Tuesday, September 12, 2017

ヘイト・クライム禁止法(135)リトアニア

リトアニア政府が人種差別撤廃委員会に提出した報告書(CERD/C/LTU/6-8. 1 September 2014)によると、2014年1月1日に施行された立法原理法改正は、すべての立法が欧州人権条約、欧州人権裁判所判決、及びリトアニアが当事国となった国際条約に合致するよう求めている。
リトアニア法は人種・民族憎悪の煽動及び流布について刑事責任と行政責任を定めている。2009年7月9日の刑法170条改正によると、性別、性的志向、人種、国籍、言語、世系、社会的地位、宗教、信仰を理由として、人の集団又は人に対して、嘲笑し、侮辱を表明し、憎悪を推進し、又は暴力を煽動する記事を、配布、作成、取得、送付、輸送、供給した者は、刑事責任を問われる。刑法1701条によると、性別、性的志向、人種、国籍、言語、世系、社会的地位、宗教、信仰を理由として、人の集団又は人に対して差別し、又は煽動する目的をもって集団を組織した者、又はそうした集団の活動に参加した者、又はそうした集団に資金援助その他の援助をした者は刑事責任を問われる。これらの行為は行政犯とみなされる。
2005年、欧州評議会の人種主義・不寛容に反対する委員会は、リトアニアに人種的動機を刑罰加重事由とする規定を採用するように勧告した。2009年6月16日の刑法改正は、ヘイト・クライムの刑罰を加重した。刑法129条(殺人)、135条(重大な健康侵害)、138条(重大でない健康侵害)について、年齢、性別、性的志向、障害、人種、
国籍、言語、世系、社会的地位、宗教、信仰を理由として、憎悪を表明するために犯罪が行われた場合、刑罰加重事由とした。
2012年4月に司法大臣が国会に提出した行政犯罪法改正草案は、犯罪が人に対する憎悪を表明したり、差別することによって行われた場合、刑罰加重事由としている。
2009年から2013年6月1日までの間、刑法169条から1702条に至る平等権や良心の自由に関する犯罪の捜査は888件行われた。これには性別、性的志向、人種、国籍、言語、世系、社会的地位、宗教、信仰を理由として、人の集団又は人に対して差別し、又は憎悪を煽動することが含まれる。この期間に捜査が行われた事件のうち、捜査が終結し事件が裁判所に送致されたのは251件である。284件は証拠不十分のために終結した。
このカテゴリーには、人種主義的思想の流布、これらの性質の憎悪の煽動の捜査、ロマ、ユダヤ人、ポーランド人に対する事件が含まれる。平等権や良心の自由に対する犯罪事件の95~98%は、サイバースペースで、オンライン・メディアへの書き込み、社会的ネットワーク・ウェブサイト、個人ブログ等の事件である。ヘイト・スピーチのカテゴリーであって、暴力事案ではない。
同じ期間に、人の民族や国籍を理由とする暴力事件は3件であった。2件は有罪判決が出され、1件は係属中である。
同じ期間に、人種主義団体の活動に関する事件の捜査は、3人が非公式で小さなナショナリスト団体に参加した事件以外には、なかった。
刑法169条の差別事件について、32件の捜査が行われ、そのうち5件はロマとユダヤ人に対する差別事件であった。いずれもサイバースペースでの差別宣伝事件であった。
人種差別撤廃委員会はリトアニア政府に次のように勧告した(CERD/C/LTU/CO/6-8. 6 January 2016)。委員会の一般的勧告35等に照らして、人種主義ヘイト・スピーチや憎悪煽動から保護する集団の権利を保護することの重要性を想起し、以下のような適切な措置を取るように勧告する。政治家やインターネットを含むメディアから発せられる人種主義ヘイト・スピーチや差別発言を強く非難し、政治家やメディア専門家に不寛容、烙印付け、憎悪煽動を行わないように呼びかけること。報告されたすべてのヘイト・スピーチ事件を、刑法の下で記録し、効果的に捜査し、責任者を訴追し、有罪と認定された場合は、適切な刑罰で罰すること。報告されたヘイト・スピーチ事件の統計を取ること。ヘイト・スピーチに反対するために意識喚起キャンペーンを行い、ヘイト・スピーチと適切に闘うために長期戦略を開発すること。