ベルギー政府が人種差別撤廃員会第八四会期に提出した報告書(CERD/C/BEL/16-19.
27 May 2013)によると、差別を煽動する団体と闘うことはベルギーにとって優先事項である。
二〇一一年三月九日、ネオナチ組織として知られる「血と名誉のフランドル」の三人のメンバーがヴュルネ刑事裁判所で、三月の刑事施設収容(うち二人については執行猶予付)を言い渡された。
二〇一二年二月一〇日、急進的イスラム運動の「シャリア4ベルギー」のスポークスマンは、非ムスリムに対する憎悪と暴力の煽動で訴追されていたが、アントワープ刑事裁判所で、二年以下の刑事施設収容及び五五〇ユーロの罰金を言い渡された。同年三月三〇日、量刑がやや軽くなったが、有罪が確定した。この団体は欧州にシャリア法を確立しようとし。これまでも同様の活動をして訴追されてきた。非民主的団体の禁止に関する法律案が議会で審議中である。
自由を脅かす政党として懸案事項となってきた「フラームス・ベラング」に関して、国家がフラームス・ベラングに政党助成しないという提案が二〇〇六年五月一七日に議会に提出された。フラームス・ベラングは基本権に対する敵意を表明してきたことで批判されてきた。
フラームス・ベラングの提訴により、憲法裁判所は、助成金否定根拠条項と表現の自由や結社の自由との両立性について予備審査を行った。憲法裁判所は、助成金否定根拠条項は、そこで用いられている「敵意」概念を明らかにして、現行法に違反する煽動を意味するものとだけ理解されるならば、表現の自由や結社の自由に反すると判断されることはないとした。ある意見がまぎれもなく民主主義の主要原則の一つを侵害することを人に煽動するものであるか否かの問題は、その内容と文脈に従って判断される。
議会は、表明された思想が過激で物議を醸すもの、社会の一部の間に敵意をかきたて、不寛容の風潮を促進するものと定義した。その思想が不安を呼び起こすとか、攻撃的であるだけでは、現行法を侵害することを煽動したと判断されない。それゆえフラームス・ベラングは政党助成を受け続けている。(本件については、エリック・ブライシュ『ヘイト・スピーチ』に詳しく紹介されている。)