『救援』465号(2008年 1月号)
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代用監獄実態に関するアンケート調査結果(一)
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アンケートの趣旨
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本紙二〇〇七年一〇月号本欄にて、代用監獄実態に関するアンケートへの協力を呼びかけた。二〇〇七年一二月二〇日現在、一五人から二二件の事例の情報が寄せられた。女性が一名で、残りは男性である。回答していただいた皆さんに感謝いたします。ご協力ありがとうございます。
アンケートの趣旨は、代用監獄の機能を多面的に明らかにすることである。すなわち、①被疑者の逃走予防、証拠隠滅予防、②警察による被疑者取調べ、自白の強要、虚偽自白、③政治目的などによる弾圧や報復、④「改善更正」、転向強要、人格破壊。以上のように考えると、代用監獄が➁被疑者取調べ、自白強要のために活用されているのは事実であり、この点への批判は重要だが、➂弾圧、➃転向強要も無視してはならないと思われる。刑事法学では、➀逃走予防、➁被疑者取調べに限定した議論がなされてきた。実体的真実主義のゆきすぎをデュープロセスによって制約すると唱えてきたが、捜査の実態は実体的真実主義でさえないのではないか。
かつて一九八〇年代に代監批判が盛り上がった時期、代監体験者の聞き取り調査が行われた。その後も、冤罪事件などで取調べや代監の実態が明らかにされてきた。しかし、論点が➁に絞られがちであった。
今回のアンケートでは、次の情報を求めた。➀体験の時期、➁場所、➂留置担当官の言動に疑問点はなかったか、➃取調べにおける自白強要の有無・程度・手段、➄捜査機関に弾圧や報復の意図を感じたか、➅取調べ目的と関係のない侮辱行為、➆「代用監獄=裁判抜き刑罰執行」論について、➇その他関連する情報・意見。
結論から言うと、多くの回答は、逮捕の不当性、取調べにおける脅迫、欺計、侮辱、自白強要を中心にしたもので、代用監獄の利用がその条件となっているというものである。代監だけを取り上げた批判はむしろ多くはない。弾圧や報復については関連する情報は多数あるが、それが主眼というわけではない。代監の条件、取調べ、自白強要、弾圧・報復が密接に結びついているからであろう。言うまでもなく、被疑事件の性質や、捜査協力の姿勢(自白か否認か)などにより相当異なるが。
なお、刑事施設(拘置所、刑務所)における処遇や医療に関する情報も寄せられたが、その点は本紙の刑事施設医療に関する調査で扱われる。
以下では寄せられた情報をもとに順次紹介していきたい。引用文は基本的に原文からの抜粋であるが、明らかな誤字は訂正した。
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留置場の状況
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留置場の生活状況から始めよう。
「留置場内の生活に関する規則があいまいであり、不当に思うことが多くあった。手紙を発信するまで、一週間~一〇日間かかる決済システム、速達による着信が着信後五日目ぐらいに交付されるなど」(宮城県大和署、〇三年七月~〇四年三月)。
「差入品等も担当官によって変わる。妻が持ってきた単行本を三、四冊持って帰らせる。八月一八日から四月二日までいましたが、みそ汁は一度も出たことがなく、正月にカップヌードルをお願いしましたが、お湯をわかし入れるのが面倒で中止になった」(兵庫県須磨署、九八年八月~九九年四月)。
暴行・傷害の訴えもある。
「起床後、洗面所にて口をすすぎ水を飲んだだけで大声をはり上げ怒られ、言い返したら警察官ら三人、私に集団暴行を加え、歯が二本、身体に大怪我をさせられた。人権擁護委員会に告発するというと、逆に公務執行妨害、傷害の事件を捏造された。一切警察官に暴行等行っていないのに。怪我が元で救急車にて東京警察病院に運ばれたのですが、医師に身体の怪我、歯が折れていると言っているにもかかわらず、診断書にも一切記載がないのです。まったく出鱈目です」(東京都浅草署、〇四年七月)。
取調べと連動する局面では次のような回答が目立つ。
「留置担当官が刑事に漏洩しているみたいなので、『ボクは〇✕△□です』とウソを言ってみたら、次の日に刑事に『お前は〇✕△□なのか?』と言われた」(千葉県松戸署、〇六年一一月~〇七年二月)。
「刑事が留置場に入って来て被疑者と話すなど規則に違反する言動が多く、月日を送るのに居辛い」(大阪南署、〇一年三月~四月)。
「監視官の執拗な嫌がらせが半端ではなかった。眠らせない為に音などにより不眠状態にする。携帯電話を持ち込んで夜間に着信音をさせ、なかなか切らない。持ち込み禁止になっているのに、訴えても変わらなかった。医務は最悪で自費で市販薬を購入しないといけない。取調べ中に倒れたが、二〇分ほど房に入れられ仮病かどうか様子を見られていた。過食といわれたが、あの食事量でそれはない。拘置所に移監した際に八キロ減っていた。毎日下痢をしているのを知りながら、管理課は冷酷だった」(福岡県博多署、〇四年三月~五月)
「夜勤の時、携帯でメールを打って遊んでいたり、マンガを読んでいたり、人が水を一杯くださいといっても知らんぷりです。捜査に協力する者は、飲食やたばこを吸わす面倒見を行っている。署長に、職員が朝の運動時に一緒にたばこを吸っていると告発したら、一切そんなことはないと言う」(東京都浅草署、〇四年七月)
ここには医療の貧困問題も含まれているが、体調不良にしておいて取調べで自白を強要するが、逆に協力的な者にはたばこなど面倒見のパターンがある。
数は少ないが次のような回答もあった。
「どの被疑者に対しても公平に接していたし、特に問題となることは記憶にない」(兵庫県灘署、九八年五月~一一月)。
「担当さんも、私が作られた事件にて入っているということを聞いていたらしく、いろいろと気を使ってくれていた。押送される時だったでしょうか、『あなたも被害者なんだろう?』と話しかけてきたり、少なくとも犯罪者という扱いをされていませんでした」(東京都池袋署、〇五年六月~一一月)。