Sunday, November 25, 2018

フクシマ原発事故の真相に迫る闘いの書


海渡雄一『東電刑事裁判で明らかになったこと』(彩流社)


<3・11直後から「想定外の事故」と喧伝されたが、事実は正反対であり、大ウソだった。

津波計算から事故当時まで、会社の経営の最高責任者であったり原発の安全対策を担当していた元役員3名(勝俣恒久、武黒一郎、武藤栄)が被告人となっている刑事裁判が現在おこなわれている。

この状況を、市民にむけ、争点のポイントや現時点までに明らかになっていることをわかりやすくまとめた本書を読み、経緯をウォッチしていこう!>


東京地検は日産のゴーンを逮捕したが、そんな暇があれば、勝俣、武黒、武藤を逮捕すべきだ。ゴーンの行為が犯罪だとしても、逮捕容疑は「形式犯」にすぎない。被害があったとしても財産被害に過ぎない。東電の犯罪は、多くの人々の命を奪い、自殺に追い込み、暮らしを破壊した。どちらが深刻重大な犯罪なのか。

東京地検は、勝俣らを逮捕せず、起訴もせずに、巨悪を見逃した。巨悪のお仲間だからだろう。これに対して、海渡弁護士らが刑事告訴し、不起訴決定に対して検察審査会に持ち込み、ついに起訴強制となり、刑事裁判が続いている。本書は、現在進行中の刑事法廷で明らかになった新証拠を紹介・分析し、「予見・回避可能だった原発事故はなぜ起きたか」を解明している。

原発事故を回避することは容易であった。東電内部でもそのための議論が行われていた。これを覆したのは、ひたすらおカネのためだった。その結果、膨大な土地に人間が住めなくなり、人々の暮らしが奪われた。政府事故調や国会事故調の後、閉ざされようとした真相解明の努力が続けられている。その成果が本書である。