Tuesday, June 27, 2017

ヘイト・スピーチ研究文献(103)差別と闘う覚悟と理論

ヘイトスピーチを許さないかわさき市民ネットワーク[編者]『根絶!ヘイトとの闘い――共生の街・川崎から』(緑風出版)
■目次
第1章 なぜ、川崎・桜本がヘイトデモの標的にされたのか?(山田貴夫)
第2章 ヘイトスピーチを許さないかわさき市民ネットワークの運動(山田貴夫)
第3章 「あるを尽くす」─当事者、地域の声を市や国へ届ける(崔江以子)
第4章 人権侵犯被害申告と法務局勧告の意義について(神原元)
第5章 NO PASARAN 「桜本を踏みにじらないで」─ヘイトデモ禁止仮処分命令申立事件(三木恵美子)
第6章 川崎市議会の取組み(山田貴夫)
第7章 自治体に「人種差別撤廃条例」の制定を求めて─川崎でヘイトスピーチをさせない仕組み、条例化をめざして(三浦知人)
第8章「闇との闘い。希望を信じて」─インターネット上のヘイトスピーチとの闘い(崔江以子)
第9章 人種差別撤廃にむけた自治体の責務(師岡康子) 
 はじめに
10章 「さべつのないかわさき」(石橋学) 
「絶望を希望で上書きした川崎市民の闘い!」
「差別根絶のための求められる人種差別撤廃条約」
京都、新大久保、鶴橋、川崎と続いてきたヘイト被害だが、反差別、反ヘイトの闘いも組織されてきた。ヘイト・スピーチ解消法にこぎつけた市民の闘いは各地で多様に展開したが、川崎市民の闘いは特筆に値する。被害当事者の立ち上がりも素晴らしいが、共生の街づくりの歴史に根差した市民の取り組みも重要だ。そして、弁護士やジャーナリストも全力投球だ。全10章、いずれも感銘を受ける文章が収録されている。
「差別は許されない」――誰でもいえる言葉だ。
にもかかわらず、「差別は許されないが、規制はできない」「ヘイトは許されないが、規制はできない」という無責任で卑劣な発言が、この社会ではまかり通る。自分は中立であるかのごとく装う。外部の第3者であるかのごとくふるまう。
しかし、差別に中立はないことを本書は鮮やかに示す。差別に反対し、差別をなくすために、何をするのか、いかに闘うのか。この問いに正面から向き合った市民、弁護士、ジャーナリストの覚悟と理論を、しっかりと読み取る必要がある。