Thursday, June 02, 2016

詩人の朝鮮観を総覧し、真の友好と連帯を探る

洙『朝鮮半島と日本の詩人たち』(スペース伽耶)
『朝鮮新報』に2006年1月から3年間連載されたエッセイを基本にしつつ、全面的に改稿して、まとめた著書である。141人の詩人・歌人の詩・短歌を取り上げる。詩人のプロフィルを紹介しつつ、朝鮮に関連する詩を鑑賞する。350ページに及ぶ力作だ。
石川啄木、与謝野寛、小野有香、中浜哲に始まるが、「プロレタリア詩」としては、伊藤信吉、中野重治、佐多稲子、鹿地亘、槇村浩、西沢隆二、階戸義雄、小熊秀雄、小林園夫、古川賢一郎、郡山弘史、後藤郁子、新井徹、植村諦の14名の作品を論じている。若山牧水、三好達治、室生犀星、斉藤茂吉、北原白秋といった有名人。石川逸子、石牟礼道子、栗原貞子、中野鈴子、松田解子、大庭みな子、茨木のり子、秋野さち子、川津聖恵ら女性たちの秀作。中原中也の「朝鮮女」、森崎和江の「草の上の舞踏」、井上光晴の「黒い港」、大岡信の「慶州旅情」・・・こんなにも、と思うほどの作家・作品を知ることができる。一日一人、ゆっくり読むのが最適の著作だ。

中には朝鮮と朝鮮人に差別的にふるまった詩人も含まれるのに、著者は「すべてが朝鮮民族に連帯的で好意的な作品であることを強調しておきたい」と述べる。著者のやさしさが本書の煌きに豊かな色彩を加味している。