カザフスタンがCERDに提出した報告書(CERD/C/KAZ/8-10. 6 November 2019)
『序説』595頁、『原論』402頁
2014年刑法には人種民族的不寛容動機による犯罪規定が含まれる。
刑法第54条によると、民族、人種、宗教の憎悪、他人の合法的行為に対する報復の動機、他人に犯罪を教唆する目的の犯罪実行は、判決において刑罰加重事由として考慮される。
刑法145条は平等権侵害を犯罪としている。平等権侵害は、出身、社会的地位、財産状態、性別、人種、民族、言語、宗教、居住地等に基づく、直接または間接的な人権侵害である。
刑法174条1項は、社会、民族、人種又は宗教憎悪の煽動にあたる行為を犯罪としている。これには社会、民族、人種、宗教憎悪を煽動する目的の行為が含まれる。同様の動機で市民を排除し、優越性又は劣等生を助長することが含まれる。
刑法168条はジェノサイドの犯罪を定める。
刑法404条2項は、人種、民族、部族、社会、階級、宗教の不寛容や排除を唱道する団体の設立を犯罪としている。
刑法174条で立件されたのは、2014年は44件、15年は82件、16年は151件、合計277件である。有罪判決は14年25件、15年35件、16年20件で合計80件である。
アクモラ州出身のEは、ソーシャル・ネットワーク上の200人のメンバーから成る「私はロシア人」という開かれた集団の責任者であるが、2015年7月、民族憎悪の煽動の要素を含む文書を配布した。法心理学及び言語学的評価により、当該文書は民族憎悪の煽動、及びカザフ民族集団と歴史の名誉と尊厳に対する侮辱である。Eは有罪答弁をして、誠実な反省を示した。2015年11月18日、サリャーカ地方裁判所はEが刑法174条1項の犯罪を実行したと認定した。
2017年、西カザフスタン州出身のMは、アスラン・アスランと言うユーザー名で、モバイルアプリを用いており、9万人のフォロワーがいた。「西カザフスタン州でガス価格が再び値上げした」というニュースに、ロシア連邦市民がコメントを付しているのを読んだ。Mは、民族憎悪を煽動するコメントを書き込んだ。裁判所はMが刑法174条の犯罪を実行したとして、3年間の自由制約を言い渡した。
CERDがカザフスタンに出した勧告(CERD/C/KAZ/CO/8-10. 4 July 2022)
ヘイト・スピーチを定めた刑法第174条の規定が過度に広範であり、民族マイノリティの表現の自由に不必要で不均衡な介入を招きかねない。刑法第174条を改正して、特にマイノリティ出身の人権活動家が予見される刑罰のために委縮しないようにするべきである。
インターネット上の民族マイノリティに対する人種主義ヘイト・スピーチと暴力が増えている。インターネット上の人種主義ヘイト・スピーチを監視、これと闘い、捜査し、訴追するための措置を強化すること。公的議論におけるヘイト・スピーチに対処するガイドラインを開発すること。ヘイト・スピーチの着け異を取り、次回報告すること。
条約第4条に従って、ヘイト・スピーチを禁止するため法改正すること。ヘイト・スピーチをする団体、及びすべてのプロパガンダを違法とし、禁止すること。ヘイト団体とその活動への参加を禁止し、処罰すること。