加藤直樹『TRICK-トリック「朝鮮人虐殺」をなかったことにしたい人たち』(こ
ろから)
http://korocolor.com/book/trick-.html
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工藤美代子、産経新聞、日本会議、自民党文教族、小池都知事、百田尚樹……
彼らが掲げた「虐殺否定」は幼稚な”フェイク”だった!
『九月、東京の路上で 1923年関東大震災ジェノサイドの残響』(ころから)の著者が、ネット上に蔓延する「虐殺否定」がまっとうな「論」ではなく、タネも仕掛けもある「トリック」であることを白日の下に晒す。
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まえがき それは”トリック”だった
第1章 虐殺否定論はネット上のフェイクである
第2章 虐殺否定論はトリックである
第3章 虐殺否定論は社会を壊す
付録1 工藤美代子本の史料引用のずさんさ
付録2 内閣府中央防災会議報告書(抜粋)
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完璧である。
『九月、東京の路上で 1923年関東大震災ジェノサイドの残響』も加藤の、またしても鮮やかな秀作だ。
178頁の小さな本なのに、随所に論争があり、トリック暴露があり、糾弾があり、資料があり、まっとうな「論」がある。
工藤美代子らの手法は見え透いている。
震災直後の流言記事を「証拠」扱いする。流言から起きた虐殺を隠蔽するために流言を再活用する破廉恥である。
犠牲者の数を極小化する数字の詐術もよくあるパターンだ。
史料を勝手に切り刻んで、自説に都合の良いように工作する。虐殺の証拠を暴動の証拠に捻じ曲げる。
都合の悪い部分はもちろん隠す。
原典に書いていないことをこっそり書き加える。
加藤は、こうした破廉恥なフェイクぶりを次々と指弾する。
あまりに低劣で、幼稚な手法だが、資料を自分で見ない人々は簡単に騙される。
フェイクを暴くのには、結構な手間暇がかかる。
相手にするのもばからしいから、多くの論者が素通りする。
それがいつの間にか影響力を持って、インターネット上では流行となる。まともな議論なしに、「大虐殺はなかった」派に占拠されてしまう。
このみじめな状況を放置しておくわけにはいかない。加藤は時間と手間をかけて、フェイクの実態暴露を遂行する。
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関東大震災朝鮮人虐殺という言葉が定着してきたのに、事実を否定するフェイクが蔓延している。
こういう状況では、なかなか言いにくい感じもするが、私はこの言葉よりも、コリアン・ジェノサイドという言葉を使ってきた。加藤もジェノサイドという表現を用いている。
国連人権委員会(人権理事会)にも1923年のコリアン・ジェノサイドと報告してきた。
そうしないと意味が伝わりにくい。地震で亡くなったわけではないので。
国際社会では、ジェノサイドと言えば、まずイメージが伝わる。その後で具体的な内容を説明すれば良い。
アルメニア、ユダヤ人、旧ユーゴの民族浄化、ルワンダ、スーダン・ダルフールといった世界史的出来事と比較できる。