Saturday, March 05, 2011

グランサコネ通信2011-01

グランサコネ通信2011-01

2月19日

1)人種差別撤廃委員会78会期へ

花粉症と雑務から逃げてジュネーヴに来ています。パレ・ウィルソン(人権高等弁務官事務所)で人種差別撤廃委員会78会期が開かれています。来週には国連人権理事会16会期が始まります。

18日に、パレ・デ・ナシオン(国連欧州本部)で年間登録入構証の切り替えをしました。午前中はパレ・デ・ナシオンの様子を確認し、午後はジュネーヴ市内をお散歩しました。ジュネーヴは寒いですが、おおむね東京と同じような気候です。よく晴れていて、レマン湖の噴水がとてもきれいです。モンブランは惜しくも見えませんでした。雨が降るとぐっと寒くなりますが、18日の昼間は快晴で結構暖かでした。

去年は、2月24・25日に人種差別撤廃委員会76会期で日本政府報告書の審査がありました。早いものであれから一年です。朝鮮学校の高校無償化からの除外問題が起きて、人種差別撤廃委員会が、これは差別であると指摘したのが、一年前の2月24日の審議でした(日本政府に対する委員会勧告は3月11日)。しかし、日本政府は差別をやめようとしません。しかも、菅政権は、勝手に基準を変え、政治問題を教育に持ち込んで、しつように差別する姿勢を明確にしています。

2)鄭大世『ザイニチ魂! 三つのルーツを感じて生きる』(NHK出版新書、2011)

成田空港内の書店で新書をたくさん買いました。その中の1冊。ワールドカップの朝鮮代表となるまでの思い、日本での闘い、そしてこれからを語った本です。在日の元・政治学者にして芸能人による「大世よ、国境なんて踏みつぶせ! ゴールに在日魂を!」という推薦文がついています。大世は、いまはドイツ・ブンデスリーガのボーフム所属で、当面の目標は1部に這い上がること、次はイングランド・プレミアリーグにいき、「アジアの大世」から「世界の大世」になり、そして次のワールドカップ朝鮮代表として「1勝以上する」ことだそうです。

昨年12月、私は「2010年の排外主義と人種差別」という論文で「対向するメッセージ」と書きました。

朝鮮学校側のメッセージは、(1)大世がワールドカップで活躍、(2)大阪朝鮮学校は花園で活躍、(3)ボクシングでは世界チャンピオン、(4)朝鮮大学校卒業生が司法試験合格。

これに対して、日本側のメッセージは、(1)高校無償化からの除外、(2)在特会による襲撃事件、です。菅政権は日本社会に向かって「朝鮮人はどんどん差別しても構わない」という「差別のライセンス」をいまでも毎日発行しています。

3)長妻昭『招かれざる大臣 政と官の新ルール』(朝日新書、2011)

その菅政権の最初の厚生労働大臣であった著者による、鳩山政権および菅政権の367日の厚生労働大臣としての経験をまとめた本です。2009年の政権交代の象徴的存在でもあった著者が、野党時代にどこまで闘い、大臣としていかなる闘いを続けたのかを丁寧に書いています。政治家と官僚が対立するのではなく、政治家が官僚を使いこなすために、どのような改革が必要かを考え、そのためにできることは任期中にやったので、これから結果が現れるはずだという主張です。はて、そうなるの? エピソードはおもしろい。

4)三井環『ある検事の告発』(双葉新書、2010)

大阪高検時代に検察の裏ガネ問題を告発しようとして逮捕され、監獄体験までしながら、闘い続ける著者の1冊。すでに数冊出ていますが。裏ガネ問題の経過、裁判の様子、元は私憤に発したが義憤であり闘い続けなければならないことが示されています。当時の検事総長以下、検察首脳全員の犯罪を告発していましたが、なにしろ大阪ですから、昨年の大阪地検特捜部にも言及があります。著者を引き摺り下ろした犯罪者の一人が、あの「最高検のストーリーには乗らない」の大坪弘道氏です。ですから著者は、いまでも大坪氏を許していませんが、大坪氏が真実を話して検察の腐敗と闘うのならば全面支援すると、呼びかけています。大坪氏の弁護人には、ヤメ検ではなく、同窓生たちがついたそうですから裁判はおもしろくなるかもしれません。ともに検察から地に堕ちた著者・三井氏も大坪氏も「白門」の先輩ですが、私に言わせれば、一時期の問題でも大阪の問題でもなく、いまの検察問題は、皮も身も腐ったリンゴと芯まで腐ったリンゴの内輪喧嘩。