Sunday, December 08, 2013
ブリティッシュ・ロックの源流と真髄
中山康樹『ブリティッシュ・ロックの真実』(河出書房新社)――ビートルズの登場から始まり、レッド・ツェッペリンによって開花した70年代ブリティッシュ・ロックとは何だったのか。著者は、60年代イギリスのミュージシャンが何を聞き、どのような音楽環境に育ち、何を目指したのかを追跡する。一方でビートルズを生んだリバプール、他方でそれとは一線を画したロンドン。そこに鳴り響いていたアメリカン・ブルースがどんなものだったのか。チャールズ・ミンガス、チャーリー・パーカー、バド・パウエルを、ジンジャー・ベイカーやエリック・クラプトンはどのように聞いたのか。ジミ・ヘンドリクスやミック・ジャガーはどこからやってきたのか。謎は、黒人によるブルースと白人ミュージシャンがいかに格闘したか、その帰結である。そこにポップスでも、ロックン・ロールでもない、ロックが立ち現れることになる。おもしろいのは、日本とイギリスが類比的に語られることだ。イギリスの若者にとってアメリカン・ミュージックが圧倒的影響を与えたように、戦後日本でも一時はジャズがもてはやされた。ところが、イギリスは影響を受け続けたのに対して、日本では影響が消え去って行った。その分岐も少しだけ論じられている。また、逆にビートルズによって、アメリカ人にとっては初めて外国音楽が流行し、ブリティッシュの侵略が語られたという。さまざまなエピソード、音源から成る70年代ロック史への導入は、おもしろいが、始まるところでお終わってしまうのは不満が残る。続きが読みたい。また、ハード・ロックよりもプログレ・ファンだった私としては、そちらの話題がないのが残念。