Monday, September 25, 2017

ヘイト・スピーチ研究文献(109)

田代亜紀「表現の自由の限界を考えるための準備的考察――ヘイトスピーチに関する議論とスナイダー判決を素材として」『専修ロージャーナル』12号(2016年)
標題通り、前半は「準備的考察」であり、「研究ノート」のレベル。後半はアメリカのスナイダー判決の検討。学説のまとめ方に工夫がみられる。前半の学説の紹介では、立法論、表現の自由に関する原理の選択、表現がもたらす害悪について、それぞれ学説状況をフォローする。後半では、同性愛者に対する差別事例のスナイダー事件判決をめぐる議論状況を紹介し、「内容に基づく場所的規制」という形で、アメリカにおける議論状況に微妙な変化がみられることを示している。アメリカの表現の自由に関する基本的理解に変化があるわけではないが、適用の仕方には今後も変化がありうることにも留意している。