Wednesday, March 23, 2011

グランサコネ通信2011-14

グランサコネ通信2011-14

3月19日

1)17日の国連人権理事会は、普遍的定期審査UPRでした。対象はブルガリア、ホンデュラス、レバノン、マーシャル諸島、クロアチア、ジャマイカの6カ国。

レバノンはやはり注目を集めました。パレスチナ難民やイスラエルによる戦争など。作業部会での各国の発言でも、NGOの発言でも、例えば、Nahr el Baredキャンプの難民の移動の自由や労働権を認めよとか、国籍取得を認めよといった指摘が続きました。レバノン政府としては、それはレバノンの問題ではなく、イスラエルのせいで押付けられた問題なので、勧告には否定的でした。死刑廃止や死刑廃止条約批准も勧告されていますが、レバノン政府は拒否しています。

上記6カ国に対して数々の勧告が出されています。レバノンには120ほど、クロアチアには116、マーシャル諸島には少なくて38。各国は、受けた勧告についてそれぞれの対応を回答します。レバノンを例にすると、(1)メキシコやトルコが障害者権利条約を批准するように勧告したのに対して、レバノンは受け入れる方向と回答。

(2)ベルギーが拷問等の行為予防措置を勧告したのに対して、レバノンはそれは実施したと回答。

(3)ベルギーが1951年の難民条約と選択議定書を批准するように勧告したのに対して、レバノンは受け入れませんでした。

(4)イスラエルが安保理事会決議1559を即座に実施するように勧告しましたが、レバノンは拒否しました。理由は、第1に、それはUPRのテーマではないこと、第2に、勧告を出したのがイスラエルであること、です。

このように多くの勧告に対して、受け入れた、受け入れる、検討中、受け入れない、と回答をしていくのです。

前回書いたように、私たちは、日本政府が審査を受けた時に日本政府がどのように回答したかに焦点を当てました。しかし、それに続いて、他の各国の審査の時に日本政府がどのような発言をしたのか、どのような勧告をしたのかもチェックする必要があります。日本政府が人権理事会で、世界の人権状況の改善のために前向きの発言をしているのかどうか。また、もしも日本政府が他国に対してとてもいい発言をしていたら、私たちは「それを日本国内でも実施せよ」と主張できます。

というわけで、上記6各国について見ると、日本政府は、ホンデュラスに対して2つの勧告を出しました。ホンデュラスに対しては129の勧告が出ていて、そのうち2つが日本です。1つは「女性と子どもを暴力から保護する現在の措置を続け、促進すること。警察の訓練と、ジェンダー・ユニットを発展させること」を勧告。もう1つは「人身売買被害者への支援を強化すること」を勧告です。どちらも、ホンデュラスは「すでにやっていることなので受け入れます」と表明。これだけ、です。本当にこれだけなのです、日本政府は。

他の5カ国に対して、日本政府は1つも勧告を出していません。1つも発言していません。

マーシャル諸島は、かつて日本の領土にした場所です。日系人がいますし、日系人大統領もいた国です。かつての宗主国として、責任ある発言をするべきところですが。

16日の6カ国に対して、日本はたった1つの勧告。17日の6カ国に対して2つの勧告。合計12カ国に対して1000以上の勧告が出ていますが、日本が出したのは全部で3つ。驚くべき少なさです。つまりほとんど沈黙しているのです。なんと素晴らしい謙虚さ。

2)立入勝義『ソーシャルメディア革命--「ソーシャル」の波が「マス」を飲み込む日』(DISCOVER、2011年)

在米のブログ作家による北米最新事情+日本の今後。フェイスブック、ツイッター、ブログなどソーシャルメディアを活用したマーケティングの本、つまり、実践的ビジネス本。ブログでお金儲けしたい人のための本です。こういう本はあまり読まないのですが、あまりに無知でも困るので一応読んでみました。

ソーシャルメディア、モキュメンタリー、グーグルゾン、クラウドサービス、ソーシャルノミクス・・・・・・とカタカナ語がえんえんと続き、読むのに一苦労。話が分からないところがいくつもありました。それでもおおまかな流れは理解できたような気が。日本は果たしてこのまま「ガラパゴス」の道を歩むのか。それとも世界的傾向(=アメリカ化)できるのかが主題となっていて、小見出しは「ガラパゴスは大陸の夢を見るか?」。日本がなぜ立ち遅れているのかの分析は結構理解しやすかったです。

著者によると、「日本でソーシャルメディアが立ち上がらない10の理由」は、既存の大手メディアの影響力が強すぎる、人権意識が低い、政治とジャーナリズムへの関心度が低い、個性を認めない「出る杭を打つ」文化の存在、自営・独立をする人が少ない、非営利団体に対する支援と理解の欠如、語学力の低さと国際意識の欠如、PV神話が根深い、先駆者としての匿名掲示板の存在、芸能ネタへの偏り、だそうです。

アメリカ人の人権意識が高くて、日本人の人権意識が低い、というのは正確とは思えません。アメリカ人は、「人権意識」ではなく「自分の権利意識」だけが高いのであって、他者の人権など全く省みない点では世界有数ですから。

とはいえ、本書の文脈で、日本人の人権意識や社会性の弱さが指摘されているのは、それなりに納得できます。だから2ちゃんねるには適合しても、ソーシャルメディアには向かないというのは、信じたくはありませんが。