Thursday, May 08, 2014
ヘイト・クライム禁止法(76)タイ
タイ政府が人種差別撤廃委員会に提出した初めての報告書(CERD/C/THA/1-3. 5October 2011)によると、タイ憲法は、人間の尊厳と権利を保障し、諸個人及びコミュニティに文化や伝統を維持する権利の促進を定めている。同時に、憲法は表現の自由を定め、事前検閲など表現の制約を禁止している。
タイには、人種主義宣伝に直接対処する法律はない。しかし、関連する法律として、刑法は、他人に犯罪を実行させること、犯罪の実行を宣伝し(刑法第八三条~第八八条)、呼びかけること、他人を侮辱すること、そのような宣伝をすることを犯罪としている(刑法第三九三条)。宗教に対する侮辱も 犯罪としている(刑法第二〇六条~二〇七条)。
一九五五年のラジオ・テレヴィ法は、真実でないニュースや情報を放送して、国家や人民に損害をもたらすことを禁止し、二千バート以下の罰金又は一年以下の刑事施設収容、又は併科としている。
タイはいかなる人種主義も許さない。人種主義は暴力や、他の人種に対する侮辱につながる。この種の行為にはタイ社会は即座に反対する。TVドラマや映画で、人種主義的方法で一定の人種や民族の文化や伝統を侮辱した場合、タイ社会はすぐに反対の声を上げる。現在、フィルム・ ヴィデオ法草案を作成し、法秩序や人民の道徳価値観に反する内容を禁止しようとしている。
タイは条約第四条を留保している。条約第四条(a)(b)(c)について、国家がそのような法律制定が必要と考えた場合にだけ、適用されるとしている。タイでは法律と社会条件が十分に相互補完的である。
人種差別撤廃委員会はタイ政府に次のような勧告をした(CERD/C/THA/CO/1-3.15 November 2012)。条約第一条の人種差別の定義を導入すること。委員会は、条約第四条の留保は、人種的優越性や憎悪に基づく観念の流布の禁止に合致しない。条約第四条の規定は義務的であるので、委員会はタイ政府に留保を撤回し、第四条に規定された犯罪を刑法に取り入れるよう促す。タイ報告書には人種差別に関する統計情報が含まれていない。人種差別に関する裁判所の判決その他の情報を提供するよう勧告する。