Saturday, December 13, 2025

「第四の被曝」とは何か 知られざるもう一つの被曝

知られざるもう一つの被曝

 

 1958年7月12日、アメリカの水爆実験ポプラによって、南太平洋ビキニ西方を航行していた海上保安庁の測量船「拓洋」と巡視船「さつま」の乗員が被曝し、1年後、拓洋の機関士永野博吉(34歳)が急性骨髄性白血病で死亡しました。

 日米両政府は被曝と永野さんの死亡の因果関係を否定し、事件をもみ消しました。

 ビキニ水爆実験・第五福竜丸(1954年)の話ではありません。ほとんど誰も覚えていない事件です。「第四の被曝」を広める会は、この事件の真相解明を求めて活動を始めました。そのきっかけとなったNHKスペシャル「第四の被曝」を観て、広める会の活動について伺います。

 日本政府に情報公開を求め、隠された真相を追及するために、ぜひご一緒に考えましょう。

 

「第四の被曝」とは何か

  NHKスペシャル『封じられた第四の被曝』上映

  大藏律子 (広める代表) 挨拶

「第四の被曝」を広める会の活動について (事務局)

④遺族アケミさんの訴え 

資料代:500

2026131(土) 開場6時、開会630

東京ボランティア市民活動センター会議室

JR飯田橋駅隣RAMLAビル10階)     

*会場定員は35名です。参加希望者はEメールで予約願います。

 

主催:平和力フォーラム

連絡先E-mail: akira.maeda@jcom.zaq.ne.jp

電話070-2307-1071(前田)

Wednesday, December 10, 2025

深沢潮を読む(9)結婚とは、家族とは

深沢潮を読む(9)結婚とは、家族とは

深沢潮『かけらのかたち』(新潮社、2018年)

このところ高市首相の台湾有事発言などへの抗議を続けてきた。

12月6日の東京新聞こちら特報部

https://www.tokyo-np.co.jp/article/453810

12月7日、中国中央テレビ

https://content-static.cctvnews.cctv.com/snow-book/video.html?item_id=11870995765803578417&t=1765088547434&toc_style_id=video_default&track_id=D27326E1-FFA1-4D0E-A859-4957B338A221_786782548079&share_to=wechat

129日、東京新聞こちら特報部

https://www.tokyo-np.co.jp/article/454626?rct=tokuhou

『かけらのかたち』は深沢の第9作である。前作は本格的長編だったが、本書はふたたび深沢お得意のロンド形式に戻った。第1作の『ハンサラン 愛する人びと』以来、連作短編の形式で、結婚や家族について考えさせる。

「マドンナとガガ」に始まり「マミィ」に至る6つの短編を繋ぐのは、学生時代のテニス部のマドンナだった優子。テニス部時代の仲間たち、思い出、その後の20年以上の歳月、それぞれの夫婦の物語、子どもたちを、順次取り上げていく。今を生きる市井の人々の暮らし、意識が鮮やかに描き出される。

愛、友情、信頼、憎しみ、嫉妬が、ありきたりなのに、それぞれの夫婦や家族の形を織りなす。平凡な市民が抱える悩みが、人間の普遍的な悩みである。

おそらく深沢は年々、歳月を積み重ねる中で、このテーマとスタイルを追究し続けるだろう。

Saturday, December 06, 2025

反差別連続講座第5回 文化ジェノサイドと略奪文化財

反差別連続講座第5回

文化ジェノサイドと略奪文化財

123日(金)18152030 、開場1800

浦和コミュニティセンター第15 集会室 浦和駅東口 浦和パルコ上9階

講師:前田朗

資料代 800円 (学生・障がい者500円)

前田朗さんの連続講座は、1回目は「関東大震災コリアジェノサイド」、2回目は「未解決のヘイト・クライム事件」、3回目は「民族教育の権利について」、4回目は「ヘイト・スピーチ法の国際常識」のお話で様々な人権問題を掘り下げました。今回のテーマは「文化ジェノサイドと略奪文化財」です。日本には朝鮮半島由来の多数の美術品などが〈植民地支配による略奪文化財〉としてあります。靖国神社にあった「北関大捷碑」は返還要請に応じ朝鮮に戻されましたが、未だに返還されていない文化財は多数あります。さて、文化ジェノサイドとは何でしょうか?前田朗さんに解説していただき、ご一緒に考えましょう。

・今後の予定  第6回講座 3月

・テーマ 「同化を強制されない権利」

主催: 外国人学校・民族学校の制度的保障を実現するネットワーク埼玉

協賛: ヘイトスピーチ禁止条例を求める埼玉の会、子どもの人権埼玉ネット、朝鮮・ 韓国の女性と連帯する埼玉の会    

問合せ:080-1245-3553(斎藤) 

Wednesday, December 03, 2025

『人権再入門』出版記念シンポジウム ヘイトとたたかう市民

『人権再入門』出版記念シンポジウム

ヘイトとたたかう市民

ヘイト・スピーチ、ヘイト・クライムが頻発し、公然と外国人排斥が唱えられています。日本政府は差別やヘイトを抑止するどころか、むしろ差別を煽っています。

反差別・反ヘイトの人権運動は長期にわたる取り組みを余儀なくされてきましたが、「日本人ファースト」を呼号する日本人中心主義と外国人排斥が公然と叫ばれている現在、あらためて人権論の再確立を求められています。

前田朗著『人権再入門――ヘイトとたたかう市民のガイドライン』(学習の友社)出版を機に、差別とたたかう市民のシンポジウムを開催します。

https://roukyoukyou.wixsite.com/gakutomo/aitemu-1/j

2026111日(日)午後2~5時(開場130分)

会場:北とぴあ・第1研修室(JR王子駅・地下鉄南北線王子駅前)

参加費:500

佐高 信(評論家) 「差別を助長する政治」

清水雅彦(日本体育大学教授) 「反差別の憲法論」

辛淑玉(のりこえねっと共同代表) 「のりこえねっとの活動を通じて」

竹信三恵子(ジャーナリスト、和光大学名誉教授) 「生存を脅かす差別」

司会・前田 朗(朝鮮大学校講師)

 

主催:平和力フォーラム

連絡先070-2307-1071

E-mail:akira.maeda@jcom.zaq.ne.jp

Saturday, November 22, 2025

深沢潮を読む(8)越えられない海峡をいかに越えるか

深沢潮を読む(8)越えられない海峡をいかに越えるか

深沢潮『海を抱いて月に眠る』(文藝春秋、2018年)

https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784167916756

この夏、「日本人ファースト」が話題になった。思想の頽廃そのものだ。ひどい差別扇動なので、何度か批判する講演をやった。昨日も信濃町教会で開催された日本友和会の講演会で「日本人ファースト」批判をしてきた。そのもとになる文章を2つ書いた。

前田朗「『日本人ファースト』を知るためのこの三冊!」(『本のひろば』202510月号、キリスト教文書センター)

前田朗「いつも『日本人ファースト』だった」『人権と生活』60号、在日本朝鮮人人権協会、2025年)

近現代日本の150年は、いつも日本人ファーストで、周辺諸民族・国家に対して侵略と差別を続けてきた。第二次大戦敗北後、植民地を喪失しても、その反省がなく、「天皇制と国民主義」の日本国憲法に基づいて民族差別を繰り返してきた。その反省がまったくないので、いまになってさらに「日本人ファースト」などと叫ぶ。異様に根強い差別と排外主義だ。

『海を抱いて月に眠る』は深沢潮の第8作で、「前期」の代表作だ。深沢文学の最初のピークであり、ここまでが「前期」だろう。この後、深沢文学は多様な翼を広げていく。

あるウエッブ書評欄で次のような記述を見つけた。

KikuchiKohei

「すさまじい小説である。終戦直後から現代までの在日韓国人とその家族の生涯を、大河ドラマのようなスケールで描いている。これほどの技巧と構成力を備えた作品が、何の文学賞も受賞していないのは、日本の表彰システムの欠陥と言ってよい。物語の完成度、登場人物の造形、時代背景の描き込み、そのすべてが優れている。 本作は在日韓国人の物語であると同時に、日本の物語でもある。日本の植民地支配と戦争は、朝鮮半島とそこに生きる人々に不可逆の影響を与えた。その罪深さと、それに翻弄されながらも前向きに生きる人々の力強さが描かれている。」

Satoshi

「在日一世の父親の壮絶な一代記。大日本帝国から解放されたのに、政権が安定せず、偽名を用いて日本に亡命せざる得なかった。在日朝鮮人への差別と闘いながら、分断される祖国の民主化運動を日本から支えつつ、子供を育てる。祖国が分断するということは在日朝鮮人同士も敵対することを意味する。そこにはアイデンティティというありがちな言葉だけでは表現できない人生がある。在日朝鮮人や朝鮮学校にヘイトスピーチを繰り返す人達にぜひ読んで欲しい。本書を読んで考えを変えないなら重症だ。」

これまで連作短編形式を得意としてきた深沢だが、本書では、亡命して偽名で生きた父親の手記と、父親の死亡後にその手記を読む娘の、それぞれの想いを交錯させながら、植民地支配、戦後の分断(朝鮮、韓国、在日)、その状況を生き抜いた人々の歴史を現在を巧みに描いている。

巻末には参考文献が多数列挙されている。尹建次、池明観、金大中、金時鐘、文京洙といった名前が並ぶ。なるほど、私たちが学んできた現代史と思想である。

Wednesday, November 12, 2025

青梅九条の会講演会

<青梅九条の会講演会>

敗戦80年に考える

植民地主義と排外主義の現在

講師:前田 朗(東京造形大学名誉教授)

開催日時:12月7日(日)14時~16時 13:30分開場

開催場所:青梅市福祉センター集会室1から3(定員90名)

資料代:300円

(高校生以下無料)

問合せ:青梅九条の会

電話 0428-31-1302・中村

Monday, November 10, 2025

深沢潮を読む(7)貧困女子はどこから来たか

深沢潮を読む(7)貧困女子はどこから来たか

深沢潮『あいまい生活』(徳間書店、2017年)

 

朝日新聞(116日)に「根下ろす排外主義、言葉であらがう 新潮コラム抗議 小説家の深沢潮さん語る」が掲載された。

祖父が関東大震災時に自警団に殺されかけた過去に言及しつつ、現在の外国人排斥について語っている。

「『朝鮮人虐殺』という単語が独り歩きしているけれど、一人ひとりの生活や日常がどういうもので、それがどう破壊されて踏みにじられたのかを伝えなければ、抽象的な頭の中だけの理解になってしまいます。」

「排外主義的な言説がSNSでどんどん広がり、外国人排斥を訴える政党が支持され、選挙でもカジュアルにヘイトスピーチが言われるようになりました。言われる側、外国人当事者としては本当に恐怖でしかないと思います。でも結局、日本人にとっては自分事ではないんです。/関東大震災のときでも、虐殺はおかしいと思った人はいました。今、責任のある立場の人や声の大きい人が、差別をあおって止めないことの罪はすごく重いと思います。」

「尊厳を傷つけられると人間は本当にこたえます。相手が正面から答えてくれないと、海に向かって石を投げているような感覚になりました。」

「世の中は自分と同じ人には共感しても、立場の違う人に対しては想像力を失ってきていると思います。同質性のない人はないがしろにしていいという空気が広がっています。だからこそ『これはおかしいですよ』とちゃんと言っていかなければいけない。向き合う先は『海』だけど、自分に引き寄せて想像してもらえるように言葉を届けるしかないと考えています。」

『あいまい生活』は深沢潮の第7作だ。これまでと同様に、連作短編でありつつ、長編となっている。

貧困女子という言葉が流行語になった時期があった。2010年代から用いられていると言う。一般に、最低限の生活を営むことすら困難な女性が貧困女子とされ、例えば、年収が114万円未満や月の手取りが10万円未満ならば貧困女子とされているようだ。本書巻末には参考文献が列挙され、『失職女子。』『女性たちの貧困』『最貧困女子』『最貧困シングルマザー』などの著書が掲げられている。

アメリカ留学に適合できずニューヨークから帰国した樹(いつき)は、ティラミスハウスというシェアハウスの住人となる。劇団員の風香、50社の面接が不首尾だったさくら、中国人実習生として働き雇用主のセクハラに耐えているウェイ、家事手伝いをしているが仕事を切られそうになっている好美、そしてシェアハウス担当職員の雛。

いずれも文字通りの貧困女子である。貧困の原因も生活歴も志向も嗜好も異なるが、同じシェアハウスで明日を探す。だが、現実はさらに厳しい。シェアハウス経営主が違法行為をしていたため、立件され、住家も失われる。

深沢はそれぞれの貧困女子の生活と意識を巧みに描き出し、貧困女子は単純にレッテルを張って済む問題ではないことを示す。それぞれの人生があり、それぞれの貧困がある。だが、同時に、貧困を強制するこの社会という共通の背景がある。

貧困女子という言葉は見事に時代を体現しているようでいて、実はそうではない。2010年代に貧困女子が登場した訳ではない。非正規労働が増えてはじめて貧困女子が登場したのでもない。高度経済成長時代にも貧困女子は強制的に生み出されていた。戦前も同じだ。近現代日本史を見れば、つねに貧困女子がつくりだされていた。それが社会問題にすらならなかったのが現実だ。ようやく社会問題になったが、その時、非正規労働問題は女子だけでなく男子の問題でもあった。つまり、女性差別問題は隠蔽され、男女共通の非正規雇用問題が論じられる。

深沢の想像力は、一人ひとりの女性が直面している問題の個別性と共通性を描き出すことで、具体的な問題解決を求める作品となっている。