前田 朗「人種・民族差別被害者の救済をめぐって――欧州諸国の施策に学ぶ」『人権と生活』43号(2016年冬号、在日本朝鮮人人権協会会報)
「差別とヘイトのない社会を目指して」という連載の3回目である。人種差別撤廃条約を日本が批准してから20年を超える歳月が流れ、研究も進んできた。条文の解釈やCERDの一般的勧告の翻訳がなされた。日本政府報告書の審査にあたってNGOが精力的にロビー活動を行って、有益な勧告を手にしてきた。
しかし、条約の解釈は文理解釈の域を出ているとは言えない。CERDがこれまでに行ってきた解釈に基づき、各国の状況がどのようになっているのかを解明する必要がある。
そこで、本稿では、人種差別撤廃条約6条の解釈を明らかにするために、条文、一般的勧告だけではなく、各国政府の報告書の記載を紹介した。先に『救援』及び『社会評論』において10か国の状況を紹介したのに続き、本稿ではオランダ、ノルウェー、ヴァチカン、リトアニア、スロヴェニアの状況を紹介した。また、15カ国の状況を簡潔に整理した。
条約4条のヘイト・スピーチに関してはすでに世界130か国の状況を紹介した。5年がかりの作業だ。6条に関しては、世界すべてではなく、とりあえず欧州諸国に限定して紹介している。今後も継続する予定だ。