オランダ政府が人種差別撤廃委員会に提出した報告書(CERD/C/NLD/19-21.
18 November 2013)によると、公共政策に反する目的を有する組織は、検事局の申請に基づき裁判所の命令によって解散できる。刑法一四〇条は、「禁止された組織の活動に継続的に参加した者は犯罪を行ったことになる。政党の禁止または解散は最終手段として行われる措置である。
表現の自由は絶対ではない。他の憲法上の権利と矛盾することがある。表現の自由があるからと言って、差別理由による教唆、憎悪、差別の煽動、暴力の唱道は保護されない。公共の事柄について公共の議論を広めることは重要である。しかし、表現の自由に限界がないということではない。社会的利益のために表現の自由を制限する必要がある場合もある。その判断は、検察官と裁判所が、国内法や欧州人権裁判所判例に照らして、慎重に行う。集団に対する侮辱事件では、判例法を通じて形成された三段階モデルがある。第一に、その発言自体が刑法一三七条cの意味での侮辱に該当するか(故意に人の集団を侮辱する意見を公然と表現したか)。第二に、その発言がなされた文脈がその侮辱の性格を無効にするか。第三に、その発言が公的議論に加わる過程でなされたものか(政治的意見の表明を含む)、又は宗教的信念や芸術表現の文脈でなされたものか。その発言の侮辱的性格が文脈によって無効になる場合は、不必要に有害な場合だけに犯罪とみなされる。
人の身体的統合に脅威となる発言は犯罪となる。そうした発言の犯罪性は表現の自由を引き合いにして減じることはできない。しかし、脅威の性格や、発言がなされた状況が、被害者が脅威にさらされたと感じるようなものでなければならない。
映画『フィトナ』を制作したゲルト・ウィルダースは自由党党首、議員であるが、二〇一一年六月二三日、アムステルダム地裁によって憎悪と差別の煽動及び差別的理由に基づく人の集団への侮辱について、無罪を言い渡された。検事局が控訴しなかったため手続きは終結した。
オランダは表現の自由を強く支持しており、表現の自由分野では刑法は二次的役割を有するに過ぎない。オンラインに差別的発言が投稿された場合、人々はホットラインに通報できる。すべての報告が記録される。オンライン差別についてのホットラインの役割は、差別的投稿の削除ができることである。
二〇一〇~一二年四月まで、検察局が扱った事件は多様であり、モロッコ出身の警察官に対する暴言、ナチスのシンボルやスローガンを刻んだ短剣の輸入、人種主義の歌のオンライン配布、外国出身の若者の食品販売店からの排除などであった。多くの事件で裁判所により刑罰を科されたが、無罪となった例もある。無罪の理由は、その発言が訴因に該当しない場合や、その発言を誰が行ったか証明されなかった場合である。
<オランダ領アルバ>
刑法2:60条から2:64条により差別行為は禁止されている。彼又は彼女の人種ゆえに公然と人を攻撃することは禁止されている。侮辱的発言、文書、電子データも禁止である。他人に特定集団に対する差別を教唆することは犯罪である。差別的性格の文書を出版すること、差別を目的とする活動を財政支援することも禁止されている。刑罰は六カ月以上二年以下の刑事施設収容、又は第二級乃至第四級の罰金である。
<オランダ領キュラソー>
刑法1:6条1項(d)は、コンピュータ・システムや電磁的ネットワークを通じて、人種主義的排外主義的性質の行為を行った外国人を含む定住者に、刑事管轄権を与えている。これはサイバー条約ストラスブール議定書に合致する。刑法2:60条は、宗教、信念、政治的見解、人種、皮膚の色、言語、国民的又は社会的出身、心身の障害、性別、性的志向、マイノリティであることを理由に人の集団を侮辱する見解を故意に公然と表明することを犯罪としている。一年以下の刑事施設収容、又は第三級の罰金である。常習の場合、複数人の犯行の場合、二年以下の刑事施設収容、又は第四級の罰金である。
刑法2:61条はコンピュータ・システムによる図像やデータを用いて憎悪、差別、暴力を煽動すること、刑法2:62条は公然と発言したり、そうした発言が含まれていることを知りながら印刷物を配布すること、刑法2:63条は人に対する差別を目的とする活動に参加し、財政支援すること、刑法2:64条は職場において項に人を差別することを、犯罪としている。
<オランダ領土サンマルタン>
刑法269条は、宗教、信念、政治的見解、人種、皮膚の色、言語、国民的又は社会的出身、心身の障害、性別、性的志向、マイノリティであることを理由に、公然と、高等、文書、図像、データにより、人の集団を侮辱した者は、一年以下の刑事施設収容、又は第三級の罰金とする。