多彩な憲法読本にじっくり学ぶ
①清水雅彦『シン・ケンポウ――やさしく学ぶ日本国憲法』(同時代社)
②五十嵐仁・小沢隆一編『憲法を「そもそも」から学び活かそう』(学習の友社)
高市政権は憲法改悪に向けて奔走している。さしたる必要性もなく、緊急事態を口実としたお試し改憲だ。中身を問わず、とにかく改憲することが目的化している。
今春、全国各地で改憲反対の平和運動・人権運動が闘われた。9条の会、護憲の会、市民団体、労働団体をはじめ多様な団体や個人が憲法改悪にNO!をつきつけた。そんな中、個性的な憲法読本が相次いで出版された。
①
清水雅彦『シン・ケンポウ――やさしく学ぶ日本国憲法』(同時代社)
https://www.doujidaisya.co.jp/book/b10165930.html
<国家? 国民? 人権? 天皇制? 「改憲」? 「護憲」?
憲法論議をまえに、まさひこ先生が50のギモンに答えます!
私たちの未来のために、いまこそ憲法をマスターしよう!>
「憲法は国家を縛るもの」「私は「改憲派」ですが」「「日本人ファースト」のここが問題!」「不健康に生きる権利もある!?」「「君が代」は歌わなくていい」などの50項目が見開き2頁で解説される。読みやすい解説に加えて、あべのりこによるイラストが付されている。「私は「改憲派」ですが」のイラストでは、まさひこ先生が憲法から「天皇」条項を破り捨てている。
50番目は「日本国憲法、やめますか?」で、「憲法9条を変えて日本は『戦争する国』する国になりますか?」である。
著者は日本体育大学教授で、戦争をさせない1000人委員会事務局長代行、九条の会世話人である。
著者とは30年来の付き合いだ。かつて湾岸戦争に日本政府が1兆円の拠出をしたことに反対して、市民平和訴訟を提起した。著者も私も原告団に加わった。それ以来、いろんな場面で著者に学ばせてもらっている。
②
五十嵐仁・小沢隆一編『憲法を「そもそも」から学び活かそう』(学習の友社)
https://gakusyu.hateblo.jp/entry/2026/04/22/115958
<いま日本の人びとの間で、なぜこれほどまでに「憲法についての理解」が定着していないのでしょうか。選挙があるたびに、また政治家の「不祥事」が起こるたびに、そしてショックな事件が発生するたびに、そう思いませんか。……憲法について「そもそも」から学んでみて、それを本当に知る必要がないのか、もうわかりきっていることなのか、それとも自分のふだんの考えや姿勢にどこか「足りない」ところがないのか、考えてみませんか。>
2025年の1年間、月刊誌『学習の友』に連載された文章に、数章の書下ろしを加えて単行本にしたものである。
構成や叙述はオーソドックスなものだが、最近はこうしたオーソドックスな著作が減っているので、むしろ新鮮に感じられる面もある。「第Ⅰ部 憲法の歴史に学ぶ」の「第1章 近代憲法の意義について」と「第2章 19世紀における「憲法をめぐるたたかい」」は、近代憲法の統治原則や人権条項の形成を歴史的に描き出しているが、そこでの視点は自由と権利と民主主義を求める民衆の闘いである。
これに呼応して、「第Ⅴ部 憲法をわれらの手に」の「第17章 憲法を将来世代に託す「若者」と憲法」は、私たちの世代の責任で憲法の民主的条項を活かし、発展させ、さらに将来世代に継承していく課題が明記されている。そして、驚いたことに、日本国憲法97条が丸ごと引用されている。97条を引用するのは当たり前のことに見えるかもしれない。しかし、ここ数年に出版された憲法教科書には97条の引用を見ることができない。憲法11条の引用も珍しい。11条と97条には「将来の国民」が明記されている。だから、憲法11条を引用する際に、ある憲法教科書は「将来の」の3文字を削除しているほどだ。
私は従来からこの点を重視して、「将来の世代の人権」という論文を書くなど、しつこく強調してきた。しかし、憲法学者からの反応はない。
本書には私の名前も一度だけ登場する。表現の自由とヘイト・スピーチをめぐる記述の中で、前田朗『人権再入門』(学習の友社)が引用されている。
本書のスタンスはとても重要である。歴史に学び、民衆の闘いに学び、憲法の基本理念を将来の世代に引き継ぐという、当たり前のように見えて難しい課題に正面から向き合っている。
編者の小沢隆一とは、40年来の付き合いだ。はじめて会ったのは院生時代で、民主主義科学者協会法律部会の東京の研究会であった。それ以来、大いに学ばせてもらっている。
ゴールデンウィークが終わり、国会では憲法改悪に向けた議論が進められている。高市政権は、改憲しようがしまいが、憲法破壊の意思に揺るぎがない。
2冊の憲法読本に学んで、あらためて憲法とは何か。日本国憲法とは、平和主義とは、平和的生存権とは何かを、じっくり考えたい。