ジョージア政府がCERDに提出した報告書(CERD/ C/ GEO/9-10. 29 September 2020)
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前回報告書について、『序説』六二〇頁。
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二〇一四年、差別撤廃法が改正された。二〇一七年五月、刑法改正により、刑法第五三一条に人種差別に関して、量刑の下限を一年とする刑罰加重事由が盛り込まれた。量刑は裁判官の裁量ではなく一年以上の下限に拘束される。
二〇一九年二月、差別撤廃法が改正され、雇用、健康、教育、社会サービス領域にも適用されることになった。
二〇一八年四月、「人権保護国内戦略・行動計画二〇一八~二〇」を決定した。差別防止の施策実施を求めている。差別とヘイト・クライムの捜査と訴追、差別とヘイトに関する啓発キャンペーン、法令における差別的条項の削除を定めた。
二〇一九年二月、公務員・政治家によるヘイト・スピーチ予防のため、「国会議員倫理綱領」を採択し、綱領第二項は人種、皮膚の色、性別、宗教、その他の事由に基づくヘイト・スピーチ禁止原則を設けた。綱領第三項によると、議員はその職務に当たって、尊厳を損なうスピーチ、攻撃的スピーチ、性差別主義やヘイト・スピーチを禁止される。
二〇一九年五月、査察官職務法を制定し、人権侵害犯罪の独立かつ実効的捜査を担当することにした。法執行機関や公務員による犯罪や差別に基づく犯罪を管轄する。
二〇一八年一月、社会構成員の権利と自由を保護するため、人権擁護庁を設置した。不寛容に動機を有する差別犯罪の捜査を監視する。不寛容に動機を有する差別犯罪の認定と捜査に関する勧告を行う。
二〇一六~一九年、憎悪動機の刑事事件は六三一件であった。一六年は六三件、一七年は八六件、一八年は二一〇件、一九年は二七二件である。刑事訴追されたのは四二二人であった。一六年は四四人、一七年は四四人、一八年は一五一人、一九年は一八三人である。
二〇一六年の六三件のうち、国民的動機は一件、民族的出身は三件、宗教は二七件、人種差別は四件。刑事訴追された被告四四人のうち、性的指向は四人、宗教は一六人、性差別は三人、国籍は四人、差別は一四人。
二〇一七年、刑事訴追された被告四四人のうち、性的指向は四人、ジェンダー・アイデンティは四人、宗教は二人、性差別は二五人。
二〇一八年、刑事訴追された被告一五一人のうち、性的指向は一五人、ジェンダー・アイデンティは一二人、民族的出身は一人、宗教は二人、人種は一人、国籍は三人、性差別は一一一人等。
二〇一九年、刑事訴追された被告一八三人のうち、性的指向は一九人、ジェンダー・アイデンティは一二人、人種民族的出身は四人、人種は四人、宗教は一三人、国籍は四人、性差別は一一九人等。
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CERDがジョージアに出した勧告(CERD/C/GEO/CO/9-10. 13 December 2022)
メディアやオンラインのヘイト・スピーチ、政治家や高官によるヘイト・スピーチがある。政府は対策を講じているが、放送メディアやオンラインのヘイト・スピーチに対処する実効的法律がない。警察内にヘイト・クライム/スピーチ担当部局を設置すること。国会議員のヘイト・スピーチを禁止する倫理綱領を実効的にすること。伝統的放送及びオンラインのヘイト・スピーチ規制を強化すること。