池上英洋『ヨーロッパ文明の起源――聖書が伝える古代オリエントの世界』(ちくまプリマー新書)
<西洋文明の草創期には何があり、人類はどのように文明を築いたか――。聖書を中心に芸術や遺跡などをてがかりに、「文明のはじまり」について読み解く。>
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はじめに―エジプト人はフンコロガシを見て何を思ったか
第1章 ノアの洪水は本当にあったか―世界中にある「洪水伝説」
第2章 なぜ巨大遺跡は古代にしかないのか―神と王と民の権力構造
第3章 古代人の世界観―文明と神話の成り立ち
第4章 古代文明の実像―古代人の暮らしをのぞく
おわりに―古代文明を殺したのは誰か
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西洋美術史と西洋文化史を専攻する著者が、その前提・基礎となる、古代オリエントの世界を探る。古代オリエントに学んだのがギリシア文明であり、ギリシアに学んだのがローマであり、ローマ帝国がヨーロッパの枠組みを作ったからである。
旧約聖書の記述にはギルガメシュ叙事詩が流れ込み、ギルガメシュ叙事詩もそれ以前の歴史を踏まえている。洪水神話ひとつをとっても、ギルガメシュからジウスドラへ、アトラ・ハーシスへ、そしてギリシャ・ローマの洪水神話へと、著者は古代史を愉しむ。
軽々と時代を超え、空間を飛び抜け、ヨーロッパにつながる意識と記憶が残留する言葉、石碑、建造物を経巡る。