Wednesday, July 29, 2020

不遇と失敗から「万能人」へ

池上英洋『レオナルド・ダ・ヴィンチ』(ちくまプリマ―新書、2020年)

今年1月、代官山ヒルサイドテラスで開催された「レオナルド・ダ・ヴィンチ没後500 年記念「夢の実現」展」の責任者の一般向け新書である。

池上は同じ出版元から本格的な研究書『レオナルド・ダ・ヴィンチ 生涯と芸術のすべて』(筑摩書房、2019年)を出している。

その上で、一般向けに執筆したのが本書だが、研究書を圧縮した訳ではない。池上はこれまでに本格的な専門研究書を出す一方で、数多くの新書本も出してきた。新書執筆のツボを心得ているので、その都度、読者を引き込むネタを用意している。

<名画をのこし、近代の夢を描いたその転載はコンプレックスまみれの青年だった>

<「未完成作」ばかりの芸術家>

500年の年月を経て、世界のだれもが認めるルネサンスの転載が、「未完成だらけ、計画倒ればかりの芸術家」であったこと。

「波乱に富んだ一生をおくった、重層的で複雑で、不運と失敗だらけの『偉大なる普通の人』」

「時には自信なさげに悩み、かと思えばわざと大きな事を言って虚勢を張ってみたりします。収入が少ないと不満を言い、部下が働かないとぼやき、わからず屋が多いと嘆きます。生い立ちからしてハンデをかかえていたので、それを跳ね返そうともがいています。母親に愛された記憶がわずかなためでしょう、一生母性への憧れを持ち続け、それを画面の上に吐露してきます。おまけに幼い頃に十分な教育を受けていないためにコンプレックスを抱えていたし、学問の探求を始めてからは実際にそのせいで苦労もします。」

そんなレオナルドが、なぜ、どのようにして、あの傑作群を残す天才芸術家として生きたのか。

その謎を本書は一つひとつ解き明かす。読者は池上の手のひらの上で、そうだったのか、と呟きながら頁をめくることになる。

レオナルドはコーヒーも紅茶も呑んだことがない。トマトを食べたことがない。こういう一口知識も、レオナルドの収入、買い物リストから判明する。

もちろんエピソードだけではない。レオナルドの科学的精神がいかなる成果を生み出したのか。いかなる技法で作品制作に挑んだのか。読者の意欲をそそる新書本である。


Sunday, July 26, 2020

ヘイト・クライム禁止法(173)カタール


カタール政府がCERDに提出した報告書(CERD/C/QAT/17-21. 22 November 2017
人種主義や差別的慣行の燃料となる抜け道に対処するために法律を制定している。1979年の印刷出版法47条は社会に不和をもたらし、新興、人種、宗教的争いを誘発するような出版を禁止し、6か月以下の掲示し悦収容又は3000QR以下の罰金としている。1992年の情報文化大臣決定は、文書、音声放送、映像放送が人種・民族集団の尊厳を損なう方法で表現したものの回覧、放送、展示又は出版を精査するよう命じている。
2004年の刑法256条(2010年改正)は、宗教を侮辱すること、神や預言者を中傷すること、宗教行事に用いられる建物を損壊することを犯罪とし、7年以下の刑事施設収容としている。
刑法263条は、イスラム教又はシャリア法の下で保護された宗教を侮辱する製品、商品、印刷物、又は、図像、スローガン、言葉、シンボル、サインその他を府君が物を、販売、回覧、取得、所有又は宣伝することを1年以下の刑事施設収容及び/又は1000QRの罰金とする。コンピュータを利用し、プログラム等を配布した者も同じ刑罰である。
カタール法はイスラム教とシャリア法の下で保護された宗教、すなわちキリスト教徒ユダヤ教徒の間で差別をしていない。
2014年のサイバー犯罪法8条は、社会原則と価値を侵害した者、個人の私生活や家族生活の不可侵を侵害するニュース、図像、音声、ビデオを出版した者、又は他人を中傷又は侮辱するためにインターネットその他の情報技術を利用した者に、3年以下の刑事施設収容及び/又は1万QR以下の罰金とする。
CERDがカタール政府に出した勧告(CERD/C/QAT/CO/17-21.2January 2019
人種差別事件が国内裁判所でどのように処理されたか、告発の数と累計、訴追と判決の情報、被害者の年齢、ジェンダー、国民的出身、被害者に与えられた補償について報告すること。一般的勧告35を想起し、刑法の諸規定を条約第4条に完全に合致させること。次回報告書において、条約4条に従ってヘイト・クライム/スピーチ法の適用について詳細な情報を提供すること。

Saturday, July 25, 2020

ヘイト・クライム禁止法(172)ノルウェー


ノルウェー政府がCERDに提出した報告書(CERD/C/NOR/23-24. 2 November 2017
2005年1月に改正刑法が施行された。刑法185条は憎悪表現に対する禁止としてのヘイト・スピーチ規定であるが、禁止の範囲を、私的領域や準公共圏に拡張した。表現が公然となされたことを要件としない。故意または重大な不注意(重過失、gross negligence)が基準である。
ヘイト・スピーチ規制において、重大な不注意(gross negligence)を基準にする例は初めて見た。より詳細な調査が必要だ。
反民族差別法は民族、国民的出身、世系、皮膚の色、言語、宗教又は信念に基づく差別を禁止する。2017年の反民族差別法は包括的な法律で、2018年1月施行である。
法律に人種を明記するか否か検討したが、人種概念を採用しない結論になった。人種主義と闘うために重要なことは、人々が人種概念に込めている観念から距離を置くことである。法律に人種概念を明記すると、人種概念に根拠を与えてしまいかねない。人々が人種について有する意見や観念に基づく差別はいずれも民族差別に当たるので、規制に空白はない。
2015年、政府はヘイト・スピーチに反対する政治宣言を出し、2016年11月「ヘイト・スピーチと闘う戦略」を策定した。対話と意識喚起のための23の措置を定める。CERD勧告に従って、政府は不寛容や憎悪煽動に反対する声明を出した。民主社会ではメディアのもっとも重要な責任は、当局から独立し、批判的に検証することである。政府からのプレスの独立を守ることは、カギとなる政策目標である。メディアの責任倫理について幅広い政治的コンセンサスがある。政府はメディアの独立を犯さないようにしている。
ヘイト・クライム/スピーチは警察管区の優先事項である。ヘイト・クライム事件は全国的にも地域的にも優先事項である。ヘイト・クライムは「ヘイト・スピーチと闘う戦略」に従って全国統一基準にのっとって記録、捜査、訴追する。性的指向、ジェンダー・アイデンティティ、ジェンダー表明に関する差別も扱っている。
2015年、刑法185条について、警察が記録したヘイト・スピーチ事案は86件である。2016年は189件。2017年以後は訴追事案の統計をとる。
「ヘイト・スピーチと闘う戦略」は、知識、司法、メディア、子ども、青年、集会、職場について23の措置を定める。インターネットやソーシャルメディア上野ヘイト・クライム/スピーチにも対処する。2014年以来、政府は「ストップ・オンラインのヘイト・スピーチ」キャンペーンを行っている。これはEUの「ノー・ヘイト・スピーチ運動」による。幅広い諸団体の協力を得ている。「ヘイト・スピーチと闘う青年ネットワーク」を準備している。
メディアの法的責任について、開かれた健全な対話を促進する方向で考えており、メディア責任評議会が調査を続けている。文化省はメディア責任委員会報告書を受けて、刑法269条について検討している。
2016年2月、オスロ大学に「過激主義(極右、ヘイト・クライム、政治暴力)調査センター」を設立し、極右とヘイト・クライムの原因と結果について研究を始めた。警察、自治体、市民社会、ジャーナリスト、教育機関と情報交換を進める。
2016年、「ホロコーストと宗教的マイノリティ研究センター」は、インターネットやソーシャルメディアを含むメディアにおける反ユダヤ主義について調査した。
警察大学は、ヘイト・クライムを予防し捜査する教育研究プログラムを作成した。ヘイト・クライム/スピーチと闘うための手段となる。
刑罰加重事由を定める刑法77条のうち、同条(i)によると、宗教、人生観、皮膚の色、国民的又は民族的出身、同性愛志向に基づいて犯罪が行われた場合、刑罰を加重する。
ヘイト・クラムは刑法185条により、行為又は重大な不注意で公然と差別表現又は憎悪表現を行った場合を含むが、これには人に対する脅迫又は中傷、迫害を含む。
ヘイト・クライムは2014年には223件だったが、2015年は347件と増加した。増加原因は、オスロ地区警察がヘイト・クライムに焦点を当てた警察活動に力を入れたことが挙げられる。警察庁はヘイト・クライムに関する年次報告書を作成している。22017年から訴追事件も統計に取る。警察庁は警察がヘイト・クライムを記録するためのガイドを準備する。ヘイト・クライムの定義・記録手続きは全国一律とする。
CERDがノルウェーに出した勧告(CERD/C/NOR/CO/23-24.2January 2019
人権法に条約を組み入れること。平等・反差別法の定義を条約第一条に合致させること。ヘイト・クライムについて、予防措置を取り、被害者に救済を提供すること。ヘイト・クライム増加原因を調査し、移住者のヘイト・クライム増加の不安に対処すること。オスロだけでなく全国でヘイト・クライム対策班を設置すること。検察官、裁判官、法執行官にヘイト・クライムの特定、記録、訴追の知識を共有するため研修を行うこと。さまざまなコミュニティの間でヘイト・クライム予防のためステレオ対応に対処するキャンペーンを行うこと。
ヘイト・スピーチについて、政治家など公的人物によるオンラインを含む人種主義的ヘイト・スピーチを非難し、距離を置き、関連する法律を完全に適用し、被害を受けやすい集団を保護する措置をとること。「ヘイト・スピーチと闘う戦略」のすべての措置を履行し、全警察がヘイト・クライム/スピーチ捜査を優先事項とし、警察、検察、裁判所の連携をとること。人種主義ヘイト・スピーチやヘイト・クライムを特定、記録、捜査し、政治家やメディアの責任者を訴追し、制裁を科すこと。ヘイト・クライム/スピーチの統計の収集・記録を標準化すること。ソーシャルメディア上のヘイト・スピーチについて政治家のためのガイドラインを策定すること。
人種主義団体やネオナチ団体がソーシャルメディアやデモに登場していることに留意する。条約第4条(b)に従って、人種憎悪を助長・煽動する団体を違法とし、禁止すると宣言していないことに留意する。一般的勧告35に従って、条約第4条と表現の自由が合致することを強調する。法律を改正して、人種憎悪を助長・煽動する団体を禁止すること。

Thursday, July 23, 2020

黒川賭け麻雀問題・検察審査会審査申立書公開


周知のように、7月10日、東京地検は、賭け麻雀の黒川弘義・元検事長を不起訴処分にしました。処分決定通知書には「不起訴」と書いてあるだけで、その理由すら示されていません。
7月21日、私たち121人は東京検察審査会に、不起訴処分を不服として審査請求を行いました。
朝日新聞、産経新聞、赤旗はもとより、共同通信の配信により全国の各紙にも報道された通りです。
検察刷新とやらの御用会議がつくられていますが、検察の焼け太りになる恐れがあります。
黒川と検察と安倍政権の破廉恥な犯罪を、市民の手で追及していきましょう。
審査申立書本文を下記に紹介します。

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  別紙
                審  査  申  立  の  理  由
 被疑者黒川弘務に対する今次不起訴処分は、公訴提起について検察官に付託された裁量権の公正な行使を甚だしく誤り、これを濫用した違法の処分であり、到底認められてはならないものである。以下に、これについて述べる。

1 今次処分について、告発人に対しては単に「不起訴」と通知されたのみであって、理由の内容は全く秘匿されている。ましてや、不起訴に際して地方検察庁庁内に於いて作成されているはずの「不起訴裁定書」ないしその内容は全く秘匿されている。
  このため、告発人としては、不起訴の理由については、東京地方検察庁が新聞記者に対して広報したとされる内容を、新聞等によって窺うほかない。これは、告発人の立場を甚だしく軽視したものであって、極めて遺憾である。
    告訴・告発、また検察審査会の制度の趣旨に鑑みれば、告訴・告発人が不起訴の理由を正確に知り、検察の重要な事務運営に対して主権者としての意見を述べることが出来るようにすべきである。
  したがって、不起訴裁定の内容が正確に告知さるべきである。

2 上記のとおりであるのであるが、不適切な検察行政・事務運営の結果、告発人らは報道によってしか不起訴の理由を知り得ないので、やむをえずこれに基づいて、本件審査申立の理由を述べる。
  今次不起訴処分(起訴猶予)の内容は、以下のとおりとされている。
 ① 被疑者の行為に常習性は認められない。
 ② 掛金も、少額であって、世間で一般的に行われている程度で、違法性がない。
 ③ すでに社会的制裁も受けている。

  しかしこれらは、全く失当であり誤りである。
   以下、これを論ずる。

  「常習性がない」との評価について
  ア 常習性とは、確立した判例・刑法学の通説によれば、「当該犯罪が偶発的・機会的に行われたのではなく、当該非違行為に対する人格の一定の親和性が存在しており、継続的反復への主観的性向の存在が認められ、その発露として犯行が行われたと評価される場合」とされている。
 それゆえ、「多数回反復された場合はもちろんであるが、ただ一回であっても、そのような親和性・主観的性向の存在が認められる場合には、常習性が認められる」とされている。
 そして、「多数回の継続・反復」は、それ自体客観的に「常習」というべきであり、かつ主観的にもそこに強い親和性・主観的性向の存在が推認されると解されている。
 そのような事態は、当該犯行が偶発的・機会的に行われたなどと評価出来ないことが明白である。

   イ 本件の場合、この10年間以上に亘って被疑者が、赤坂・新橋などに所在する麻雀屋で、賭け麻雀に興じてきたことが明らかにされているところ最近では、本件産経新聞記者宅に於いて、頻回に行われて来たことが明らかになっている。

ウ 最近の、被疑者・新聞記者らとの麻雀に於いては、現金が賭けられたことが本人によっても自認されている。
  しかして、現金が賭けられたのは最近の勝負にであって、過去には賭けられていなかったなどと考える事は出来ない。そのようなことはありえない。最近になって特に現金が賭けられ始めたなどという事情は存在していないし、そのようなことは格別に考えられないから、過去に於いても現金が賭けられていたことが明らかである。
  更に被疑者は毎回、産経新聞記者の手配するクシーで帰宅するという便宜を受けていたのであるが(これも違法である)、このタクシーの運転手が過去に、「今日は10万円負けた」などと被疑者がぼやいているのを聞いたという事実もある。
   エ 常習犯の成立には、上記のとおり、多数回・継続・反復という要素は必ずしも必要ないとされているのであるが、本件の場合、これらの要件も充足されていることが明らかである。このような客観的事実に反映され露呈された主観性、被疑者の人格の性向は自ずと明らかであろう。

   オ また、本件犯行は1ヶ月ほどの間に、本件告発に於いて具体的に取上げた行為だけでも、4回にも及んでいるのであって、このような被疑者の姿は、賭け麻雀の継続的実施に向けた強い意欲の存在していたことが明白である。

カ  とりわけ、本件犯行期間は、新型コロナウィルス罹患症の大規模な流行の事態が発生し、政府が「緊急事態宣言」を発し、国民に対して「密閉・密集・密接」のいわゆる「三密」の回避が呼掛けられ、そのために、相当数の事業・業務が自粛要請され、経営者や労働者など関係国民が塗炭の苦しみに喘いでいるという状況であった(すでに、この自粛政策によって、倒産企業は3万件以上に達している、またこれに伴って失業の問題も深刻化している)。
  被疑者は、検察のNO.2という高級国家公務員として、国民に対してそのような自粛を要請している政府行政機関の、重要な一翼にある者であったから、率先垂範して三密回避についてしかるべき行動をとるべき責務があったことは、論ずるまでもなく明らかであった者である。
 しかるに、それにもかかわらず、高級国家公務員としての任務に違背しても、まさに行政府が強調する<不要不急>の典型であり、<三密>そのものである賭博麻雀を行わずにはいられなかったというその心性は、もはや依存症の域にも達していたとさえいうべきである。そこには、賭博麻雀行為に対する強い心的親和性・傾向性の存在が明白である。

   キ 以上、長年の習癖、極く短期間に於ける、職業的・地位からする責務にも敢えて違背した継続的反復という客観面、および、賭博麻雀に向けた依存症的・中毒的心性という主観面、両々相俟って、本件に於ける常習性の存在は、明白である。
 ② 「違法性が低い」との評価について
     今回の処分の理由として、掛け金がさして大きくなかったことが理由とされている。しかし、これは大きな誤りである。
  イ そもそも、一定の賭けが行われた場合にも、それがその場での「一時的な娯楽に供する」ものであった場合には、賭博罪には当たらないと解されているが、しかし、「現金を賭けた場合には、それ自体で『一時的娯楽』などとは解されない」とされており、賭博罪を成立させるものと解釈運用されていることが、決して看過されてはならない。
  ウ また、今回「掛け率がさして高いものではなかった」ことが、違法性判断に於ける重要要素とされている。
 しかし、これも誤りである。仮に、箇々の勝負の掛け率が低かったとしても(これについての被疑者の供述は、全く信用できないが)、この勝負が多数回反復されれば、全体として動く金額は巨大なものになることは当然である。動いた掛け金については、1回の勝負についてのみ孤立的に評価すべきではない。当該勝負の全体が行われた一座において、やりとりされた金額の総額で評価さるべきである。なぜなら、同一人が連続的に行っている一箇の行為であるからである。
 (なお、被疑者が「今日は10万円負けた」とぼやいていた旨がタクシー運転手によって聞かれた事実も、軽視されるべきではない。たしかに、この時の賭博行為の年月日は特定できず、告発対象ではないのであるが、しかし、本件告発にかかる行為は、このような一連の行為の中の一定の行為であることが、決して看過さるべきではない。)
   エ なお、改めて言うまでもないことであるが、最終的な得喪金額の多寡等は一切無関係である。行為者間に大きな技𠈓の差がなければ、結果は自ずと平準化してゆくことになるかもしれないが、しかしだからといって、常習賭博行為の違法性が軽減されるものでないことは当然である。大きな金額が動いた事実は、参加者個人の最終的損得の結果如何には、全く関係がないからである。動く金額それ自体に着目し、その全体によって違法性は判断されなければならない。
     ところで本件被疑者は、折から安倍内閣がごり押ししようとしていた検察官定年延長問題のまさに当事者そのものであったから、本件は世の非常な注目を集めた。
 しかるに、早々となされた本件不起訴処分によって、早くも
    「テンパーであれば賭博罪にならないんだ」
    「この程度の掛金であれば、いくら金を賭けても麻雀賭博はいいんだ」
    「検察庁がそう言っているのだから」
等々の一般的認識が、社会的に醸成され拡大しつつるという現実が存する。
 当然であろう。日本中が注目している、検察官高官の犯罪について、検察庁が不起訴処分にしたのであるから、検察庁自身が一定の規範・基準を世の中に明示したものと、社会は受取ったのである。
 検察官の起訴運用にはいわゆる一般予防的な政策的見地から、しばしば「一罰百戒」ということがなされる。検察の行動は、社会に一定の規範・規準を示すという効果が存在しているのである。本件にあってもしかりである。
 しかしが、本件はまさに「一罰百戒」とは全く逆であって、「一免百許」ともいうべき処分であったのである。このために、賭博・常習賭博について、これを非規範化・非犯罪化するという社会的効果を生んでいるのである。
 本件の違法性評価には、このような事実をも直視すべきである。
 検察庁は、これでよいのであろうか。

  「すでに社会的制裁を受けている」との評価について
   ア 被疑者のような高い地位・権限・責任を負っていた高級国家公務員が、その責務に違背していたのであるから、強い社会的非難を浴びるのは当然のことである。
    しかしこれは、その地位に伴う、一箇の自動的・反射的当然の効果というべきであって、被疑者が個人として具体的に制裁を社会的に受けたというものではない。ここが決して混同されてはならない。
イ そもそも、「国家公務員が賭け麻雀を行った場合、その金額如何にかかわらず懲戒処分相当」というのが、人事院から示されている規範である。
 (東京高等検察庁は、非違行為等防止対策地域委員会を組織し、綱紀の厳正に努めているとなされている。この委員会は「品位と誇りを胸に」との冊子を作成し、検事・全職員に配布し、その実を挙げようとしている。
 三訂版29頁には、「第6 懲戒処分」が記載されている。それによると、
   国民全体の奉仕者たるにふさわしくない飛行のあった場合
には、懲戒処分がなされる旨明記されており、そのうえで、人事院から示されている「懲戒処分の指針」が掲載されている(30頁以下)。
 これによれば、「3 公務外非行」の欄に該当する本件にあっては、常習賭博の場合は、「イ 停職」相当であり、「ア 賭博」に該当する場合は「減給ないし戒告」
とされている。現に、「告発状」(18頁)にも記載したとおり、つい最近である
2017年に、自衛官9名が停職処分を受けている・・・掛金レートは本件に同じ
「点ピン」であった。)
ウ この人事院の指針・過去の運用事例からするならば、当然本件は悪質なケースとして、「停職」が相当であった。本件に於いても考慮されるべき「社会的制裁」ということがあるとするならば、まさにこのことであるのである。
 しかるに、安倍政府は例によって「任命責任を痛感」などと通り一遍の見解を述べつつ、他方で法務省に手を回し、懲戒処分ではない単なる検察内部限りでの「訓告」処分をなさしめて、更に本人に辞職させ、懲戒処分を封じてしまった。むしろ、社会的制裁を封じてしまったのである。
 そして5000万円近い退職金も、間髪を容れず支払われてしまった。
エ こうして、本件では、これ以上のお咎めがなければ、弁護士資格にも影響はないから、いずれほとぼりが醒めた時点での、弁護士登録、開業もありうるとされている。
オ これらのどこが一体、「大きな社会的制裁も受けている」であろうか。
  全くふざけた話である。

 ④ 本件不起訴処分の強い政治性
   ア 以上、東京地検が挙げたとされている「理由」には、全く合理性がない。 本件については、完全に常習賭博罪が成立することは明白である。
    起訴され、厳しく刑事責任が追及さるべき事案であることが明白である。
  イ すなわち、検察は、社会の成員に対しては、厳しく規範遵守を求めて、規範からの逸脱者に対しては、「秋霜烈日」などと標榜しながら、刑事処分を発動し、場合によってはその社会的生命を絶つほどの強い権力を行使してきた。
        賭博罪・常習賭博罪自体も、まさにそのように運用され適用されてきた。
  ウ 東京高等検察庁検事長とは、そのような日本の検察組織にあって、検事総長に次ぐ地位にある最高権力者である。このような存在である被疑者には、強い職業倫理・規範意識を自ら固持しこれを実践すべきことが要求されるものであることは、改めて言うまでもなく当然である。
     ところで、本被疑者は検察官在任中は、何かと政府関係者の犯罪のもみ消しに功があったとみなされていたのであり、「政権の守護神」などとも評されいた。
 上記「ウ」の如き地位にあった検事である被疑者が、前記のとおりの公務員が強い綱紀意識をもって行動しなければならない時期・状況にあって、これに反する事が明らかな、かかる破廉恥犯罪を犯していた(本件処分は、「起訴猶予」であるから、犯罪行為であったことそれ自体は東京地方検察庁も認めているのである)などというのは、全く許しがたい事態である。
 オ  しかるに東京地方検察庁は、早々と本件を不起訴にしてしまった。その理由の不合理性は前記のとおりである。
        なお若干繰返すが、このことの社会的受止め(賭博・常習賭博の違法性に関する合法観)について、指摘した。
    カ   ところで、この規範・規準問題について、本件によって、検察庁として、「賭博罪・常習賭博罪についての解釈運用に関し、従前のそれを改め、非犯罪化の方向に転じたのか」というならば、「そのようなことは全くない」となされることは、間違いがないであろう。
 であれば、そのようにも解され、また世人はそのように解そうとしている状況に於いてなお、東京地方検察庁は、なにゆえに敢えて、早々と不起訴処分にしたのか。
  それは明らかである。本件被疑者の政府(特に安倍内閣)との密着した関係、及びこれに由来する不明朗な検察官・法務官僚としての行動は、国民の間に強い不信感を巻き起こした。しかし政府は、本件被疑者の処遇をも配慮したうえでの、検察庁法改定まで強行しようとした。このため国民の検察不信も沸騰した。これを憂慮した有力な検察OBから声明が出されるに至ったことは周知のところである。
 このような経過を経て、検察庁では、検事総長が交代し、林真琴検事総長態勢に移行した。
 新検事総長は「検察の公正」「国民の信頼の回復」を強調している。
 今回の処分は、そのような検察態勢の再編と、時期を同じくして行われた。
 その意図は明らかである。すなわち、黒川問題を早く決着させることにより、これを旧体制に発した不祥事であり、過去のものとしてしまい、検察の一種の禊ぎとして、行われたものである。検察の新体制は、黒川問題が刑事事件として公開法廷で、その実態が明らかにされることを忌避しようとしたのである。そのための不起訴であった。明らかな政治的不起訴である。
    ク  しかし、そのような隠蔽策によって、検察への信頼感が回復されるものでないことは、多言を要しない。
     国民の信頼感の真の回復は、かつての身内の検事であろうと(過去の身分となってなってしまったことは、安易に退職を認めてしまった、法務省の大きな過誤である)、<罪は罪として厳正に真実を究明し、それに相応しい処罰を裁判所に求める>こと、それによってこそ、初めて達成されるのであることは改めて言うまでもない。
 このように、本人に甘い処遇をなしつつ(5000万円近い退職金など、国民は絶対に納得出来るものではない)、真実の隠蔽に隠蔽を重ねて、検察の自己保身が図られている現状は、「検察の威信と信頼の回復」など到底不可能とするものである。
 検察への国民の信頼の回復は、まず、本件について厳正に検察の責務が果たされること、それが、まず第一の最初の出発点である。
ケ  麻生大臣は、「日本人の民度の高さ」を強調しているようであるが、しかし、「民度」が民主主義社会としての成熟の度合いを言うのであるならば、本件被疑者のような高官を戴き、更に、当該高官の刑事犯罪に対して曖昧至極の処分が急行され、検察自身によって本件処分の如き寛恕がなされて真実に蓋がされ、主権者たる国民には全てが隠蔽されてしまうような社会の「民度」が高いなどとは到底言えないことは多言を要しない。

3 結 語 
     以上、本件不起訴処分は、刑法の標準的解釈・裁判所の判例・国家公務員の綱紀に関する実務等々、あらゆる面からして甚だしい誤謬である。
 本件被疑者の検察官としてのあり方は、政府の守護神などと評されたところの、政治的検察そのものであったが、しかし今又、東京地方検察庁は本件の如き違法の処分を行って、現政府に忖度し、その防波堤となろうとしているというほかなく、主権者として怒りに堪えない。
厳正な処分のなされることを強く求める。

                                            以

Sunday, July 12, 2020

ヘイト・クライム禁止法(171)イラク



イラク政府がCERDに提出した報告書(CERD/C/IRQ/22-25. 22November2017
2016年10月6日、議会で宗教的民族的マイノリティ集団の権利保護法案の審議が行われた。法案は多民族多信仰でイラクの遺産や芸術を保護し、平等の市民権、多文化理解の原則を促進し、平和構築を図る。
2016年の法律第32号は、バース党を人種主義的でテロ的な政党として禁止した。イラクにおける民主主義システムは政治的多元主義と平穏な権力移行に基礎を有する。憲法7条は、人種主義やテロリズムを扇動、準備、称賛、助長、正当化する団体を禁止する法律制定を定める。
刑法372条は、信仰共同体の信念を公然と攻撃し、宗教活動を妨害した者は、3年以下の刑事施設収容及び300ディナールの罰金とする。
CERDがイラクに出した勧告(CERD/C/IRQ/CO/22-25. 11January 2019
政治かなどの公的人物によってヘイト・スピーチがなされているとの報告がある。ヘイト・クライムやヘイト・スピーチの禁止が十分でない。政治家など公的人物によるヘイト・スピーチを非難し、効果的に捜査し、訴追、処罰するよう勧告する。条約第4条の要請に合致した法律を制定するよう勧告する。

Wednesday, July 08, 2020

ヘイト・クライム禁止法(170)ホンデュラス


ホンデュラス政府がCERDに提出した報告書(CERD/C/HND/6-8. 20 December 2017

憲法の諸規定に従って、差別と憎悪の扇動を明確に犯罪としている。憲法第60条は、性別、人種、階級その他の人間の尊厳に偏見となる動機に基づくいかなる形態の差別も、法律によって処罰されるとする。この規定は、先住民族やアフリカ系人民に対する差別を撤廃するための刑法、補充法、公共政策を形成する。

刑法第321条は、個人の権利または集団の権利の行使を恣意的かつ違法に妨害、制限、廃止又は防止した者、性別、ジェンダー、年齢、性的志向、ジェンダー・アイデンティティ、党は又は政治的見解、市民的地位、先住民族又はアフリカ系集団のメンバーであること、言語、国籍、宗教、家族的背景、財政状態又は社会的地位、障害又は異なる能力、健康状態、身体的外観又はその他の人間の尊厳に偏見となる動機を理由として公共サービスの提供を拒否した者は、3年以上5年以下の刑事施設収容及び3万レンピラ以上5万レンピラ以下の罰金とする。

刑法第27条27項は、犯罪実行が被害者の性別、ジェンダー、宗教、国民的出身、先住民族又はアフリカ系住民集団のメンバーであること、性的志向又はジェンダー・アイデンティティ、年齢、市民的地位又は障害、若しくはイデオロギー又は政治的見解に基づいた憎悪の動機による場合を刑罰加重事由とする。

前回のCERD勧告を受けて、権利の行使に関連する差別犯罪について刑法改正草案が準備されている。改正草案211条は、公共サービスの提供の差別的拒否を、1年以上3年以下の刑事施設収容、100日以上200日以下の日数罰金としている。同じ理由で公務就任資格を認めないことは1年以上3年以下の刑事施設収容である。

改正草案212条は、商業活動に対する公共サービスの提供の拒否を、1年以上3年以下の刑事施設収容とする。

改正草案213条は、差別の扇動を1年以上3年以下の刑事施設収容、100日以上500日以下の日数罰金としている。上記と同じ理由で、直接かつ公然と、又はマスメディアを通じて、ある集団、団体、企業、又はこれらの団体に属する特定個人に対して、差別や暴力を扇動した者。上記と同じ理由で、行為やグラフィックを含む表現によって、個人の尊厳を侵害した者。

改正草案295条は労働権に対する犯罪を定める。公共であれ民間であれ、上記と同じ理由で、雇用における差別を行ったものは6月以上1年以下の刑事施設収容である。

2015~17年に民族集団・文化遺産特別検事局が受け取った申立は、32件であり、捜査中である。先住民族の土地収用に関する事案は刑事手続きが進行中である。2016年12月から2017年4月の間にさらに6件の申立があり、1件は訴訟進行中、その他の5件は捜査中である。

CERDがホンデュラス政府に行った勧告(CERD/C/HND/CO/6-8. 14 January 2019

先住民族及びアフリカ系住民が構造的差別にさらされているので、不平等の溝を埋めること。「先住民族とアフリカ系住民のための人種主義と人種差別に対する公共政策」を実効的に履行する事。構造的差別の解消のため積極的是正措置を講じること。先住民族とアフリカ系住民に対するステレオタイプと偏見が存在するので、人種差別の否定的影響をなくすための教育キャンペーンを行い、ステレオタイプや偏見と闘うこと。人種主義ヘイト・スピーチと闘う一般的勧告第35号に注意を喚起する。

Tuesday, July 07, 2020

野蛮の言説はいかに形成されたか


中村隆之『野蛮の言説――差別と排除の精神史』(春陽堂)

https://www.shunyodo.co.jp/shopdetail/000000000692/

<人類の長い歴史の中には、他者を蔑視し排除する言葉が常に存在していた。コロンブスの新大陸発見、ダーウィンの進化論、ナチ・ドイツによるホロコースト、そして現代日本における差別意識まで、古今東西の著作を紐解き、文明と野蛮の対立を生む人間の精神史を追う。人間が人間を「野蛮な存在」とみなす言葉がなぜ生み出されてしまうのか、全15回の講義から考える。>



著者はカリブ海フランス語文学研究者。同地域の文学を概観した小冊子『フランス語圏カリブ海文学小史』(風響社、2011年)、マルティニック島とグアドループ島という「小さな場所」から世界を考える地域研究書『カリブ- 世界論』(人文書院、2013 年)がある。



本書は、近代西欧諸国が大航海時代以後の、世界の植民地化により、自らを<文明>とし、他者を<野蛮>と名指す分類法を「学問」によって形成し、実践していった過程を跡付ける。植民地主義の言語・法・宗教による支配が、啓蒙思想に流れ込み、科学の名において人種差別が正当化され、優生思想、社会ダーウィニズム、人類学の圧政が成立する。植民地主義からホロコーストへはほんの一歩だ。

ナチスドイツのホロコーストだけを非難しても問題は解決しない。近代西欧社会が生み出した差別と排除の科学と技術が世界を覆っているのだから。同じことは近現代日本史においても見事に再演される。

このことを、コンラッドの『闇の奥』を手掛かりに、『闇の奥』でさえ触れていないベルギー領コンゴにおける大虐殺をも検証することを通じて、「奴隷制をはじめとする西洋によつ蛮行は、西洋画その外部を『発見』し、植民地支配をつうじて世界を一体化させていく過程で、繰り返されてきた」と見る。<野蛮の言説>がなぜ、どのようにして生み出されるのかの追跡である。

私もこういう本が書きたかったが、それだけの力量はない。かつて、前田朗『ジェノサイド論』(青木書店、2002年)を出し、次いで徐勝・前田朗編『文明と野蛮を超えて』(かもがわ出版、2011年)、最近では木村朗・前田朗編『ヘイト・クライムと植民地主義』(三一書房、2018年)を出した。これらをベースに、<野蛮の言説>を問う作業を始めたかったが、本書のおかげで、自分でやる必要はなくなった。

著者・中村は、学生向けの講義というスタイルで、関連書籍を重点的にピックアップしながら、「差別と排除の精神史」を概説する。通史として十分とは言えないが、これまで類書はなかったと思う。意欲的な試みである。カリブ海フランス語文学研究者らしく、西欧中心主義を撃つ姿勢は揺るがない。

Sunday, July 05, 2020

ヘイト・クライム禁止法(169) アルバニア


アルバニア政府がCERDに提出した報告書(CERD/C/ALB/9-12. 15 November 2017

刑法には差別精神の助長を処罰する諸規定がある。

刑法50条(j)は人種差別による犯罪実行を刑罰加重事由とする。刑法84条(a)はコンピュータシステムを通じて民族、国民、人種又は宗教ゆえに殺人又は重大障害の脅迫を行うことは罰金又は3年以下の刑事施設収容とする。刑法119条(a)はコンピュータシステムを通じて人種主義又は排外主義の内容を持つ記事を公然と配布することは罰金又は2年以下の刑事施設収容とする。刑法119条(b)はコンピュータシステムを通じて民族、国民、人種又は宗教ゆえに人に対して行為に公然と侮辱することは罰金又は2年以下の刑事施設収容とする。刑法253条は市民の平等の侵害であり、出自、性別、健康状態、宗教、政治、労働組合活動を理由として、又は特定の民族、国民、人種又は宗教に属するがゆえに、国家又は公務員が差別とおこなえば、罰金又は5年以下の刑事施設収容とする。刑法265条は人種、民族、宗教又は性的志向ゆえに憎悪又は争闘を助長し、いかなる形式であれそうした文書を流布することは、2年以上10年以下の刑事施設収容とする。刑法266条は、2013年の法改正によるものだが、住民の一部に対する憎悪、侮辱又は中傷、暴力又は恣意的行為を呼びかけて公共の平穏を危険にさらすことは2年以上8年以下の刑事施設収容とする。

これらの法律の実施は国家警察法による。2013年11月25日、警察は「民族を理由に尊厳に悪影響を与えることの予防と根絶」と題する「警告」を発した。警察倫理綱領、警察業務基準・技術規則が制定されている。警察業務の遂行に際して人権侵害、差別、不当な暴力の生じないように定めている。

CERDはアルバニアに次のような勧告をした(CERD/C/ALB/CO/9-12. 2 January 2019

裁判において補償を求めることができるようにするために新たに「反差別パッケージ」が準備されているが、政治家によるヘイト・スピーチが続いているとの報告がある。ヘイト・スピーチ事案における挙証責任の転換に関心がある。一般的勧告第35号を想起し、公共の議論における、特に国家及び地方レベルの政治家によるヘイト・スピーチや差別発言を強く非難し、それらから距離を置くこと。政治家によるヘイト・スピーチ、特に選挙運動におけるヘイト・スピーチを効果的に捜査、訴追し、適切に処罰すること。

人種主義団体や団体への参加を犯罪とする法律がない。条約4条に関して、人種主義団体の捜査や訴追に関する情報がない。反差別法の枠組みを条約第4条に完全に合致させること。人種差別を助長・煽動する団体を違法と宣言し、禁止すること。人種差別に関する国内裁判所における決定に関する情報を報告すること。

Saturday, July 04, 2020

学習会:『世界がここを忘れても』を読む


学習会:『世界がここを忘れても』を読む


講師:清末愛砂さん(室蘭工業大学大学院准教授)



『世界がここを忘れても』(寿郎社)

https://jurousha.official.ec/items/27133481



7月31日(金)開場17:45、開会18:00~閉会20:40

会場:東京しごとセンターセミナー室(5階)

千代田区飯田橋3丁目103

JR総武線「飯田橋駅東口」より徒歩7

地下鉄大江戸線・有楽町線・南北線「飯田橋駅A2出口」より徒歩7

メトロ東西線「飯田橋駅A5出口」より徒歩3



*参加費(資料代含む):500円

*先着20名様に限らせていただきます。

参加を希望される方は、maeda@zokei.ac.jp宛にご連絡ください。

*新型コロナ禍が悪化した場合は中止になることがあります。



『世界がここを忘れても』(寿郎社)

〈本の内容〉 9.11後の英米軍などの侵攻、ターリバーン政権の崩壊と混乱、そしてISの台頭……

激動のなか、それでも国内で暮らし、 あるいは難民キャンプで生活せざるをえなくなったアフガニスタンの人々。 その暮らしぶりは日本ではほとんど知られていません。 とりわけ家父長制のもとで虐げられてきた女性たちの日常については まったくと言っていいほど知られていないのではないでしょうか。

本書は、アフガニスタン女性革命協会・RAWAを支援している 「RAWAと連帯する会」共同代表の著者が 現地での活動を通して知り合ったアフガン女性たちから聞いた話をファルザーナという大学生のストーリーに再構成したものです。



文 清末愛砂(きよすえ・あいさ) 1972年生まれ。室蘭工業大学大学院工学研究科准教授。専門は、憲法学、家族法、アフガニスタンのジェンダーに基づく暴力。主な著書に『平和とジェンダー正義を求めて̶̶アフガニスタンに希望の灯火を』(共編著、耕文社、2019 年)、『自衛隊の変貌と平和憲法̶̶脱専守防衛化の実態』(共編著、現代人文社、2019年)、他多数。「RAWAと連帯する会」共同代表。

絵 久保田桂子(くぼた・けいこ) 長野県生まれ。武蔵野美術大学映像学科卒業。ドキュメンタリー映画「記憶の中のシベリア」 (2016年)制作、同名書籍を出版。2013年、友人の誘いでアフガニスタン・パキスタンのスタディツアーに映像記録のため同行した。



主催:平和力フォーラム

連絡先:070-2307-1071E-mail:maeda@zokei.ac.jp

共催:室蘭工業大学大学院清末愛砂研究室

共催:RAWAと連帯する会

http://rawajp.org/