Wednesday, July 13, 2011

紹介:デュラン・れい子『フランス流節電の暮らし』





――「エコでもケチでもない、大震災後(これから)の生活術」――







ベストセラー処女作『一度も植民地になったことがない日本』に続いて『地震がくるといいながら高層ビルを建てる日本』『意外に日本人だけ知らない日本史』で、長年の欧州生活から見た日本や日本人、そして日本から見たフランスの生活の知恵やものの考え方を比較してきた著者による3.11後の節電本です。





と言っても、日本政府や東京電力が押しつけているような節電ではなく、もっと普通に、しかももっとエレガントに、知恵と工夫で過ごす節電の暮らしです。「夜の光は文明。でも、明るすぎるのはエレガントではありません。」という著者は、必要な明るさ、不必要な明るさを、普通の暮らしの中で、友人たちとの会話の中で一つ一つ示していきます。





たとえば、フランスでは、階段の電気は点けっぱなしではなく、登っていくと一階ごとに点き、人が過ぎていけば自動的に消えていきます。電気に頼った明るさばかりではなく、キャンドルが暮らしの中に位置づいています。テレビだけでも十分明るいのに、余計な照明は不要です。冷房の効きすぎ、暖房の効きすぎも気になります。建物についても、光をさえぎり、風を通す知恵があちこちにあります。パリやプロヴァンスでの暮らしの中で垣間見たフランス人の生活の知恵に学びながら、よりエレガントな暮らしを提案しています。





これだけの紹介だと誤解する人が出てくるかもしれないので、あわてて付け加えておきます。著者は単なる出羽の守ではありません。出羽の守とは、何かと言うと「フランスではこうだ」「フランスではこんなことはしない」と海外経験をひけらかし、押しつけようとする人のことです。著者は、長年の欧州経験を紹介しますが、押しつけたりしません。日本には日本の素晴らしい伝統や経験があることをしっかり見たうえで、日本の良いところを西欧に紹介するとともに、西欧の日常の暮らしの知恵に学べるところを探していくのです。ですから、著者の提案は、「ちょっと考えてみてはどうでしょうか」「参考にするといいかもしれませんね」という形になります。





それでは著者は、まったく謙虚で控えめで二歩も三歩もさがっているかというと、実はそうでもありません。著者には『フランス流「肉食」恋愛術』や『いまさら英語を勉強しなくても、グローバル・エリートになれる39のルール』という、きっちり上から目線の楽しくコワ~~イ快著もあります。





他方で、話せるフランス語は2語だけでも、60歳で南仏生活を実践した経験を書いた、なんともパワフルなのに、なぜか爽やかな『還暦、プロヴァンス、ひとりぼっちで生きる』もあります。一筋縄ではいかないデュラン・れい子、うかつに接近すると大けがのもと(嘘です)。





著者とは一度お目にかかったことがあります。私の『軍隊のない国家』(日本評論社)に関心を持たれた著者から申し込みがあって、インタヴューを受けたからです。日本国憲法9条は日本の憲法でありながら、その大切さが見失われがちな現在、世界で唯一の9条についても言及しようということで、同時に世界に軍隊のない国家が他にもあることを加えることにされたのです。後に著者の本で私のことを紹介していただきました。





そのためもあって、今回の著書でも、3.11以後の日本の状況について、私の言葉を紹介していただきました。





3月11日にジュネーヴにいて、帰国を遅らせて様子を見ていた私の印象として、「政府や東電が情報を隠した、情報操作したとは、考えていません。日本政府は、そもそも情報の確認ができず、情報分析もできず、それゆえ情報操作すらできない無能な集団だ、と考えています」とお伝えしたところ、著者が紹介してくれました(同署217~218頁)。私のような見方が妥当か否かはもちろん異論もありうるところですが、情勢について考えるための一つの視点として紹介していただいたのだと思います。





本書では、車は窓を開けっ放しにすれば快適でエアコンなしですむ、冬は湯たんぽ、夏は氷枕、電気をくう自動販売機が多すぎる、電子レンジより圧力鍋、使う分だけの湯を沸かす、「機械」に振りまわされないなど、数々の提案が盛りだくさん。





ちなみに、著者にはお知らせしていませんでしたが、夏は暑く、冬は寒い八王子に住んでいる私の自宅には、38年間、一度もエアコンはありません。札幌生まれ札幌育ちですから、人生56年間、エアコンは一度も持っていません。そればかりか、なんと扇風機も持ったことがありません。夏になると、「太陽の町~~、八王子~~」という暑苦しい歌が流れる町の中心部に住んでいますが、ずっと団扇しか持っていません。テレビもないし、車もありません。そして、冬の暖房もありません。私の電気エネルギー消費量は普通人の数分の一です。





それなのに、ここ数日、郵便受けには東京電力から節電指令のチラシが3回も届きました。これ以上、どう節電しろと言うのか、腹が立ちます(笑)。智恵もエレガンスも絶無の東京電力ですから仕方がないのでしょう。





著者のプロフィルや著書については、下記のサイト参照。





デュラン・れい子応援団



http://www.duland-reiko-ohendan.ecnet.jp/