Thursday, December 28, 2017

ヘイト・クライム禁止法(140)ジョージア

ジョージア政府が人種差別撤廃委員会に提出した報告書(CERD/C/GEO/6-8.31 October 2014)によると、2014年5月2日、諸外国の事例を参考にし、人種主義と不寛容に反対する欧州委員会の勧告を受けて、議会は人種差別撤廃法を採択した。同法はすべての形態の差別を撤廃し、人種、皮膚の色、言語、国民、民族又は社会的所属、性別、性的志向、ジェンダー・アイデンティティ、健康状態、障害、年齢、国籍、出身、出生地、居住地、社会的地位、宗教又は信念、政治的その他の理由にかかわらず、法が定める権利を平等に享受することを保障する。同法は直接差別も間接差別も禁止する。差別の禁止は全ての領域に及ぶ。
 刑法142条(平等侵害)及び1421条(人種差別)を定める。刑法1421条は「国民又は人種的憎悪、民族の尊厳を貶めることを目的とする行為」を犯罪としている。行為には作為も不作為も含まれ、身体的挙動のみならず、スピーチや言説も含まれるので、人種主義言説や人種的観念の流布も、憎悪や民族の尊厳を貶める目的を有する者は禁止する。共犯規定が適用されるので、刑法142条及び1421条の犯罪の実行を教唆し、幇助した者も刑事責任を問われる。
 放送法56条は人種、民族、宗教的憎悪や集団への差別を行う放送番組を禁止する。集会法11条は集会における憎悪を表明する公然発言や煽動を禁止する。
 人種差別撤廃委員会の前回勧告に従って、2012年、量刑に関する刑法53条を改正し、人種、宗教、国民、民族的不寛容、又は差別的理由によって犯罪が行われた場合、刑罰加重事由となる。
 刑法155条は墓地や宗教施設の暴力やその威嚇を犯罪といている。刑法156条は、スピーチ、意見、良心、宗教、宗派等に基づく迫害を犯罪としている。
 2010~13年、刑法142条及び1421条の適用事例はない。刑法155条について7件の捜査が行われ、3件は犯罪成立ゆえに終了した。1人が有罪認定され、一年の執行猶予を言い渡された。刑法156条について33件が立件され、14件は犯罪不成立で終了した。4人が訴追された。うち3人は刑事責任ではなく、矯正労働手続きに移管した。1人は有罪となり、1年の執行猶予となった。2013年5月17日のホモフォビアとトランスフォビアに反対する国際デーに関連して、刑法161条(集会に参加する権利を暴力を用いて妨害する罪)で5人が告訴され、1人は刑事免責となり、4人の手続きが進行中である。