メキシコが人種差別撤廃委員会CERD第112会期に提出した報告書(CERD/C/MEX/22‐24. 8 June 2022)
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前回報告書について『ヘイト・スピーチ法研究要綱』461~462頁。
前々回報告書について『ヘイト・スピーチ法研究序説』625~627頁。
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欧州の「ノー・ヘイト・スピーチ運動」に学んで、差別されている集団に対するヘイト・スピーチに対抗するイニシアティヴを採択した。この枠組みで二〇一七~一八年、公衆や青年にヘイト・スピーチと闘うための情報を提供する取り組みをした。欧州評議会のマニュアル『We CAN――ヘイト・スピーチに対抗する措置』をスペイン語に翻訳し、人権、民主主義、差異の尊重、自由、平等という価値に基づく戦略とキャンペーンを発展させた。
移住者に関連するヘイト・スピーチを防止するため、差別予防国内委員会は排外主義から自由な情報のための公共計画を発展させた。メディアやソーシャルネットワークにおける移住者に関して、排外主義を確認し、撤廃する知識と手段を提供している。
メキシコ市差別防止委員会は、「先住民族に対する差別反対」「移住者の権利」「レイシズムを抑止する」「排外主義とレイシズム」「メキシコ市・反差別キャンペーン」「差異を超えて団結を」といったヘイト・スピーチと闘うキャンペーンを実施してきた。
二〇一九年一月三〇日の最高裁判決に従って、刑法第一四九条改正案を議会に提出しており、人種差別撤廃条約第四条に規定された差別行為を犯罪化しようとしている。
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人種差別撤廃委員会はメキシコに次のように勧告した(CERD/C/MEX/CO/22-24. 25 June 2024)。
委員会からの度重なる勧告と、二〇一九年の最高裁判決にもかかわらず、まだ条約第四条に合致した刑法改正が行われていない。先住民族やアフリカ系住民に対する差別文書が流布され、公的人物による人種憎悪発言が起きている。条約第四条は義務的性格を有するので、人種主義と人種差別を抑止する措置を取るべきである。刑法第一四九条改正案を採択して、努力を強化すること。刑法を条約第四条に合致するよう改正して、差別を防止し処罰する実効的措置を取ること。人種差別撤廃委員会の人種的ヘイト・スピーチと闘う一般的勧告三五号を考慮すること。