Friday, May 31, 2024

菅義偉・元内閣官房長官・横領罪容疑の告発状

告発状

2024年5月31日

  

東 京 地 方 検 察 庁

 検事正          殿

  

     被 疑 者     菅    義   偉

       告 発 人      別紙目録記載のとおり

 

 

被疑者の後記所為は、業務上横領罪に該当すると考えられるので、捜査の上、厳正なる処分をなされたく、本状を以て告発する。

 

 

被疑事実

 

   被疑者は、2012年12月26日から2020年9月16日までの間、日本国政府の内閣官房長官の地位にあった者であり、官房長官の業務として、毎月1億円以上、年間約12億円以上の「内閣官房報償費」(いわゆる「官房機密費)を、政府から寄託されてこれを受託保管し、政府の支出する「政策推進費」「調査情報対策費」「活動関係費」等の公金として、随時にこれの支払いを決済して、政府の行う政策の推進のため等に、支出について決済し、適宜に使用する権限を有していたところ、2019年7月21日に施行された第25回参議院議員通常選挙に広島県選挙区に於いて、自由民主党候補者として立候補した河合案里の選挙運動事務所に、選挙公示直前である同年6月ないし7月中に金1億5000万円が振込まれた際、そのうちの500万円について、上記内閣官房報償費からこれを支弁し、本来の目的の外に、恣いままに受託金を費消したものである。

 

             罪 名 : 業務上横領罪

             罰 条  : 刑法253条

 

告発に至る経過等

 

  「内閣官房報償金」いわゆる「官房機密費」(以下、この通称に従う)は、その使途・金額について、これが全く秘密にされており、勿論領収証もなく、費目等について国会への報告義務もないものとされてきた。

  こうした全くのブラックボックス制度によって、従前から、「官房機密費は違法な目的や、公金支出に相応しくない私的な目的の下に使用されている」との疑惑が投げかけられてきていた。(近時の例では、「オリンピック東京大会招致開催のために、IOC理事に対する贈賄という違法目的に使用されたことが明らかになった。)

2 今般、2024年5月10日付「中国新聞」によって、「官房機密費から、国政選挙の陣中見舞として、候補者に現金が振舞われた」との、元官房長官自身の口からなされた告白が報道された。

  まさに、従前から深刻な疑惑の対象とされ、批判され続けてきた違法な支出が、関係当事者自身から直接に明らかにされるという重大な事態に至ったのである。

 

3 言うまでもなく、官房機密費は、政府が保管し支出する公金である。これを、一政党の選挙運動のために支出することは、もとより機密費の趣旨目的に完全に違背していることが、明白である。

  したがってこれを保管し、支出する権限を有している官房長官が、そのような決済・費消をなした場合には、<業務上横領の罪>に問議されるべきことは当然のことである。

 

4 <本件横領事件>

 

  2019年7月の参議院議員選挙に際して、広島県選挙区から自民党候補者として立候補した河合案里(末尾註)に対しては、金1億5000万円もの巨額の資金が振込まれ、これらを使用した選挙運動の結果、河合案里は一旦当選した。

  しかし直後に、彼らが公職選挙法違反の支出や、露骨な現金による買収行為などを行っていたことが明るみに出た。このために強い非難・批判が沸き起こり、河合案里は夫克行と共に御庁に逮捕され、更に起訴されて、両者共に有罪判決が下され、議員の地位が取消され、更には公民権をも奪われるという、民主主義を大きく穢す甚だしい不祥事が行われた。

 

  そしてこの件の捜査に於て、河合案里・河合克行の選挙事務所・議員宿舎他の関係箇所に対する強制捜索が行われたが、その際

    「総理2800 すがっち500」

 などと記載されたメモが押収された事実が存する(御庁既知・一般公知の事実)。

  これは明らかに、「当時総理であった安倍首相から2800万円・菅官房長官から500万円が振込まれた」ことを意味し、示唆しているものである。

    そこで河合元議員夫婦らは、これら資金を使用して大規模な買収事件を起こして、実刑判決すら受けるに至ったのである。

 

  いわゆる官房機密費については、毎月約1億円余という巨額の政府支出に対する適正な監視、コントロールが全く不可能であって、不明朗・違法な支出が疑われてきた。それゆえ、行政権行使が私物化されており、<財政民主主義>という憲法上の大原則が潜脱され、蔑しろにされているものとして、かねてから強く批判され、その廃止が主張され続けてきているところである。

  (なお、本告発については、一応、官房機密費制度が正式の制度として存在している以上、この問題はこれ以上は立入らず、これを前提とすることとする。)

 

  ところで、官房機密費の法的性格を考えるならば、これは、一定の制度的目的の下に、本人である政府から、内閣官房長官に寄託された金額であるとなすことが出来る。官房長官は、その目的遂行についての、行政機関としての適切な政策判断から、しかるべき使途についてこれを決済し、運用する職務上の責務を負っているのである。

 しかして、一定の使途を決めて寄託された金員について、その決められた使途に関係なく、目的外に当該委託金を費消した場合には、横領罪が成立すると解釈され運用されてきていることは、判例・学説上確立されているところである。

 

  では、政府から内閣官房長官に寄託された、官房機密費の使用目的は何か。

     それは「政策推進費」「調査情報対策費」「活動関係費」であるとされている。

 しかして、「国政選挙に於ける自民党候補者の選挙運動費用」への支弁が、これら①②③のいずれにも該当しないことは、一見して明白である。

 それは本来、候補者個人・支援者・自民党等によって(一定のルールのもとに)支弁されるべきものである。日本国政府がその行政活動のために支出する費用は全て公金である。1政党の政治活動のために使用されては決してならないことは改めて言うまでもない。

    しかるに被疑者は、官房機密費費消の運用実務が全くのブラックボックスであることを奇貨として、かかる目的外の費消を行ったのである。

  公金の寄託の趣旨目的に違背する、かかる官房機密費の費消が、業務上横領罪に該当することは明白である。

 

  なお、河合案里に対する1億5000万円は、形式的には直接には自民党本部から振込まれたこととされている。しかしこれはあくまで外形的形であると見るべきである。なぜなら

 

   ① 安倍晋三については、「総裁」ではなく「総理」とされており、内閣総理大臣としての拠出であった。

   ② また、被疑者は当時官房長官であった。

     更に、金500万円という金額は、その権能に於いて、上記のとおり簡単に動かし得る金額であった。しかして、「すがっち」が個人として拠出する

理由がない。

   ③ 中国新聞記載のインタビュー記事でも、自民党の元官房長官は「国政選挙の運動費用として使用した」「(菅氏の)500万円もやろうと思えばできる」旨を語っている。

       以上からすると、本件被疑者が河合案里陣営に拠出した金500万円については、官房機密費から拠出したと見ることが出来る。

   ⑤ なお、この際、「(安倍)総理」からの2800万円が共に拠出されているが、IOC理事買収事案では、安倍首相が馳浩金沢県知事に対して「官房機密費から出すから、どんどん使っていい。」旨を語ったという事実が存する。

 このように、安倍総理大臣が、自身の使用したいと考える機密費について官房長官に対する指揮監督権限を行使して、随意に機密費を使用させていたことが窺われる。したがって、本件の2800万円についても安倍首相が自身のポケットマネーから拠出したなどということはありえず、首相が被疑者に指示し、被疑者がその意井を受けて機密費から支出した事が確実である。

          但し、本件告発については「すがっち」の金500万円を対象とする。

 

5 結 語

 

   以上からして、河合案里候補に対する選挙運動資金のうち金500万円は、内閣官房長官であった被疑者によって、その職務上の権限を濫用し、官房機密費から違法に拠出され、業務上横領されたものであるから、しかるべき処罰を求めて本件告発に及ぶ。

   厳正な捜査のうえ、厳しい処分をなされたい。 

 

                                                                      以 上

                                                                    

添付資料(略)


(註)告発状中に「河合案里」「河合克行」とあるのは「河井案里」「河井克行」の誤記である。