仲宗根勇・仲里効編『沖縄思想のラディックス』(未来社、2017年)
<「季刊 未来」にリレー連載《オキナワをめぐる思想のラディックスを問う》として掲載された沖縄の現在的諸問題をめぐる論考をベースに、米軍基地問題でますます緊迫する沖縄の政治情勢のなかで、現代沖縄の代表的論客たちが沖縄の歴史、政治、思想を縦貫する独自の沖縄論を展開する。翁長県知事体制の確立から現在の変節にいたるまで、ドラマチックなまでのリアル・ポリティクスを根底にすえ、ブレることのない沖縄の現状を思想的にえぐり出し、これからの沖縄のあるべき姿を遠望するラディカル・メッセージ。今後の沖縄を考えていくうえで避けて通ることのできない理論と実践のための画期的なオキナワン・プログラム。>
1932年生まれの川満信一から1967年生まれの宮平真弥、1968年生まれの桃原一彦まで、世代の異なる6人の論者による、沖縄発の闘うメッセージである。編者2ひとはそれぞれ未来社から著書を出してきた。桃原一彦も、知念ウシらと共著を2冊出している。
6人の論者はそれぞれ見解が異なるようだが、基本線では状況認識と闘いの課題を共有している。
八重洋一郎「南西諸島防衛構想とは何か 辺境から見た安倍政権の生態」では日本政治の欺瞞が批判の俎上に載せられる。沖縄の論者にとっては、何度言ったらわかるのか、いい加減こういう批判をしなくても良い時代にしたいとの思いが強いだろう。それでもなお力を込めて徹底批判しなくてはならない。桃原一彦「『沖縄/大和』という境界 沖縄から日本への問いかけ」も、宮平真弥「ヘイトスピーチ解消法と沖縄人差別」も、大和が連綿と行使してきた植民地主義と差別の諸相をたどり直し、解決の手掛かりを求める。仲宗根勇の3本の論考「島の政治的宴(うたげ)のあとで 沖縄・二〇一四年知事選後の新たな政治主体:「沖縄党」生成の可能性」「沖縄・辺野古 新しい民衆運動」「沖縄・全基地撤去へ渦巻く女性殺人等遺体遺棄事件の波動 辺野古新基地問題=裁判上の『和解』後の闘い」も、軍事的抑圧と政治的差別と蔑視の総体を跳ね返すべく、思想を紡ぎ続ける。
いまや日本政府だけではなく、日本社会も確信的沖縄差別と基地押しつけを恥じらうことなく推進しつつある。メディアにおける「沖縄ヘイト」はその主要な特徴と言えるだろう。植民地主義を反省したことのない「日本」がむき出しの暴力と差別に出ている。この腐敗をどのように乗り越えていくのか。植民地主義者でありたくない者は本書の提起を真剣に受け止め、応答しなくてはならない。