Thursday, March 11, 2010

グランサコネ通信2010-11

ちょっと帰国していましたが、10日からふたたびジュネーヴです。東京かくなったりくなったりですがジュネーヴも10日少々寒かったです

がユーラシアの上空往復している、「RAWA連帯する会」仲間4人RAWA(アフガニスタン女性革命協会)との連帯のためにとりわけ3月8日国際女性デーのためにカブール訪問をしていますカブールへはドバイ経由です。以前はイスラマバードから国境えたり、飛行機でしたがいまはドバイ経由便利だそうです。成田からドバイそしてカブールと結構スムーズにいけるようですもっともアフガニスタンですからきるかかりませんので、心配。

岸博幸『ネット帝国主義日本敗北--搾取されるカネと文化』(幻冬舎新書、2010年)

--元経済産業省竹中平蔵大臣補佐官だったそうでかなり抵抗がありましたが(笑)、グーグルアマゾンなど米国ネット企業莫大利益一人勝ちしているうえオバマ政権のバックアップをえて帝国主義的拡大政策っているのにして、欧州では抵抗まっているのに、日本では間違った政策がとられているとのことで、読んでみるとなるほど。初歩的知識がないため、著者うことにごもっとも連続です。特ネット社会化進行によってジャーナリズムと文化(具体例としては音楽産業)衰退めていることが指摘されジャーナリズムや音楽文化発展「国益」であり、業界自身戦略必須であるとともに、政府政策重要であるというはとてもわかりやすいものでした

芹沢一也荻上チキ編『日本思想という病--なぜこのきづまるのか?』(光文社、2010年)

--5人「気鋭研究者たちがかすこの失敗」本質」という惹句。「保守右翼・ナショナリズム」「中今無責任」「文系知識人受難」「思想史からの昭和史」「ニッポンの意識」5本、興味深戦前期昭和思想史論です。--もっとも、読めてすぐにきましたはじめにと目次わって、本文19ページからまります。19ページでは「保守空洞化」られ、最近状況「保守本質理解しないまま、単なる「反左翼」というアンチの論理られているにぎないとしています。20ページ1行目にも「自称保守短絡的アンチ左翼」ばかりが拡大することになりますとあります。保守なるアンチであってはいけない。保守にはもっと保守なりの思想論理があるというわけです。賛成です。納得できますそれでは、保守とは。「体系立てて」見るとして、20ページ8行目のようにかれています。「まず、保守思想についてですが、保守一番基礎のところは、人間個人的理性によって理想社会がつくれるというする批判です」。いや~~~~眼が点になりました。「保守=アンチ理想社会」だというのです。7行前までは「アンチ」はダメと断言していたのに(!!!)。いやもしかすると読者けて、意外展開にもっていくのかもってめましたが、違いました。20ページ13行目にはこれが保守「一番核心部分ですとあります。保守「反左翼」「アンチ左翼」ではいけないもっと・・・、のはずが、「保守=アンチ理想社会」って、そりゃないよね。コメントのしようがありません。失格。ついでにれておくと、最後のほうには、石橋湛山「日本植民地放棄対外への政治軍事的進出批判していましたとあります(322ページ5~6行)。湛山植民地放棄批判? 校正ミスですね「なぜこの国は行きづまるのか?」を身をもって再演しようとする素晴らしすぎる行きづまり本は直ちにフランクフルト空港のゴミ箱に(笑)。

小林正啓『こんな日弁連がした?』(平凡社新書、2010年)

--法曹人口問題、法曹養成問題、法曹一元制、法科大学院創設といった司法改革問題、「日弁連はなぜ敗北したのか国家および司法における権力闘争という問題意識見直したです。著者大阪弁護士ですが、当時はまったく関心がなく、司法改革問題について発言していなかったそうです。事後的資料追跡して検証するみです。私90年代はずっと雑誌「法民主主義」「司法をめぐる」欄執筆担当していましたし、本書にはいが続々10数人登場するのでおもしろくみました。当時はこうだとっていたがなるほど事後的検証としてはこういう視点もあるのだ。主役はもちろん矢口洪一中坊公平。80年代から90年代にかけて、私、法曹養成法曹一元について、日弁連めとする弁護士批判的でした。弁護士後継者養成自分たちでうという観点完全欠落していたからです最高裁におまかせでした。今は法科大学院ということで大学におまかせです(その制度設計のミスで混乱が続いていることは周知のことです)。いろんな理屈をつけていましたが、実全部ウソで、後継者養成責任つという発想がゼロだったのですこれで法曹一元などできるはずがありません。案定、法曹一元というだけのエサにつられて、中坊日弁連転落するしかなかった。私はこうていました。著者観点からじていますがこのりでは共通します。一番おもしろかったのは、法科大学院制度導入先導をしてその実績最高裁判事になった宮川光治元弁護士する批判です。宮川弁護士については、本書112~116、148~149、221~222ページ。「最高裁判所判事になる以前問題としてその成果総括する責任があると」「これらを後輩法曹法科大学院生あるいは弁解しなければ、無責任のそしりをれないだろう指摘しています。上めたこういう批判にはえないでしょう。法科大学院制度設計ミスでいったどれだけの前途有為若者被害ったのか。権力者はそんなことにはおいなしですが、著者のようにきちんと指摘しておくことが重要です

このブログの活字みにくいとのご連絡がありました。原因、国連欧州本部ジュネーヴの図書館のコンピュータを使ってブログにアップしているためかといます。日本語不便ですもっとも、東京にいる前回までのえたので、日本語みやすくなっているはずです今回からしばらくは、読みにくくなっているかもしれません。

Thursday, March 04, 2010

グランサコネ通信2010-10






















国連人権理事会の写真です。まずは会場となっているパレ・デ・ナシオン(国連欧州本部)正門を3枚。次が人権理事会の会場です。中は撮影禁止なので、天井を映しています。人の大きさで会場の広さが少し分かるかと思います。天井は昨年できたアートで環境・ゴミ問題を訴えているらしいのですが。写真をクリックすると大きくなります。

グランサコネ通信2010-09





























人種差別撤廃委員会の写真です。まずジュネーヴのレマン湖2枚。次がレマン湖畔のパレ・ウィルソン(人権高等弁務官事務所)2枚。次に日本からの「人種差別撤廃NGOネットワーク」によるブリーフィングで、人種差別撤廃委員がDVD映像を見ているところ。上映したのは12月4日の京都朝鮮学校襲撃事件の様子。最後の2枚が人種差別撤廃委員会の様子。

Monday, March 01, 2010

グランサコネ通信2010-08

2月24日・25日のCERDにおける日本政府報告書審査の一部は、日本でも報道されました。3月10日前後にはCERDの日本政府に対する勧告が出るはずです。

1)怒りの記者会見

25日のCERD審査終了時、人種差別撤廃NGOネットワークは在ジュネーヴ記者に記者会見を行いました。朝日、毎日、共同、時事など。すでにご紹介した審査の様子だけではわかりにくいかもしれませんが、日本政府代表、特に上田大使の発言を聞きながら、机をたたきたい、怒鳴りたい、卵投げたい、という思いがふつふつとわきあがっていたのが事実です。私は日本民族・日本国籍・男・とりあえず健康・高学歴・正社員ですが、その私でも、上田大使の無責任発言にはわなわなと震えていました。許せません。みな我慢して最後まで静かに聞いていたのですが、記者会見では、次々と日本政府批判が出ました。一つひとつ批判しているときりがないのですが、まずアイヌについては、先住民族と認めたことばかり強調しているが、その後の進展は見られない、作業部会などといっても記念公園と、生活実態調査だけに絞られていて、他のことは議題にもならない。UN権利宣言とは、まったくかけ離れている。非常に不満である。朝鮮学校の件は、日本政府は事実を知ろうともしない、問合せも調査もせずに、勝手に決め付けて差別している。嫌がらせについても、人権擁護局が調査などというが、実際は20年間まともな調査をしたことがない。部落については、上田大使の発言はとんでもない、1965年に逆戻りだ。志野課長がフォローしていたが、あの程度の認識だ。沖縄については、まったく許せない。学問的にはわからないと言いながら、結論だけは勝手に決め付けている。沖縄語は日本語の変形だなどとなぜいえるのか。ずっと沖縄の声に耳を傾けようとしないではないか。委員が協議しろと何度も言ったのに、それには答えなかった。移住者については、石原都知事のような差別発言問題に十分な配慮がない、など。

日本政府の答弁は、準備していた部分については原稿を読み上げているので、「腹が立っても、立場の相違、見解の相違」として理解できます。しかし、上田大使が自分の言葉で話した部分に、差別問題についての彼の認識、というより、まったくの無理解が顕在化しています。例えば、「部落民は私たちだ」。これは、「部落民は日本人であり、人種差別の問題ではない」と何度も繰り返したことに対して、CERD委員から何度も世系の解釈が間違っていると指摘されたあげくに、上田大使の口から飛び出した言葉です。この文脈で、「部落民は日本人であり、何の違いもない、部落民は私たちだ。同じだ」とだけ言うことは、「差別はない」といっているに等しいのです。「同じだから差別はない」というのは、「差異があるから差別がある」という固定観念に由来します。しかし、差別は、差異があるから生じるだけではありません。同じだから、あるいは同じことを強制するから、差別が生まれることもあるのです。「沖縄語は日本語の変形だ」にも呆れました。お前、聞いたことあるのかよ、です。「日本語は沖縄語の変形だ」とは絶対に言いません。この一点だけでも不当です。「わからない」と言ったすぐあとに「同じだ」と決め付ける無責任さ。そして、もっとひどかったのが、この期に及んで「先住民族の定義はない」と言い出したことです。めちゃくちゃです。日本政府は2001年のCERDで「先住民族の定義が決まっていないから、アイヌが先住民族か否か判断できない」と唱えて、強く批判されました。ILO条約やボゴ報告書を無視しています。2007年にUN先住民族権利宣言が採択されました。2008年、国会決議によりアイヌを先住民族と認めることになりました。であれば、何らかの定義を採用したはずです。にもかかわらず、今になって「定義はない」というのです。だったら、「アイヌを先住民族と判断できない」はずです。これほどいい加減な発言をする人物が「人権人道大使」なのです。いまさら驚くことではありません。こういうデタラメ人間が、権力をふるい、税金を掠め取ってきたのが、日本の歴史です。なんとも日本の先は暗い。主流日本人にとって暗いのならまだしも、差別される少数者にとっては深刻な話です。

それから、どうでもいいことですが、上田大使と志野課長は、「世系」を「せけい」と読んでいます。1995年に人種差別撤廃条約を批准した際に、日本政府は突如として「世系」という奇妙な訳語を持ち出しました。「門地」と訳すと部落が対象になるので、世系を持ち出してこれは部落とは関係ないと言うためでした。その時は、私の記憶では、外務官僚は「せいけい」と言っていました。2001年のCERD審議の時も「せいけい」だったはずです。いつのまにか「せけい」に変わったようです。引継ぎがなされていないのかも。官僚として、いかがなものか。(読み方は、どちらでも構いませんが。)

(こんなことばかり書いているので、揚げ足取りの好きなやつだ、と思われてしまいます。とはいえ、揚げ足取りは、議論の出発点でもあります。それに、向こうは権力をもって、18名の代表団が国民の税金を湯水のごとくふんだんに使って、やっているのです。せめて揚げ足取りでもするしかありません。)

25日夜、人種差別NGOネットワークは、小さなスペイン料理店で慰労会・打ち上げを行いました。その日のうちに1名がロンドンに帰り、26日には5人が成田または関西空港に向けて飛び立ちました。ごく短期間ですが、素敵な仲間と一緒に活動できたことは、私の勲章です。

26日は「通信06」と「07」に専念。

魔女の塔のあるSIONのLes Murettes, Robert Gilliard S. A.  チューリヒの2009国際ワイン博でGold Diplom。なんといってもValaisを代表。ぐっと低価格ですっきり。

2)世界遺産の屋根裏

快晴の週末はベルンでした。いつものようにパウル・クレー・センター(もう10回目くらいか)と、市内の「クレーへの道」散策です。センターでは、常設展の会場に、新規で「クレーの生涯」に関する展示--クレーが使った絵筆、パレットとか、クレーがチュニジアから出した絵葉書など、クレー家に残されていたゆかりの品々。今回の一番の目標は、クレーの指人形です。去年春に出版した『人道に対する罪』の冒頭で、クレーの「振り向く天使」について書きました。これは、第1に、ベンヤミンの「歴史の天使」の一面性を指摘すること。第2に、半世紀過ぎても、いつまでもベンヤミンの言葉を繰り返しているだけの日本の議論を批判すること。言い換えると、日本の戦争と植民地支配の歴史を考える時に、ベンヤミンを持ち出しても、不十分であること。第3に、クレー自身の世界の多様性を見ること。第4に、これがメインですが、クレーの世界を乗り越えるための手がかりをクレー自身からもらうこと。チュニジアでのクレーの開眼。バウハウスの移転の歴史。ハンスからフェリックスまでの歴史。私は、ここにこだわり続けています。そのためにベルンの歴史も再検証したいものです。だからベルンを歩き回ってきました。こういうのって、まさに「非-学問」というか、場合によっては「反-学問-的」ですが、これが私の流儀です。私はこれを続けるしか、ない。とはいえ、今回はあまり収穫はありませんでした。また、次回。「クレーへの道」も3度目になります。寒いので全部は歩けません。なにしろ全部歩くと6~7時間か。今回は4分の1くらい。たまたまネットで予約して泊まったホテルが、クレーの叔父さんのカフェだったお店(いまは違う店になっている)の隣でした。ラッキー。屋根裏部屋です。見晴らしがいいかと思ったら内庭側なので全然。でも、世界遺産の屋根裏と気づくと、妙に気分がよくなりました。屋根裏というと、狭い、暗い、汚い印象。あるいは、怪人とか。乱歩がベルンに来たら、と考えるとワクワク。でも、世界遺産の屋根裏はいたって快適でご機嫌。次回もここに泊まろう。

SiciliaのSole Bello, Nero D'avola, Sensi.2008. 太陽が一杯だあああっ! というワイン。いいけど、ちょっと荒い。(某映画とは関係ありません。) 

3)車中の読書

ベルンへの往復の車中。

屋良朝博『砂上の同盟--米軍再編が明かすウソ』(沖縄タイムス社、2009年)--タイムス社の論説委員による新書です。ハワイ、グアム、沖縄で米軍関係者に取材した内容。基地はなぜ沖縄に集中するのか。沖縄が地政学的に最適だというウソを次々と暴いています。海兵隊の思考や、米軍の将来戦略もわかって非常にタメになる本です。1月に那覇の書店に積んであったのを買ったのですが、本土でもぜひ売れて欲しいものです。

香山リカ『しがみつかない生き方--「ふつうの幸せ」を手に入れる10のルール』(幻冬舎新書、2009年)--「カツマーvs.カヤマー論争で話題のベストセラー」「2009年年間第1位!」だそうです。知りませんでした。この著者の本は10年以上前に1冊読みましたが、私とまったく関係ないことが分かったので、その後は読んでいません。今回はまとめ買いした中に入っていました。一方のカツマー(勝間)さんのほうも読んだことがありません。大々的な広告はよく見かけますが。論争の中味や詳しいことは知りませんが、私は「カヤマー派」のようです。本書の結論は「ふつうにがんばって、しがみつかずにこだわらずに自分のペースで生きていけば、誰でもそれなりに幸せを感じながら人生を送れる。それで十分、というよりそれ以外の何が必要であろうか」です。賛成です。もっとも、この結論を引き出すために、本書の中で何度も何度も「25年間、精神科医として、診察室で・・・」と繰り返している意味がわかりません。臨床実務を続けていることを強調したいのでしょうが、内容・結論と精神医学の間に何かの関係があるとは思えません。学問ですよ、ってどうしても言いたいのかな。他方のカツマーさんは、学問です、って言ってるのでしょうか。多分、違うはず。ともあれ、私は30年以上前から同じ結論に達していました。お金に嫌われて、しがみつく暇もなかったし(笑)。

富澤一誠『あの素晴らしい曲をもう一度--フォークからJポップまで』(新潮新書、2010年)--40年活躍してきた音楽評論家による、日本ポップス50年史です。60年代の「フォークが日本を揺さぶった」(関西フォーク、フォークル、岡林・・)、70年代の「ニューミュージックの黄金時代」(拓郎、陽水、ユーミン、矢沢、千春)、80年代の「歌謡曲の逆転勝ちとビートの浮上」(テクノ、ニューウエイブ、佐野元春・・)、90年代のJポップスの「メガヒット方程式の確立」(ドリカム、小室、宇多田・・)、2000年代の「音楽界の迷走」、と10年ごとに分けての記述で、わかりやすい本です。私は、フォークとJポップスは切れていると思っていました。副題から、本書では同じ流れに位置づけていると思ったので、本当かと思ったら、繋がっている面と断絶している面があるという理解のようです。読み捨てるための1冊でしたが、私の次に予定している本と関係があるので、捨てずに日本に持ち帰ることにしました。

グランサコネ通信2010-07

以下の記録は、現場でのメモと記憶に依拠していますが、正確さの保証はありません。CERDのおおよその雰囲気を伝えるものということでご了解願います。

CERDの日本政府報告書審査(2月25日・続き)

日本政府からの回答を受けて、再度、CERD委員からの質問があり、日本政府が回答しました。

ディアコヌ委員--日本報告書の文章に起因するが、多くのことが不明確だ。アイヌ以外の先住民族について検討を続けるべきだ。アイヌ代表とは協議しているように、部落や沖縄とも協議機関を設けないのか。それぞれの文化を研究調査しないのか。もし異なる言語や文化があれば、マイノリティであり、配慮が必要になる。長期にわたって居住してきたのなら先住民族であり、対策が必要である。代表と協議するべきである。日本政府の世系の説明には納得できない。これは条約の外ではなく、条約の中のどこかに位置する問題である。民族問題は条約のどこかに位置を見出すべきである。再検討して欲しい。もっとも重要な問題である。社会階層、カースト、そして差別が世系に関わる。学校教育にももっと注目すべきだ。税制差別はなぜなのか。高等教育へのアクセスに差別のないようにするべきだ。4条については、すべての人について処罰する一般刑法があることは承知している。しかし、差別による暴力、人種差別動機について、どの法律も考慮していない。差別動機を考慮することはどの国でも見られることだ。悪質性を量刑で加味するというが、そのための手がかりを法律に示す必要がある。

ラヒリ委員--CERDと日本政府の間の見解の相違が前回から詰まっていない。変化があったのは、パリ原則に従った国内人権機関を作りたいという姿勢だけである。2001年以来、条約の実施についてさほどの変化がない。マイノリティ集団に関する情報がない。中国人や朝鮮人は不利益を被っている状況がある。CERDの前回の勧告が実施されていない。江戸時代末に攘夷思想が台頭したが、攘夷が復活していないか。CERDの勧告を受け入れ、国内法を改正し、国際基準に合致することが重要であり、攘夷の精神ではなく、国際法という同じ側に立つ必要がある。矛盾はないはずである。次回の審査までに、差別撤廃のための実施メカニズムについて再検討して欲しい。

デグート委員--ディアコヌ委員に賛成である。アイヌ以外の集団の言語、文化、権利はどうか。人権高等弁務官事務所が、国連人権理事会における普遍的定期審査の結果をまとめている。人権理事会のディエン特別報告者の報告書もある。これらによれば、部落民は300万という。これだけのコミュニティが、パーリア不可触賎民とされた人々の子孫である。カースト制度は廃止されたかもしれないが、差別が残っている。世系については出身を考えるべきで、条約1条の世系の解釈についてはすでにCERDの一般的勧告29が出ている。沖縄も含めて、アイヌ以外の集団とも協議をするべきである。

プロスパー委員--ジェノサイド条約を批准していない。私は90年代末、クリントン政権のもとでICC規程の外交交渉にもかかわった。アメリカは加入しなかったが、日本は加入した。日本はICC加入には何の問題もなかったのに、ジェノサイド条約を批准できないという。逆ではないか。アメリカさえもジェノサイド条約は批准している。なぜこのようになるのか。ICCには補完性の原則がある。国内法をつくり、それに基づいて処罰できる。日本政府には一貫性がないのではないか。ICC加入によってジェノサイドを訴追できるのに、なぜジェノサイド条約を批准できないのか。

マルティネス委員--2011年は国連総会が定めたアフリカ出身者の国際年である。日本もこのプロセスにコミットしてほしい。前向きになるよう願っている。

カリザイ委員--アイヌについては前進があるが、7人のうち1名では対等条件で参加しているとは思えない。このパネルは対等にしなければならない。沖縄については、かつでエクアドルのホセ・マルティネス・ボゴの調査報告書がある。先住民族というものは「自己規定」である。同時に植民地以前の存在、近代国家以前の存在である。沖縄の独自の言語、文化を考慮し、UN先住民族権利宣言に賛成したのなら、日本語とまったく異なる言語を使っていることを考えるべきだ。年金問題のギャップも重要である。朝鮮人高齢者、及び朝鮮人障害者が年金の対象になっていない。法律のギャップである。一部の人たちはその大きさに気づかないかもしれないが、気づく人たちもいる。ギャップを埋める努力が必要だ。

アフトノモフ委員--(日本語を聞くことはあまりなかったので嬉しかった)--部落について部分的回答はあったが、戸籍をめぐって伝統的ステレオタイプを乗り越えるのは難しい。どの国も、父母や祖父母がどこに属していたか、そこから差別が生まれる。家系とか戸籍である。制度そのものは長年の間に確立したものなので、それを変えるように言っているわけではない。人々の権利実施にとって重要な問題である。個人情報保護法ができたと聞いているが、それがプラスに影響を及ぼしたのか。差別、偏見、ステレオタイプな見方について知りたい。意識的に差別するとは限らず、無意識に差別することもあるので、言っている。状況は変化したのか、前進はあったのか。

議長--先住民族はアイヌだけというが、日本人も先住民族ではないか。アイヌと同じ期間、日本に暮らしている。そしてアイヌは不利益を被ってきた。

上田大使--先住民族の国際法上の定義はない。どのように定義するというのか。オーストラリア、ニュージーランド、アメリカと日本は違う。外部から入ってきたのではない。日本人は、中国、南方、ロシアその他から、第一波、第二波、第三波と様々な人が入ってきて、すべてが融合して日本人になった。これに対してアイヌは明らかに独自の文化と歴史を持っている。日本とは違う。しかし、沖縄人は日本人である。フランスで、プロヴァンス人とイール・ド・フランス人は区別がつかないではないか。それと同じである。沖縄には豊かな独立の文化があるが、言語は広い意味で日本語の変形である。中国、台湾、朝鮮と比べれば、沖縄語は明らかに日本語である。学問的にはいろんな学説があるが、広く言えば沖縄人は日本人である。先住民族とは認識していない。もちろん時には異なる歴史があって、第二次大戦では沖縄の人は苦しんだ。しかし、沖縄の経済発展のために多大な支援をしている。生活向上に取り組んでいる。G8サミットを沖縄で開催した時には、世界の人々が美しい沖縄の文化を享受した。

外務省人権人道課長--協議や対話の重要性が指摘されたが、日本政府は報告書作成に当たって、2006年2月にHPで書面意見の提出を求めた。2006年3月には、NGOから非公開ヒアリングを受けた。同年6月と2007年8月、一般参加者との意見交換会を開催した。2006年3月には、16のNGOと政府7省庁が参加して、自由な意見交換を行った。2006年7月にはHPを通じての一般参加者60人、政治家7人が参加した。2007年8月には一般参加者40名、政府6省庁が参加した。

アイヌ政策審議室--推進会議は14名で、アイヌは5名である。14のうち2名は官房長官(?)など政治家である。2名を除くと12名のうち5名がアイヌである。過半数ではないが、アイヌが5名はいっている。実務作業部会は2つあるが、いずれも6人のうち3名がアイヌである。

厚生労働省--年金には国籍要件はない。外国人も対象となっている。1981年以前は国籍要件があったが、1982年に撤廃された。法改正の効力が将来に向かってのもののため、現在、84歳以上の外国人、48歳以上の外国人障害者は年金にはいっていない。彼らが苦労しているのは事実であるが、福祉的措置を今後とも検討したい。

人権人道課長--世系の文言解釈については必ずしも納得していただけていないが、日本政府は、同和について、世系にあたらないから報告しないということではない。CERDにおける質問に対して建設的対話を続けることは重要と考えている。ICERD前文の精神を踏まえて、いかなる差別もあってはならないと考えている。

法務省(?)--改正戸籍法の件だが、2007年改正前は、団体が不正アクセス、不正譲渡する事案が見られたので、不正請求の防止、個人情報保護のために、法改正を行った。第三者の戸籍謄本については取得要件を定め、本人確認を行い、違反には罰則を設けた。

厚生労働省--デグート委員から対策が不十分ではないかと指摘があった。同和等の人権啓発、相談、調査だが、これにとどまらない。CERDが事前に出した「質問リスト」にも回答したように、雇用については雇用主の認識が重要であり、企業への採用選考にあたっては応募者の人権を尊重し、差別を未然防止するよう公正に指導している。

法務省--犯行動機が人種差別である場合に、悪質性として考慮するというのは、刑事手続きにおいて適切に立証され、裁判官が量刑判断の要素の一つとして適切に考慮しているということである。

外務省人権人道課長--ICC規程加入とジェノサイド条約を批准していないことについては、申し訳ありませんがいまお答えできません。

上田大使--私の前任者は、雑賀大使だったが、彼女はその後、ICC判事に選任され、最近亡くなった。その後任にはやはり尾崎という女性が選任されている。この点に日本政府がICCに協力している姿勢が現れている。

リンドグレン委員--部落については疑念が残る。彼らはどういう存在なのか。日本語を話すし、宗教が違うわけでもない。どこが違うのか。

上田大使--何の違いもない。まったく違いはない。部落民は私たちだ。まったく同じだ。区別することはできない。「イール・ド・フランスから来た」といわない限りわからないのと同じだ。

人権人道課長--同和対策審が述べたように、日本社会の歴史において形成された身分的、社会的問題である。ただ、差別には多様性があり、明確な定義は困難だ。

ディアコヌ委員--日本は大国、先進国なので多くの前向きな進展を期待している。個人が差別から守られているのか、団体が差別から守られているのか。日本政府は、部落は違わないというが、部落の人からは差別があると聞いている。もっと明確にしたい。部落の代表者と協議することが必要だ。身体的特徴では区別できないことは多い。つぶさに見れば差異が見えてくることがある。かなりの集団に関心のある重要な問題だ。これは日本にとっても重要だ。日本の豊かな歴史と文化の一部であるはずだ。それが封建時代に発するのなら、カーストではないか。身分階層性の残滓ではないか。そうであれば対処しなければならない。マイノリティであり、存在していないとはいえない日本国民である。引き続き検討して欲しい。単に解釈の問題ではなく、もっと情報がほしい。

デグート委員--(私はフランス人だがプロヴァンス出身ではない)--いかなる国も国民に関わる多様な問題から逃れることはできない。開かれた直接の対話が重要である。協力と対話を通じて条約遵守の程度がどのくらいか、進展を把握していくべきである。

ソンベリ委員(日本政府報告書担当者のまとめの発言)--アイヌを先住民族と認めたのは第一歩である。プロセスの鍵を握るのは権利、参画、協議である。沖縄について幅広く協議して欲しい。その地位に関する記述にははいらなくても、代表との協議が重要である。教育について、特に公立学校について十分に議論できなかった。柔軟性のないカリキュラムがあるのではないか。制度の枠をこえて広げる必要がある。4条、氏名変更、難民、反差別法、14条、8条改正については議論が残された。ジェノサイド条約とICCの件も。CERDと日本政府に合意が見られたのは、差別をできる限りなくしていくことの重要性、教育の重要性、アイヌの地位について一定の方向性が示されたこと、人権機関の設置である。さらに検討が必要であり、勧告することになるかもしれないのは、まず部落である。世系の解釈はCERDが長年にわたって形成してきた解釈であり、(日本以外)ほとんどの国に受け入れられているものだ。人権教育に関して十分に多様性があるのか疑問である。4条の留保は本当に必要なのか。留保の範囲を狭くするか、留保を撤回することが必要である。反差別法はいまは必要ないというのも同じ問題である。氏名変更や戸籍についても意見がわかれた。ICERDは長い射程を持っている。国家機関だけでなく、私人も含めて社会的側面まで達する。法律を作るだけでなく実施が重要である。脆弱な集団、マイノリティにCERDが関心を持つのは抑圧の対象となるからである。多数者は保護を必要としないが、マイノリティには必要である。部落についてはもっと開かれた立場で考える必要がある。国際法を国内法に取り入れていくことは、主権にかかわるが、国際基準、国際規範を考えるべきである。多様性の尊重、平等、同質性というのは、同じ基準を適用するということだけではない。それで平等となるとは限らない。単純な規範の適用が平等ということではない。マイノリティは自己規定の問題でもある。憎悪言論は、さらに教育と救済が必要である。特に外国人と接触することの多い公務員に教育が必要である。日本政府は、次回は、3~4回まとめてではなく、間を短くして報告書を出して欲しい。それから差別は孤立して起こるのではない。グローバルにおきる。グローバルな課題はすべての国にかかわる。ニュアンスの違いはあるが、共通性がある。だからこそ国際基準による対策が必要である。反差別法がないことには、懸念を感じる。統計、情報、事実を確認するべきである。法制定をしない立場は必ずしも正当化できない。さらに検討するべきである。ぜひ誠実な対応をして欲しい。

上田大使--CERDに感謝。NGOにも感謝。NGOの貢献に感謝。議長に感謝。

以上で、2月24日・25日に人種差別撤廃委員会で行われた日本政府報告書審査が終了。

私は疲労困憊して、週末はバカンス。

グランサコネ通信2010-06

CERDの日本政府報告書審査(2月25日・前半)

以下の記録は、現場でのメモと記憶に依拠していますが、正確さの保証はありません。CERDのおおよその雰囲気を伝えるものということでご了解願います。

上田大使--昨日の質問に答えるために、徹夜で準備したスタッフもいる。分担して答えたい。

審議官・アイヌ総合政策室長--ダー委員、ディアコヌ委員から、UN先住民族権利宣言、ILO条約に沿った形で強化する必要や、アイヌ民族の参画の重要性の指摘があった。有識者懇談会、および国家が主体性を持って取り扱う政策室をつくった。2009年有識者懇談会、日本はUN宣言に賛成したので国際指針として受け止め、またICERD2条の特別措置を視野に入れながら検討中である。具体的政策を着実に進めるため、2009年12月、政策推進会議を開催した。カルザイ委員から、包括的政策への参加、中央政府の主体性について指摘があった。有識者懇談会は7名うち1名のアイヌ委員、具体的に今後の検討のなかで強い配慮をする。2009年12月、推進会議を設けた。イニシアティヴをとって総合的具体的に検討していく。14名のうち5名がアイヌ委員で、このCERDに傍聴に来ている北海道アイヌ協会の阿部ユポさんも委員である。国連人権小委員会委員だった横田洋三氏、自由権規約委員会委員だった安藤仁介氏もはいっている。3月に作業部会を開くが、主に、公園の整備、および生活実態調査を行う。調査は生活向上政策のためで、北海道に限らず、全国展開が必要である。アイヌの人々が、北海道以外のどこにどれだけ生活しているのか、生活向上施策の前提として、アイヌの生活実態を調査する。もちろん、プライヴァシー問題があるので、作業部会には、阿部さんも参加予定であるが、アイヌの人々の意見を聞きながら調査を行う予定である。アイヌ対策は、有識者の意見を聞きながら進める。アイヌの人々がアイデンティティに誇りをもって継承できるようにしたい。カルザイ委員、アフトノモフ委員から、アイデンティティに誇りを持っていない、アイヌからウタリに変えたのは、どういうことか指摘があった。日本社会の発展の結果、アイヌ文化に深刻な打撃を与えたことが、アイヌに対する差別をもたらし、アイデンティティに誇りをもちにくくしたが、アイヌの人々は誇りを持って生きようとしている。このことは極めて日本にとって意義深い。アイヌが自らをアイヌと誇りを持って言えるような状況をつくりたい。ウタリから北海道アイヌ協会へと変更された。差別と偏見のためアイヌを使わずウタリを使ってきたが、昨年、北海道アイヌ協会に変更した。自らをアイヌと言える環境が少しづつ整っているからである。ディアコヌ委員から、漁業へのアクセス制限について、および土地・資源の利用活用について指摘があった。アクセス制限というのは、内水面におけるサケの採捕は、水産資源の保護のためすべての国民に禁止されている。アイヌにだけ制限されているのではない。内水面におけるサケの採捕が、アイヌの伝統儀式にとって必要であることを考慮して、特別に許可することが一部の河川で行われている。土地利用についても有識者懇で議論している。伝統的生活空間の再生事業、国公有地で文化伝統継承に必要な植物資源の利用である。十分利用できない、支障となっているとの指摘があるので、意見に耳を傾け、国民の理解を得ながら、配慮していきたい。伝統的生活空間の再生、拡充を行うこと、国有地の自然素材の利用の調整の場を作ること、これらを段階的に実現したい。最後に、ソンベリ委員から、アイヌの権利強化に向けた立法措置、今後の政策の展開の中で、生活実態調査結果を踏まえつつ、法に位置づけるべき具体的政策も検討することが必要との指摘があった。立法措置については、懇談会報告書も言及している。政府としては報告書も踏まえながら検討していきたい。

外務省--アイヌ以外について独自の民族として認めるかにつき、ソンベリ委員など多くの質問があった。私どもは専門家でないので、民族性について断定的なことはいえない。ただ言えることは、長い歴史の中で特殊の文化や伝統を維持してきたことであるが、先住民族はアイヌ以外に存在しないと考える。ICERDの精神に沿って、沖縄に対して差別があるのか、あるとすればその対策をどうするかを考えたい。沖縄人も等しく日本国民であり、国民として権利があり、救済を受けることができる。自己の文化を享有し、言語を使用する権利は否定されない。継承されてきた文化資源の活用も認められる。世系の解釈は前回も今回も明確にしている、これを繰り返すのではなく、解釈について意見交換するよりも、同和に関して差別があるのか、あるとすれば対応されているのかを議論することが重要である。政府としては、憲法14条の法の下の平等の原則を最大限尊重して、いかなる差別もない社会を実現したい。

法務省大臣官房秘書課--アフトノモフ委員、ディアコヌ委員から、戸籍制度について質問があった。戸籍制度は、夫婦親子の関係を一覧的に把握できる合理的制度であり、編成の見直しは考えていない。戸籍へのアクセスについて、不正請求がなされる事案があるため、個人情報保護の観点で2008年に法改正を行い、請求者の本人確認などを定めた。ディアコヌ委員から、同和対策特別措置法は目的達成したのかと質問があった。特別措置法で対応してきた、しかし、国と地方公共団体において、30年以上の取り組みを継続した結果として、劣悪な生活環境は改善したし、差別意識も変化してきたので、同法の必要性が検討され、2002年に終了した。人権擁護機関は人権問題に適切に対処し、人権侵犯事件の調査、人権侵害の排除、再発防止のために取り組んでいる。インターネット上で差別助長書き込みがある場合は、情報削除をプロバイダに要請している。人権啓発活動もしている。

文部科学省--ソンベリ委員、アミール委員から、差別意識の払拭のための歴史教育の重要性の指摘があった。学習指導要領などでは、小中学校の社会科については、近隣諸国も含め世界の歴史と関連付けて教育するように定めている。高校では世界史を必修科目としている。日本史でも近隣諸国との関連を指導することとしている。地理においても近隣諸国研究がある。公民、現代社会、政治経済では人権に関する国際法について理解させることとしている。マルティネス委員から、外国人の子どもの教育についてご指摘があった。外国人の子どもも義務教育への就学を希望する場合、ICCPR3条、CRC2条を踏まえて、無償で受け入れている。外国人の子どもが外国人学校を希望すれば、そちらに通える。義務教育就学機会を逸することがないよう、就学ガイドブックを7カ国語で用意して教育委員会に配布している。帰国外国人受け入れ事業、バイリンガル相談員、母語のわかる指導員の配置、 円滑な受け入れと地域をあげての支援体制の整備をしている。ソンベリ委員から、ブラジル人学校、ペルー人学校について質問があった。現在、ブラジル学校が84、うちペルー学校が3校あり、うち53校がブラジル政府の認可を受けているので、ブラジルの上級学校への進学が可能である。比較的短期間のうちに帰国を予定している子ども、保護者のニーズに従って、ブラジルの教育課程に従っている。政府としては、授業料のための助成、健康診断の援助、ブラジル学校の改善に資するための調査研究もおこなっている。ソンベリ委員、ディアコヌ委員から、経済的支援、税制上の措置について、外国人学校間の差別があるとの指摘があった。学校教育法134条にもとづく各種学校として都道府県知事の認可を得ている外国人学校には、地方自治体からの助成があり、税制優遇もなされている。認可を受けている学校は一定の要件を満たせば、消費税が非課税となり、授業料も非課税である。学校法人の場合、所得税、法人税、住民税が非課税となる。さらなる優遇措置については、短期滞在者を多く受け入れている一部の学校に認められている。対象外の学校への差別とは考えていない。範囲の拡大には新たな政策目的、基準について検討が必要である。

厚生労働省--朝鮮人について、たくさん質問があった。まず労働条件、生活改善などである。ファン委員から、朝鮮人が教育、雇用で平等な扱いを受けていないと質問があった。在日朝鮮人を、公立学校に無償で受け入れているし、外国人学校に通うこともできる。雇用については、差別解消のため、事業主を指導啓発している。国内の事業に使用される労働者には、国籍に関係なく労働法が適用される。社会保障法は、適法に滞在する外国人には日本人と同じように適用される。

法務省人権擁護局--ディアコヌ委員、デグート委員、ソンベリ委員から、在日朝鮮人への嫌がらせについて指摘があった。嫌がらせについては、人権擁護機関において、啓発活動、「人権を尊重しよう」という年間を通しての啓発活動を行っている。人権相談所では、人権相談に応じて、事案を認知した場合は速やかに調査し、適切な措置をとっている。北朝鮮の核実験を契機に、嫌がらせが懸念される場合、啓発、相談、情報収集、侵犯事件など、迅速に調査し、人権擁護の取り組みを強化するよう指導している。最近では2009年4月、飛翔体発射の後に、このような指導を行なっている。

人権人道課長--ディアコヌ委員の質問だが、朝鮮人の子どもが独自の文化について学ぶ機会が担保されている。朝鮮学校は各種学校として認可されており、寄付金にかかる取り扱いを除き、非課税とされている。韓国学校については、韓国語、韓国文化の学習もしているが、学校教育法1条の認可もある。1条校は学習指導要領にのっとった教育をしている。朝鮮学校の多くのもについては各種学校として認可され、補助金を受けている。大学受験資格が東京の外国人学校に限られていて、地方は受験できないのは差別ではないかとの指摘があったが、そうではない。大学入学資格については、国籍の有無に関わらず高等学校卒業又はこれと同等以上の学力のある者となっている。東京に限るわけではなく、例えば静岡5件、愛知8件、三重では2件、認められた外国人学校がある。2003年9月、大学受験資格の弾力化を行い、高校修了者については外国政府により位置づけられている場合、あるいは国際的評価団体の認定を受けた学校修了者、および個別の入学資格審査をすることができると追加した。従って、すでに広く認められている。アフトノモフ委員から、高校無償化法案について、朝鮮学校を除外する旨の(中井)大臣発言が報道されているとの指摘があった。高校無償化法案は、1月に閣議決定がなされ、今国会に提出されたものである。指摘のあった記事の内容は承知しているが、法案では高等学校の課程に類するものを文部科学省できめるとしている。今後の国会審議を踏まえつつ適切に考慮していきたい。ソンベリ委員、アミル委員から、人権教育について質問があった。政府は幅広く人権教育啓発を行っている。2002年3月の基本計画に基づいて学校教育・社会教育において、人権意識を高める、差別意識の解消、充実強化をはかっている。憲法、教育基本法の精神にのっとり、児童生徒の発達段階に応じて人権教育を行っている。学校、地域が一体となった人権教育総合推進地域を指定し、指導方法の実践的研究をしている。指定学校を指定する先進的取り組みの普及に努めている。若い年代に対するプログラム、若い世代についても公立学校のカリキュラムに取り入れている。

法務省人権擁護局--外国人、アイヌ、同和について全国各地で講演会、シンポジウム、研修を実施している。マルティネス委員から、モニタリングメカニズムや統計について質問があった。外国人に対する差別を含む人権問題について、全国の法務局は、適切な助言を行い、関係機関の紹介をしている。人権侵害の疑いある場合、侵犯事件として調査する。人権侵害の排除、再発防止につとめている。2008年、新規の事件数は121件であり、うち差別待遇97、暴行虐待16である。ITについては、啓発活動年間強調計画をつくり、各地で指導実施、他人の名誉やプライバシーを侵害する悪質な事案については、発信者が判明すれば本人に啓発し、特定できない場合、削除をプロバイダに求めている。デグート委員、マルティネス委員、ソンベリ委員から、国内人権機関について指摘があった。政府としても、政府から独立の人権機関が必要と考えている。組織のあり方について問題点の整理検討を行っている。将来、創設しようとしている機関は、パリ原則に沿ったものを目指している。確定的なスケジュールはないが、できるだけ早期に法案を国会提出することを目指している。

外務省--人権条約批准数は数え方により違う。日本は、できるだけ批准している。たしかにICCPR、CRCにも一部留保している。留保は少ない方がいいが、厳密に精査して、留保するべきものは留保している。4条abについては、さまざまな場面におけるさまざまな非常に広い行為を含むので、たとえば思想の流布も対象となっているため、すべてにつき刑罰をもって対処するは、表現の自由、罪刑法定主義など憲法と抵触するおそれがあるので、留保を付すことにした。留保を撤回する考えはない。人種差別について処罰立法措置を検討することは、不当な抑制になるし、立法措置を検討しなければならないほど、日本に差別思想の流布や煽動といった状況があるとは考えない。外国人参政権については、永住者の地方自治体レベルの参政権に関して、1998年10月以来、15本の法案が国会に提出されてきた。政府としては、議論を見守っていきたい。

法務省--ソンベリ委員、ディアコヌ委員から、特別永住者について指摘があった。サンフランシスコ平和条約の締結により、朝鮮、台湾が日本国から分離したので、本人の意思に関わりなく日本国籍がなくなった。その後、特例法が定められ、その他の外国人と比べて退去強制事由が限定され、3年の再入国許可上限は4年となった。これは歴史的経緯を配慮した措置である。また、特別永住者は帰化できる。特別な地縁、血縁があれば、帰化条件は緩和されている。アフトノモフ委員から、帰化しない理由について質問があった。帰化する、しないということは、申請者の意志に基づくものであり、それぞれの方がどのようなメリット、デメリットを感じているかについてコメントすることはむずかしい。ソンベリ委員などから、帰化の際の氏名変更について質問があった。日本国籍を取得しようとする際に氏名変更を促す事実はない。氏名は帰化しようとする本人の意思で自身で決定できる。文字については、日本人についても制約があり、帰化後も平易に読み書きできる文字、広く日本社会に適応している文字であることが必要である。漢字しか使えないわけではない、ひらがな、かたかなも使える。ディアコヌ委員から、難民受けいれについて質問があった。国籍を問うことなく1951年難民条約に基づいて庇護を求める人は、条約に基づいて確実に認定している。配慮が必要な場合、在留資格の変更により在留させる。アジアのみ受け入れることに限定しているわけではない。難民認定手続きについては、情報提供しており、言語については認定申請書は24ヶ国語、案内パンフは14ヶ国語、それぞれ地方入国管理局に置いてあるし、インターネットでも入手できる。申請の際のインタヴュー実施については、希望する言語の通訳人をつけ、十分理解しているかどうか確認している。通訳人の選定、翻訳も迅速に国の負担で行っている。ソンベリ委員から、DVにさらされる移民女性について質問があった。配偶者としての活動6ヶ月、取り消し事由としていることは事実である。この取り消し事由は偽装結婚、虚偽の在留資格取得に対処することを目的としたものである。DV被害者が離婚調停中、正当な理由がある場合は、資格取り消し対象から除外している。資格取り消しをしようとする場合、定住者に別の在留資格に変更する機会を与えるよう配慮している。

外務省--反差別法の必要があるかについて、差別禁止法、4条の実施は、憲法14条の法の下の平等があり、特定の個人・団体であれば刑法の名誉毀損罪、信用毀損罪、業務妨害罪、脅迫罪、暴力行為等集団的脅迫罪、常習的脅迫罪により処罰が可能である。既存の法制度では効果的に抑制することができないほど、差別があるとは認識していないので、法律が必要とは考えていない。人種的動機については、犯行の動機の悪質性の問題であり、量刑事由となっているので、人種差別であることは裁判において量刑で適切に考慮される。ソンベリ委員から、私人間について指摘があった。たしかに、憲法14条は私人間に直接適用はされていないが、民法を適用する際に趣旨が考慮されている。基本的人権を侵害する差別は効力が否定されることがある。損害を与えた場合は不法行為責任があり、賠償をしなければならない。憲法は裁判を受ける権利を保証しているので、差別被害者は法律に基づいて裁判所に救済を求めることができる。これは私人間にも適切に適用されている。デグート委員から、家庭裁判所調停員に外国人がなれないことが指摘された。「公権力の行使」に当たる行為、重要な施策に関する決定、これらに参加するのは国民、日本国民であることが想定されている。裁判所の非常勤職員である調停員については、調停委員会を開き、公権力の行使に当たる行為を行うとともに、参加することを職務とする公務員に該当するので、日本国籍が必要である。

厚生労働省--ピーター委員から、条約の国内法としての効力につき質問があった。個人が権利侵害を訴える際に条約を援用することは可能であり、実例もある。8条の改正、費用について分担金は、通常費用でまかなうべきであり、条約上の義務は、締約国が負担するべきであるから、改正を受諾する予定はない。

外務省--ソンベリ委員、ディアコヌ委員から、ILO115号条約、雇用職業差別防止の批准が指摘された。我が国の法制度との関連につき精査が必要であり、今後も検討したい。憲法14条があり、関連労働法令でも差別に対する施策をしている。ILO169号条約は、刑罰に関する先住民の伝統や慣習にかかわり、罪刑法定主義、刑罰の公平性にふれるので、直ちに締結するには問題が多い。アパルトヘイト条約、スポーツ反アパルトヘイト条約を批准していない件だが、日本政府は従来より一貫してアパルトヘイトについて容認できないという立場をとっている。ICC規程加入にもかかわらずジェノサイド条約を批准していないが、国際社会全体の関心事であるもっと重大な犯罪を、根絶し、予防することが重要と考えている。ジェノサイド条約には、国内法により犯罪化する義務があり、行為が広範であるため、その必要性、国の法整備の内容につき慎重な検討が必要である。

(続く)