Wednesday, January 05, 2022

良きものを善に費やせ(第2章 雌牛)

中田考監修/黎明イスラーム学術・文化振興会責任編集

『日亜対訳クルアーン』(作品社、2014年)

 

今年は『クルアーン』を読むことにした。

昔、抜粋編の小さな本を読んだことがあるが、まったく印象も残っていない。中田監修本は2014年に出版された760頁の大著で、註釈も充実している。数年前に挑戦したが挫折した。私が持っているのは20175月発行の第7刷だ。今年は一年かけて、ゆっくり読みたい。

114章から成るが、まずは第1章と第2章だ。

1章は「開端」であり、本文は7行の短い文章だ。「慈悲あまねく慈悲深きアッラーの御名において」と始まり。アッラーが世界の「主」であることが示され、「あなたにこそわれらは仕え、あなたにこそ助けを求める」と信仰する者の念いを唱える。

毎日5回の義務とされる礼拝で読むことが義務付けられているという。慈悲の神、唯一の神アッラーの確証のための題目である。

2章は「雌牛」と題されている。286のフレーズから成り、日本語版では49頁に及ぶ長い章である。ムーサ―(モーセ)の逸話に由来して「雌牛」とされているが、アッラーを畏れ、信仰に励むべきことを繰り返し説く基本の綱領部分である。アーダム(アダム)、ムーサ―、イーサー(イエス)、スライマーン(ソロモン)、イブラーヒーム(アブラハム)らが次々と登場し、ユダヤ教やキリスト教を批判し、イスラムの優越性を確認している。

俗流の理解で、イスラムが戦闘的とされる根拠と見られる「おまえたちと戦う者と戦え」「彼らを見つけ次第、彼らを殺せ。そして彼らがおまえたちを追い出したところから彼らを追い出せ。」「迫害がなくなり、宗教がアッラーに帰されるまで彼らと戦え。」もこの章である。もっとも、これはアッラーを畏れない不正の信仰者が攻撃してきた場合のことだ。

また、イスラムの女性差別の根拠とされる記述(月経、妻はおまえたちの畑である、離婚等々)もこの章である。

「信仰する者たちよ、おまえたちが稼いだ良きものと、われらがおまえたちのために大地から出でさせたものから(善に)費やせ。その中から(質の)悪いものをねらって費やしてはならない。おまえたちが(自分では)それについては目を閉じてでもいなければ受け取らないようなものを。そして、アッラーは自足者で称賛されるべき御方と知れ。(2267)

「悪魔はおまえたちに貧困を約束し、おまえたちに醜行を命じる。他方、アッラーはおまえたちに彼からの御赦しと御恵みを約束し給う。そしてアッラーは広大にしてよく知り給う御方。(2268)

「彼は御望みの者に英知を授け給う。そして英知を授けられた者は、多くの良きものを授けられたのである。だが、賢慮を備えた者を除き留意しない。(2269)