Wednesday, May 07, 2014
ヘイト・クライム禁止法(75)韓国
韓国政府が人種差別撤廃委員会に提出した報告書(CERD/C/KOR/15-16. 2 March 2012)によると、前回審査の結果、委員会は韓国政府に飲酒的動機に基づく刑事犯罪を禁止・処罰する特別立法を行うよう勧告した。韓国には、国際刑事裁判所の管轄下におけるジェノサイドや人道に対する罪以外に、人種差別に基づいた犯罪行為を処罰する法律はない。その種の犯罪は韓国の歴史上ほとんど起きたことがないからである。
人種差別の煽動に関しては、人種的優越性に基づく広告は、刑法第三〇七条の中傷、又は刑法第三一一条の侮辱の罪で処罰される。人種差別に基づく暴力は、刑法第二五章の暴行傷害などで処罰あれ、それらの教唆や幇助も処罰される。犯罪実行の動機は刑罰を決定する際に考慮されるので、裁判官は量刑に際して、人種差別があったことを考慮に入れることが出来る。
韓国政府は現在、人種的動機による犯罪を犯罪統計にいれていない。しかし、外国人の人身売買に関する統計は特に計上している。二〇〇九年以来、検事局は、人身売買の女性被害者を効果的に調査するために統計を取っており、人身売買の予防と統制に役立つことが期待される。
人種差別撤廃委員会は韓国政府に次のように勧告した(CERD/C/KOR/CO/15-16. 23 October 2012)。委員会は、韓国政府が二〇〇七年に差別禁止法案を国会に上程したことを留意するが、法案が成立していないことは残念である。委員会は、差別禁止法を採択するよう速やかに措置を講じるよう促す。二〇〇九年の社会権規約委員会、二〇一一年の子どもの権利委員会による勧告を想起する。
委員会は、差別禁止法には差別行為の処罰規定がないのを遺憾に思う。現行法は条約第四条に合致していない。委員会は、条約第二条及び第四条の規定の義務的性格を強調し、刑法に人種差別を犯罪とする規定を取り入れるよう促す。
委員会は、人種主義者によるヘイト・スピーチがメディアやインターネット上で広まっていることを留意する。委員会は、表現の自由には人種的優越性の流布や人種的憎悪の煽動を保護するものではないことを留意する。委員会の一般的勧告七(一九八五)、一五(一九九三)、三〇(二〇〇四)に応じて、委員会は韓国政府に、メディア、インターネット、ソーシャルネットワークを監視して、人種的優越性に基づく観念の流布や、外国人に対する人種的憎悪の煽動を行う個人や集団を特定するよう勧告する。委員会は、それらの行為の実行者を訴追し、処罰するよう勧告する。