アルバニア政府がCERDに提出した報告書(CERD/C/ALB/9-12. 15 November 2017)
刑法には差別精神の助長を処罰する諸規定がある。
刑法50条(j)は人種差別による犯罪実行を刑罰加重事由とする。刑法84条(a)はコンピュータシステムを通じて民族、国民、人種又は宗教ゆえに殺人又は重大障害の脅迫を行うことは罰金又は3年以下の刑事施設収容とする。刑法119条(a)はコンピュータシステムを通じて人種主義又は排外主義の内容を持つ記事を公然と配布することは罰金又は2年以下の刑事施設収容とする。刑法119条(b)はコンピュータシステムを通じて民族、国民、人種又は宗教ゆえに人に対して行為に公然と侮辱することは罰金又は2年以下の刑事施設収容とする。刑法253条は市民の平等の侵害であり、出自、性別、健康状態、宗教、政治、労働組合活動を理由として、又は特定の民族、国民、人種又は宗教に属するがゆえに、国家又は公務員が差別とおこなえば、罰金又は5年以下の刑事施設収容とする。刑法265条は人種、民族、宗教又は性的志向ゆえに憎悪又は争闘を助長し、いかなる形式であれそうした文書を流布することは、2年以上10年以下の刑事施設収容とする。刑法266条は、2013年の法改正によるものだが、住民の一部に対する憎悪、侮辱又は中傷、暴力又は恣意的行為を呼びかけて公共の平穏を危険にさらすことは2年以上8年以下の刑事施設収容とする。
これらの法律の実施は国家警察法による。2013年11月25日、警察は「民族を理由に尊厳に悪影響を与えることの予防と根絶」と題する「警告」を発した。警察倫理綱領、警察業務基準・技術規則が制定されている。警察業務の遂行に際して人権侵害、差別、不当な暴力の生じないように定めている。
CERDはアルバニアに次のような勧告をした(CERD/C/ALB/CO/9-12. 2 January 2019)
裁判において補償を求めることができるようにするために新たに「反差別パッケージ」が準備されているが、政治家によるヘイト・スピーチが続いているとの報告がある。ヘイト・スピーチ事案における挙証責任の転換に関心がある。一般的勧告第35号を想起し、公共の議論における、特に国家及び地方レベルの政治家によるヘイト・スピーチや差別発言を強く非難し、それらから距離を置くこと。政治家によるヘイト・スピーチ、特に選挙運動におけるヘイト・スピーチを効果的に捜査、訴追し、適切に処罰すること。
人種主義団体や団体への参加を犯罪とする法律がない。条約4条に関して、人種主義団体の捜査や訴追に関する情報がない。反差別法の枠組みを条約第4条に完全に合致させること。人種差別を助長・煽動する団体を違法と宣言し、禁止すること。人種差別に関する国内裁判所における決定に関する情報を報告すること。