小説は事実を超える?
柴田哲孝『暗殺』(幻冬舎文庫)
安倍晋三元首相狙撃事件をモチーフにした政治サスペンス小説だ。狙撃事件が2022年7月で、本書出版は2024年6月でベストセラーになった。2026年3月に文庫化されて初めて読んだ。
狙撃事件の時、私は上野動物園でパンダを見ていた。スマホのニュース速報を見て、数人のジャーナリストに電話で事件について話したのを覚えている。事件直後で、情報はほとんどなかったが、単なる狙撃事件ではなく、背後に暗いうごめきがあり、真相は明らかにならないだろうと言うことで、みな一致した。その通りになった。
狙撃事件に関する警察発表は到底信用できない。あちこち矛盾することは誰もが指摘してきた。にもかかわらず、政治的にも刑事裁判でも、警察のシナリオ通りに進んでいる。
批判的に検証しようとする動きもあったが、おおむね「陰謀論」の名の下に退けられた。本書も「陰謀論」の一種とみなされるだろうが、そのことも踏まえて、あえて状況設定がなされている。赤報隊事件との繋げ方はなかなかの趣向だ。
柴田哲孝の本は下山事件について2冊読んだ。1冊はノンフィクション、もう1冊は小説だ。どちらもすぐれた作品だった。他の作品を読んだことがないが、ミステリー、サスペンス、政治小説、社会派小説など多彩な作品を送り出しているようだ。