挙法221条1項3号に違反する。

  なお、この規定の趣旨からすれば、被告発人自らが財産上の利益を供与した場合に限らず、税金によって支出されて運営され、参加者には無料で酒や食事が振る舞われる「桜を見る会」に、通常であれば参加できない選挙人を参加させることによっても、被告発人により財産上の利益を供与したことになると解すべきである。

(5)  東京地検特捜部による捜査がなされたとは認められないこと

  報道によると、「告発には選挙区内での寄付を禁じた公職選挙法違反容疑も含まれていたが、参加者らが会費を上回る利益を受けたという認識を否定したため、特捜部は配川氏も安倍氏も不起訴(嫌疑不十分)とした。」と報じられているが(資料2・朝日新聞記事)、これは、「桜を見る会前夜祭」のことを指していると考えられ(「桜を見る会」は参加費が無料である。)、「桜を見る会」についての公職選挙法違反については何の発表等もされていない。

  これからすると、「桜を見る会」についての公職選挙法違反容疑での捜査は全くなされていないと考えられる。

  しかしながら、当時、総理大臣であった被疑者による税金の私物化とされる公職選挙法違反による買収罪について捜査がされていないことは問題であり、検察審査会としては、さらに東京地検特捜部に対して、この点に関する捜査を尽くさせるために、不起訴不当の議決をすべきであり、その再捜査の結果、不起訴とされた場合には、検察審査会において起訴議決がされるべきである。

  結 語

  以上から、東京地方検察庁検察官検事田渕大輔による本件の不起訴処分には、「桜を見る会前夜祭」についての政治資金規制法違反については事実誤認があるとともに、「桜を見る会」の公職選挙法違反については捜査が全くなされていないと考えられるから、検察審査会による適切かつ相当な判断を求める次第である。

 

第8 添付資料

  東京新聞記事(令和2年12月24日)

  朝日新聞記事(令和2年12月24日)

3 毎日新聞記事(令和元年11月9日)

  毎日新聞記事(令和元年12月19日)

5 申立人浅野健一の陳述書

 

第9 附属書類

1 処分通知書(写し)       24通

2 疎明資料写し      各1通

  委 任 状               24通

以上

Saturday, January 02, 2021

日韓の歴史否定犯罪にどう立ち向かうか

康誠賢著(鄭栄桓監修・古橋綾訳)

『歴史否定とポスト真実の時代――日韓「合作」の「反日種族主義」現象』(大月書店)

http://www.otsukishoten.co.jp/book/b547850.html

<日韓の右派ネットワークが作り出した「反日種族主義」現象のからくりを暴きだし、彼らの主張と論理の虚構をはがしとる。>

著者の康誠賢は社会学者で聖公会大学校東アジア研究所助教授。監修の鄭栄桓は歴史学者で明治学院大学教授、翻訳の古橋綾は歴史社会学者で東京外国語大学大学院非常勤講師。また、補論執筆の趙慶喜は社会学者で聖公会大学校東アジア研究所助教授。

韓国でも日本でもベストセラーとなった『反日種族主義』の批判的検討である。『反日種族主義』の大半は日本軍「慰安婦」問題に費やされているが、その議論の中身はこれまで繰り返されてきた歴史改竄と欺瞞の繰り返しでしかない。強制連行概念のご都合主義的な改変や、「売春婦」をめぐる議論、被害者証言の歪曲と改竄は、90年代の日本で提出された議論の焼き直しであり、その後もオンラインでさまざまにアレンジされているものの基本は同じである。すでに論破された誤謬が、なぜ、いま、韓国でベストセラーになるのか。その歴史的理由を本書は明らかにする。

日本のネトウヨと同じレベルの議論だが、韓国史の文脈においてなぜこのような現象が生じるのか。歴史社会学的な検討が必要であり、本書はそこに向けられる。つまり、「慰安婦」問題に関する誤謬を指摘するにとどまらず、誰が、何を、なぜ、どの位置から発言しているのかを分析する。

1部の「1 2019年、「反日種族主義」現象」では、『反日種族主義』の波及力、「反日種族主義」現象の新しい階層、日韓右派歴史修正主義の連帯とネットワーク、「反日種族主義」現象の行く末がさらに問題といった論述に見られるように、「反日種族主義」がいかなる文脈で登場し、どのような戦線を構築してきたかを丁寧に見ていく。

「2 「教科書右派」の誕生、2005年の韓国と1997年の日本」では、日本における歴史教科書問題の大きな転換点が1995年であったとすると、同様の転換が韓国では2005年に見られたという。日韓「教科書右派」の誕生、ニューライトの「自虐史観」批判と日本の右派、韓国ニューライトと教科書フォーラムを追跡することによって、1997年と2005年がなぜつながるかが見えてくる。

<1995年 日本「新しい歴史教科書をつくる会」から、

2005年 韓国「教科書フォーラム」、

2019年 「反日種族主義」現象へ。

日韓の右派ネットワークが作り上げた舞台背景、

彼らの『実証主義』の虚構が浮かび上がる。>

「実証主義」に括弧がつけられているところがポイントだ。1990年代から同じ議論の繰り返しでもあるが、歴史否定主義が「実証主義」を名乗ると同時に、背後からは歴史偽造主義が既存の歴史学を「素朴な実証主義」と論難する。実証主義と無縁のごまかしが実証主義を僭称するかと思えば、実証主義を乗り越えるなどと虚勢を張る。言葉のマジックが事態を悪化させてきた。歴史と記憶と証言をめぐる議論が虚妄の議論に囲い込まれてきた。

1部から第3部まで、「反日種族主義」現象が、韓国史において、南北朝鮮史において、そして東アジア史において、いかなる役割を果たしているのかを一つ一つ明らかにしている。特に第3部では、著者自身が鄭鎮星ソウル大学共助調査研究チームに加わって調査してきた資料を基に、最新の議論を展開している。「慰安婦」問題をめぐる議論は日本の読者にとっても既知の事柄が大半だが、異なる文脈、異なる主体がこの種の議論を再生産しているメカニズムが分かるので有益である。

政治的に日韓の右派ネットワークが形成され、議論の状況が変わってきたこともよくわかる。古典的な親日派にとどまらず、植民地近代化論や、朴裕河『帝国の慰安婦』など、多様な潮流が時に合流し、時に本流と支流に分かれながらも、幅広い戦線を構築し、日本側にもそれぞれのパートナーが形成されてきた。その全体像が徐々に見えてくる。

日本型レイシズム・フェミニズムが東アジアにおいてどこに位置しているのかも見えてくる。被害者の声を切り刻み、簒奪し、封じ込める「フェミニズム」とは何なのかも。

被害者を侮辱しながら「和解」を強制する議論が、2015年には政府レベルで日韓「合意」という茶番にたどり着いた。政府とマスメディアと御用学者が結託して、究極の歴史偽造と他者の侮辱が確固として揺るがない状況がつくられてしまった。

「エピローグ ポスト真実の時代、否定とヘイトにどう応じるか」では、歴史否定と偽造の歴史意識に対抗するために、ポスト真実の躍動を許さないために何ができるのかが問われる。

康誠賢は2019年12月13日に淑明女子大学で開催された日韓共同シンポジウム「ヘイトスピーチと歴史否定――犯罪なのか歴史解釈なのか」を紹介する。

このシンポジウムには私も参加して、日本におけるヘイト・スピーチについて報告したが、洪誠秀が韓国における歴史否定罪法案の経緯と、その理論問題を報告した。歴史否定罪については、私も欧州20数か国の立法と判例を紹介してきたが、韓国の状況については知識がなかったので、とても有益だった。帰国後、シンポの様子を『部落解放』等に紹介しておいた。この問題についての東アジアにおける第一人者が洪誠秀であり、それに続くのが私であると言って良いだろう。

康誠賢は、洪誠秀の報告を紹介しつつ、「歴史否定論者たちが、学問・思想・表現の自由を打ち出し、人道に対する罪など非常に重大な人権侵害に対する真実を否認して歪曲することは、真実・被害者・人間の尊厳・差別の論拠に基づき処罰されなければならない。そのような意味で、厳格に制限された歴史否定罪の立法は慎重な方式で考慮されなければならないだろう。」と結論づける。

もちろん、康誠賢は単に処罰立法制定を唱えるだけではない。本文最後の一節も引用しておこう。

「一方で、歴史否定罪とヘイトスピーチに対する処罰立法が求められているが、法的・制度的規制に頼るばかりではいけないだろう。私はこれまで、李栄薫『たち』が書いた本の裏にある文脈と背景を分析し、この本の主張、方法、論理に対し、批判の幅と深みを持たせながら、本が歪曲して奪い取った資料と証言を詳細に、そして総合的にもう一度見て、聞いて、読んだ。そのようにして復元されたさまざまな話と声を聞かせようとした。それを聞いた『私たち』が増え、共感の拡散と連帯が行われることこそが、反撃のためのより大きな土台となると信じている。」

的確な主張である。差別とヘイトに対抗するには、総合的包括的な対策が必要である。処罰はその基軸を成すが、すべてではない。人種差別撤廃条約は、差別法の廃止、差別の抑止、ヘイトの処罰、ヘイト団体の解散、基本的人権と自由の保障、被害者救済、教育・情報・文化のすべてが重要であるとしている。ヘイトの処罰はその最重点項目である。

日本では、処罰と教育を対立させて「処罰ではなく教育こそ重要だ」などという異常な主張が堂々と語られる。処罰と教育は対立しない。処罰に値する差別を止めるように教育するのが国際常識である。処罰も教育も啓蒙も被害者補償も必須である。

康誠賢は、歴史否定、ヘイト、フェイクとの闘いにおいて、処罰も含んだ総合的な反差別政策の重要性を意識している。正当である。

目次

プロローグ 脱真実と歴史否定、『反日種族主義』

第1部 「反日種族主義」とは何か

1 2019年、「反日種族主義」現象

2 「教科書右派」の誕生、2005年の韓国と1997年の日本 

3 2013~2015年、反日民族主義を攻撃せよ

4 『反日種族主義』の方法と論理

第2部 『反日種族主義』の主張を批判する

1 日本軍「慰安婦」は「性奴隷」ではなく稼ぎの良い「売春婦」だった? 

2 誘拐や求人詐欺はあったが、奴隷狩りのような強制連行はなかった? 

3 民間の公娼制が軍事的に動員され編成されたものだから合法? 

4 「慰安婦」個人の営業で、自由廃業の権利と自由があった? 

5 需要が確保された高収入の市場で、少なくない金額を貯蓄し送金した? 

6 「慰安婦」と女子挺身隊を混同している? 

第3部 資料と証言、歪曲したり奪い取ったりせず文脈を見る

1 連合軍捕虜尋問資料をどのように読むか

2 日本軍「慰安婦」被害者の話をどのように聴くのか 

3 惜別のアリランを歌う朝鮮人「慰安婦」――ビルマ・ミッチナーの朝鮮人「慰安婦」の話 

4 戦利品として残された臨月の「慰安婦」――中国・雲南省松山と騰衝の朝鮮人「慰安婦」の話 

5 日本軍「慰安婦」、米軍・国連軍「慰安婦」、韓国軍「慰安婦」――李栄薫の「我々の中の慰安婦」論に答える 

エピローグ ポスト真実の時代、否定とヘイトにどう応じるか 

補論 否定の時代にいかに歴史を聴くか 趙慶喜 

解説 鄭栄桓

Friday, January 01, 2021

ヘイト・クライム禁止法(192)ウズベキスタン

ウズベキスタンがCERDに提出した報告書(CERD/C/UZB/10-12. 12November 2018

一つの人種や国民的民族的集団の優越性の思想や理論に基づくプロパガンダはすべて禁止している。憲法第57条に従って、戦争又は、社会的、民族的、人種的、宗教的憎悪を助長する政党や結社の結成や活動は禁止している。1991年の良心の自由と宗教組織法第4条により、市民はその宗教に拘わらず法の下に平等である。宗教に基づく特権付与、憎悪煽動、宗教的中傷には刑罰が科せられる。

政府は市民の間の相互寛容と尊重を促進している。2018年の内閣決定は宗教組織の登録、再登録、解散の手続き規程を明示しており、戦争又は、社会的、民族的、人種的、宗教的憎悪を助長する組織の申請は拒否される。1996年の政党法第3条は、暴力的に憲法秩序を転覆し、ウズベキスタンの主権、統合、安全保障を妨げ、市民の憲法上の権利と自由を侵害し、戦争又は、社会的、民族的、人種的、宗教的憎悪を助長する政党の形成と活動は禁止される。1997年のメディア法は、メディアを利用した戦争、暴力、テロリズム、分離主義、原理主義、憎悪煽動の流布を禁止している。

刑法第216条は違法な任意団体又は宗教組織の結成は犯罪としている。違法な団体の違法な結成、その活動への参加は最低賃金の50~100倍の罰金、2年以上5年以下の刑事施設収容としている。

2002年の情報自由法第14条は、国民のアイデンティティを破壊し、歴史的伝統を阻害し、社会政治状況を動揺させるデジタル拡張主義に反対する制度を創設している。戦争、暴力、残虐行為、テロリスト、宗教過激主義の宣伝や、社会的、民族的、人種的、宗教的憎悪の煽動を目的とする情報の流布に反対する努力をしている。

2000年の反テロリズム法はテロリスト行為をテロリストの性格を有する犯罪実行であって、国民、民族、宗教その他の集団メンバーの生命に対する攻撃を含むとしている。テロリズムの予防のために、テロリズムの助長や、団体形成や活動を禁止している。2003年の情報技術法は、ウエブサイト所有者にインターネットを利用した戦争、暴力、テロリズム、宗教過激主義、憎悪煽動を予防している。2018年の国家安全サービス法は国民、民族又は宗教憎悪の助長、国民的利益や亜国家安全保障に対する脅威を抑止・予防している。

2014年の犯罪予防法は、禁止された組織や宗教過激主義の志向をもつ集団の活動への関与を特定する仕組みを持ち、登録していない宗教組織の活動を抑止している。

最高裁判所が、団体を過激主義であり、その活動が禁止されると宣言した場合、団体は解散となり、ウズベキスタンにある施設は没収され、国庫に属する。団体認証手続きの取り消し、団体代表が外国人の場合はウズベキスタン在留の禁止、財政活動の禁止、メディア等での出版等の禁止、公開集会の禁止が含まれる。

行政責任法第1843条により、国民、人種、民族、宗教的憎悪を助長する文書の作成、所持、流布は、一般市民の場合は最低賃金の50~100倍の罰金、公務員の場合100~150倍の罰金、15日の行政拘禁、関連文書の没収である。

刑法第1301条によると、暴力や残虐行為を助長の流布、公開、展示の意図を持った作成や輸入は、最低賃金の200~400倍の罰金、又は1年以上3年以下の刑事施設収容である。刑法第2442条によると、過激主義、分離主義、原理主義その他の禁止団体の形成、指揮、参加は5年以上15年以下の刑事施設収容である。

CERDがウズベキスタンに出した勧告(CERD/C/UZB/CO/10-12. 27January2020

政党法やメディア法が人種憎悪の煽動を禁止しているが、条約第4条の規定に完全に合致していない。重大な犯罪については人種主義動機が刑罰加重事由となっているが、その他の犯罪については刑罰加重事由となっていない。条約第4条のすべての規定に完全に合致させ、国際人権基準、特に表現の自由と平穏な集会の自由に配慮すること。すべての犯罪について人種主義動機を刑罰加重事由とすること。

ウズベキスタン報告書は法律の条文の紹介だけで、捜査や判決の実態を示す情報がない。CERDもなぜかそこに言及していない。

世界を手探りする意外な対談

池上彰・的場昭弘『いまこそ「社会主義」』(朝日新書)

https://publications.asahi.com/ecs/detail/?item_id=22423

<池上彰がマルクス経済学の専門家と対談。資本主義や社会主義の歴史を振り返り、世界経済の現在・過去・未来をわかりやすく解説。混迷の時代を生き抜くために我々は何をすべきか? アメリカ大統領選挙後の動向も見据えつつ、未来への指針を提示。>

意外な組み合わせの対談だ。間を取っての折衷説を披歴するマンネリ・ニュース解説者の池上が、マルクス学の第一人者の的場を対談相手に選んだのは、不思議にも思うが、むしろ池上のアンテナの感度が良好なためなのだろう。意外な組み合わせと思うのは、偏見のためかもしれない。俗流ニュース解説は、多くの視聴者が聞きたがる意見を伝えるが、それがただちにポピュリズムになるわけではない。時代の転換点を池上なりに突いているのだろう。

1章 資本主義の限界――格差拡大という難題

2章 社会主義の挫折――なぜ格差を解消できなかったのか

3章 国家主義の台頭――自国ファーストが招く危機

4章 そして、未来へ――われわれは何を選ぶのか

「社会主義」と括弧がついているように、本書では社会主義が多様な意味で用いられている。19世紀の思想としての社会主義、マルクス・レーニン主義、ソ連東欧社会主義、自主管理社会主義、そして中国、キューバ等々。

的場はマルクス学の第一人者であり、プルードン研究者であり、ユートピア研究者であるから、多様な社会主義の全体をカバーしつつ、現代世界を分析する視角として活用する。資本主義を乗り越える思想としての社会主義の歴史的意義を踏まえつつ、破綻した現実の社会主義の問題点を検証し、現代世界を把握し、乗り越えるための視座をいかに獲得するかが課題である。

池上も、新型コロナ禍の現実を見据えながら、資本主義、ネオリベ、グローバリゼーションの限界を意識しながら、参照軸としての社会主義に関心を寄せる。

上からの社会主義と下からの社会主義、西欧社会主義と非西欧社会主義、官僚制、開発独裁、帝国と国民国家・・・

池上が宇沢弘文の「社会的共通資本」を引き合いに出し、評価しているのは意外だった。そこから本書の着地点が明確になることも。

池上は、新型コロナ禍のもとでの医療崩壊に関連して、ネオリベによる保健所や医療施設の廃止、解体が進められたこの問題性を繰り返し指摘している。

この点は斎藤貴男・前田朗『新にっぽん診断』でも重要視したことだ。新型コロナによって医療崩壊が生じたというのは、政府やマスコミによるフェイクである。実際には安倍政権下のネオリベ政策推進による保健所や医療施設の統廃合によって保健医療システムが崩壊したところに、新型コロナが到来した。多くの論者は因果関係を逆転させたが、池上は的確に指摘している。

ソ連型社会主義や国家主義的社会主義とは異なる未来を展望する的場は、気候変動問題や人種民族対立などの克服のため公共的な課題を解決するため、「NGOのような活動的組織が資本主義社会の企業の資本をゆっくりと取り込み、地域集団が所有する公共的な資本へと変えていく(社会化していく)のではないか」と言う。

新型コロナのために余儀なくされた「価値観の変容」の内実が問われることになる。

https://maeda-akira.blogspot.com/2020/06/blog-post_19.html

https://maeda-akira.blogspot.com/2017/03/blog-post_20.html

https://maeda-akira.blogspot.com/2016/08/blog-post_97.html